隠し事


―――


 わかってよ この想い

 逢いたくて仕方ない 不安で眠れない

 あぁ このまま 過去になっていくの?


 わかるでしょう この愛は純粋

 逢いたいから逢いに行く それは駆け引き

 もう この気持ち 閉じ込めておけない


 ねぇ 気づいてよ……




 CDのストップボタンを押して、枕に顔を埋める。

「篤……わかってくれなくてもいいから、俺の事嫌いにならないで……」

 涙混じりの呟きはそのまま枕に吸い込まれていった……




―――


「篤…待って!どこ行くの?」

「お前のいないとこだよ。」

「何で?」

「何でって、お前が俺を好きだから。」

 冷ややかな視線。体が震える。こんな篤、今まで見た事ない。


「あの……」

「二度と俺に話しかけるな。お前なんか……親友じゃない!」

 突き放す言葉。俺の中の何かが音を立てて崩れ落ちる。

「あ…あ…篤!!」

 遠くなる篤に何度呼びかけても振り返ってくれない。


 もう篤は一生俺の事見てくれないんだろうか。許してくれないんだろうか。

 ……そんなのは嫌だ…嫌だ!


「嫌だぁー!篤……!」

 闇に消えていった篤に向かって伸びた手は、無情にも届かなかった。――



「篤!」

 ガバッと起き上がる。

「あ、あれ……?」

 そこはさっきまでの闇ばかりの空間ではなく、いつもの俺の部屋だった。朝の太陽の日射しがカーテン越しに部屋に入ってくる。俺はホッと胸を撫でおろした。


「夢……か。」

 何て恐ろしい夢を見たんだろう。篤が俺から離れていくなんて……

 ずっと一緒だったのに、もし本当にそんな事になったらこの先どうすればいいのかわからない。


「ごめんね……」

 ぽつりと呟いた。




「それじゃあさ、こうしない?……っていうのは。」

「おっ!それいいなぁ。じゃあ亜希には内緒で……」

「なるほど!それでいこう。」

 教室から聞こえる話し声。俺はドアの前で立ち尽くしてしまった。


『亜希には内緒で……』

 確かに篤の声だった。まさか篤…俺に隠し事?今まで何でも話してくれたのに。


 俺は堪らなくなって勢い良くドアを開けた。

「あ、亜希!」

「おはよう、篤。みんなも。」

 笑顔で挨拶する。途端、篤の周りにいたクラスメイト達の顔が真っ赤に染まる。まぁ、いつもの事だからスルーする事にして。


「お前…今の話聞いてた?」

「何の話?」

「聞いてなかった?」

「うん。今来たばっかだし。」

「……そう。ならいいんだ。」

 篤があからさまにホッとした顔をする。他の面々も同様に安堵のため息を洩らした。


「それよりさ、篤。今度の土曜日、一緒に映画でも見に行こうよ。見たいのあるんだ。」

「え?今度の土曜日?」

 ちょっと焦ったように周りを見る。その場にいたのは五人だったが、その五人共に気まずそうな表情で篤を見た。


「あ、何か用事?」

「あ…いや……」

「気にしなくていいよ。俺一人で行くから。」

「え!でもせっかく誘ってくれたんだし……」

「いいよ。忙しいんだろ?」

「ん、まぁ…そうだけど。なぁ、亜希……」

「気使うなって。篤は別に俺だけの友達じゃないんだし。」

 自分で言った言葉に自分で傷つく。それでも笑っていた。


「じゃあ……」

 そしてそのまま自分の席に座って授業の準備を始めた。



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