打ち明けられた事実


―――


 部屋には俺と篤の二人っきり。空気はどんより曇り空。綺麗に飾られたパーティー用の装飾が、窓からの風で虚しく揺れていた。


 俺は沈黙に耐えられずに声を出した。

「あの……」

「あのさ……」

 二人の声が重なる。


「あ…篤からどうぞ。」

「いや、亜希からでいいよ。」

「俺もいいよ。篤先に言ってよ。」

「俺だっていいって!」

 篤がまた大声を出す。ビクッと震える俺を見て、小さな声で『ごめん。』と言った。


「こんな事でケンカしてる場合じゃないよね。俺はただ沈黙が苦しかったから声出しただけなんだけど、篤は?」

「俺は……」

「ん?」

「……ごめん。」

「え?何が?」

「せっかくの誕生日なのにぶち壊して。ホント、ごめん……」

「篤……」

 しおらしく頭を下げる篤の背中を思いっ切り叩いた。


「いっ…て!」

「さっきも言ったでしょ?篤が俺の為に色々考えてくれて嬉しいって。パーティーを開いてくれた、ただそれだけで十分だよ。そりゃこんな風になっちゃったのは悲しいけど、別に気にしてない。それに和田君達を追い出したのだって俺の為。俺が困ってたから助けてくれたんだと思うんだけど、違う?」

「ち、違わないけど……」

 何故か泳ぐ目線に首を傾げていると、篤がおもむろに立ち上がった。


「亜希。」

「何?」

 突然の事にビックリして顔を上げる。

「家まで送るよ。」

「あ、うん……」

 まだ帰りたくなかったのになぁ、と思いながら腰を上げた。


「なぁ。」

「どうしたの?さっきからちょっと変だよ?」

 外に出て歩きながら篤が口を開いた。いつもと違って煮え切らない態度に疑問符が頭に浮かぶ。


「大事な話なんだ。聞いてくれ。」

「わかった。何?」

「実は俺……紗緒里と別れたんだ。」

「え!?どうして……」

 急に信じがたい事を聞かされて、言葉を失う。


「何で!?」

「何でって……他に好きな奴がいるから。」

「他に好きな人…?誰?」

 俺は思わず篤の服の裾を掴んでいた。


 信じられなかった。篤が紗緒里以外に好きな人ができるなんて……

 色んな感情が渦巻いて、篤の頬っぺたを思いっ切り殴った。


「篤のバカ!!」

「なっ……」

「紗緒里が篤の事どれくらい想ってるか知ってるくせに、どうしてそういう酷い事ができるの?」

 涙が頬を伝って流れ落ちる。それにも構わずに篤に向かって怒りをぶつけた。


「篤と紗緒里には幸せになって欲しいって思って…だから俺は……!」

『篤の事諦めようと思ったのに!』

 勢いで自分の気持ちを言いそうになって慌てて口を閉じる。


「と…とにかく二人には幸せになってもらいたいって親友として本当に思ってて……」

 どぎまぎしながらフォローする。そんな俺を篤は優しい微笑みで見つめていたかと思うと、急に抱きしめた。


「な…何するの!離して!」

「ごめんな、亜希。」

「俺に謝らないでよ……」

「紗緒里には悪い事したと思ってるけど、もう自分の気持ちに嘘はつけないから。」

「え?って事は紗緒里より前から好きだったって事?」

「そういう事になるな。」

「そんな……」

「まぁ、とにかくお前は何も心配いらないって事だ。ほら、着いたぞ。」

 腕を緩められて初めて、既に自分の家の前に到着していた事に気づいた。ハッとして篤から離れる。


「あ、ありがと……」

「おう。今日は本当に悪かったな。」

「もう!それは言いっこなしだよ。」

「はいはい。……じゃあまた明日。」

「うん、バイバイ。」

 笑顔で手を振る。そして篤が見えなくなった途端、その笑顔が消えた。


「篤のバカ……大バカ!!」

 俺の怒鳴り声が辺り一帯に響いた……



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