3-5広告研究会
「とりあえず、彼らについてから話そうかな」
天城さんの言う彼らとは、さっきの三人組のことだろう。
「彼らも全員学桜館大学の学生でね。ニット帽をかぶっていたやつが経済学部経済学科三年の
あの三人が学桜館大学の学生ってのは、なんとなく予想していた通りだった。しかし、何とも見事に名前負けしたやつらだな。
「ちなみに三人とも学桜館の中等科から高等科、大学、とエスカレーター式に上がってきた、いわゆる内部進学組だ」
「内部進学組⁉︎ あいつらがですか?」
思わず声をあげてしまった。
あんな汚い格好で、しかも不良崩れみたいなやつらが内部進学組だというのはあまりにも意外だった。
「まあ、土橋君が驚くのも無理はないね。学桜館といえば皇族や華族の人間が通う学校としての歴史を持ち、今も皇族の方は試験免除で入学することのできる学校として存在しているからな。あんな野蛮で汚らしい格好をしたやつらが中等科から在籍しているというのは誰からしても意外だろう。私も最初は驚いたよ。でも、学桜館はエスカレーター式に大学まで行けるからね。そのシステムの都合上、入学とともに大学卒業までの道のりがある程度は固まるわけだから、初等科、中等科、高等科と進むに連れてどんどん勉強しなくなる生徒が増えていくそうだ。もちろん全員がそうというわけではないけど、中等科から入学した彼らはその例にもれなかったようだ」
なんか、勝手に有名私立っていうのはガリ勉君たちの集まりなのかと思ってたけど、そうでもないのか。でも、俺も同じ立場だったら
「まあ、それでだ。大学に入った彼らは、広告研究会という団体に入ったんだ」
「広告研究会⁉︎ たしか、あの団体はちょっと前に解体されましたよね」
さっきまで黙って聞いていた不知火が口を挟んだ。
「そうだね。不知火君の言う通り、広告研究会は解体された。私の手によってね」
は? そりゃ、一体、どういう……?
「まず、学桜館大学の課外活動団体は文化系団体と運動系団体に
天城さんの問いかけに、俺と不知火と水野さんは、うんうんと頷いて答えた。
「じゃあ続けるぞ。文化部常任委員会は会議で広告研究会の解体について話し合い、賛成多数となったため、広告研究会は解体されたんだ。私はその文化部常任委員会の委員長をやっていてね。その議題は委員長である私が提出したもので、つまり私が広告研究会を潰した、ということになるわけだ」
そんな……。
天城さんの口からでてきた衝撃の事実に、俺たち三人は口を開けたまま、言葉を発せずにいた。
「三人とも、なんでそんなことをって表情だね。理由はもちろんある。いくら私が文化系団体のトップだからといって、私が潰したいと思ったから、なんて理由じゃさすがに団体を一つ潰す決議はされない。文化部常任委員会は民主主義だからね」
「じゃあ広告研究会は一体何をしたんですか? 解体されるってかなりの厳罰だと思うんですが」
不知火の言う通りだ。活動停止を超えて解体、というのは相当な理由がないとまずありえないだろう。
「うむ。当然の疑問だね。まず、広告研究会がそもそも何をしていた団体だったのか、というところから説明しよう。彼らの主な活動は大学祭でのミスコンの
ミスコン参加者にセクハラ⁉︎ 本当にそんなことあるんだな。うらやま……いやいや、けしからんな。
「体を触られそうになって逃げようとしたら、ミス学桜館に選んでやらないぞ、と脅されたらしい」
「あいつら、さっき、ぶん殴っておけばよかったな」
不知火が物騒なことを言い出したが、全く同感だ。
「それは同感なんだけどね。さすがに証拠もなしにそんなことをするわけにもいかないだろう? 特に、君や私のような人間は」
「えぇ。まあ、そうですね」
初対面のはずの二人がなぜか通じ合っているようで疑問に思ったが、
「あの、それで、どうしたんですか?」
水野さんが話の続きを促した。
うむ。俺もそっちが気になるところだ。その子は脅された後、どうしたんだろうか。
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