第30話 佐倉

 手を伸ばしたのは、どっちだったっけ?

 私か……あたし?


 まるで、自分みたいだ。

 なんて思ったんだっけ?


 まー、一緒に轢かれた仲だもんねぇ。

 まさか、こうなるなんて思ってなかったけどさー。


 こうなる、なんて……?

 え? どうなったんだっけ?


 あれ? あたしってどうなったんだ?

 今までずっとヒトリで、ずっとずっと一人で。


 何もかも、零れて、落ちていって。

 誰も、思い出せなくて。


 でも。


 私には優人が。

 あたしにはゆう君が。


 傍に。

 いて、くれて。


 あたしが、佐倉凪音、だから?

 佐倉、だから……?


 そうだ。

 あたしは佐倉なんだっけ。


 しまったなー。

 すっかり忘れちゃってた。


 起きたら、話さなきゃ。

 あたしの、全部を。


 ゆう君は……それでも、傍にいてくれるかなー?






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