第4話 ボーリングバトル前編

「さて、じゃあ始めるか!」

 身楽は今回のボーリングについて説明した。ルールを簡単にまとめると今回は個人戦だ。三ゲームパックでレーンを借りているらしい。なので三ゲームが終わった時点でトップが最下位に何でも一つ命令できるらしい。そして二位はガターが一番多かった人に命令できるらしい。つまり最下位がガター一番多かった時にはどちらの言うことも聞かないといけないのだ。

「面白いのだ。やってやるのだ」

 負けず嫌いのノエルは試合と聞いて燃えている。順番はノエル、俺、きらら、咲、身楽の順番になった。


「見てるのだ、俺のショットを!」

 ノエルが投じた一球目の球はガターだった。

「なんだノエル、めっちゃ下手じゃないか」

「うるさいのだ二球目があるのだ」

 ガターの後の二球目。本来ならスペアがほしい場面だがノエルはまたしてもガターだった。

「きっとこのボールがおかしいのだ」

「ノエルちゃん、それはさすがに苦しい言い訳よ。きっと教也君がお手本を見せてくれるから…ね、教也君?」

「言っとくが俺は普通だからな」


 俺は球をとる。久しぶりに持ってみると重いものだ。俺はカーブなどそういうのは投げれないので素直に真ん中に投げた。ど真ん中とはいかなかったがだいたい真ん中らへんに当たった。

「平野さん、すごいです。八ピンですよ」

「あら、きららちゃん。八ピンってそんなにすごいわけじゃないのよ」

「まあ確かにきららちゃんには八ピンは多く見えるかも知れねえけどよ、本人が言ってた通り普通ぐらいだぜ」

「え、そうなんですか!」

 咲も身楽も好きかって言いやがって。でも実際にうまい人っていうのはずっとストライクとスペアだ。

「教也、二球目期待してるのだ」

「おう、任せとけ」


 俺が投じた二球目。結果は一ピン倒れた。

「まさに普通ね」

「咲姐さんとまったく同じ意見だ」

 ボーリング来てからこの二人の上から目線ぶりにびっくりだ。まあそれだけ自信があるってことなんだろう。

「次私ですね。なんだか緊張します」

「落ち着いて、きららちゃん。真ん中に投げるだけよ」

「きららちゃん、自分のペースでいこうぜ」

 前言撤回だ。上から目線になっているのは俺に対するときだけみたいだ。

「じゃあ、いきます」


 きららが投じた一球目。結果ははしのほうに当たり二ピンだった。

「ボーリングって難しいですね」

「当たってるだけうらやましいのだ」

 ノエルは確かに当たっていないから二ピンでもすごいと思うんだろう。きららが投げた二球目はガターだった。

「きららちゃん、敵は私に任せてね」

 咲はボーリングの球をとる。そのしぐさ一つをとってもボーリングがうまいってことが分かる。

「行くわよ」


 咲が投じた一球目。ガターになるかと思ったぎりぎりでカーブがかかりど真ん中に当たった。

「まあ当然ね」

 すごいきれいなストライクだ。見ている人たちを魅了する。

「まあ咲姐さんに続きますかな」

「やっと身楽の実力が見れるな」

「本当なのだ、長かったのだ」


 身楽が投じた一球目。咲とは違い身楽は剛速球をど真ん中に投げた。結果は惜しくも九ピンだ。

「あら、身楽君、意外ね」

 まあその意見はみんな思っていただろう。てっきり自信満々だったから絶対にストライクだと思っていた。

「すごいです、金平さん」

 きららはわかっていなかったみたいだ。

「まあまあ、最初はこんなもんよ」


 続く二球目。身楽は見事にスペアを取った。

「まあこんなもんよ」

 これで全員投げた。なんとなく実力はもうわかった気がする。

 ゲームは進んでいき第四フレーム。ノエルがみせた。

「お、ストライクなのだ」

 今まで不発だったノエルだがここにきて初ストライクを取った。

「すごいです、、ノエルさん」

「ありがとうなのだ」

 今のところ一位咲、二位身楽、三位俺、四位ノエル、五位きららである。

 そして一ゲーム目が終わり順位はそのままだ。


「さて、二ゲーム目に行くか」

 このままボーリングは進んでいった。普通三ゲームとなるとそこそこ時間がかかる。しかし楽しんでたからかすぐに時間が過ぎていった。


「さて、ついに最終フレームね」

 今現在の三ゲームの合計順位が一位咲、二位身楽、三位俺、四位ノエル、五位きららである。案外咲のぶっちぎりトップかと思われたが身楽がまだ射程圏内にいる。三位の俺はもうどう転んでも順位に変動が起きることはない。最下位争いをしている二人はまだ順位が変動する恐れがある。スコアで言うと三点差である。


「まずは俺からなのだ」

 福郎の頭を撫でていたノエルはボーリングの球を持つと雰囲気が変わった。投じた一球目。これは大きく外れるガターだった。

「まだまだこれからよ、ノエルちゃん」

 咲の声はノエルに届かない。それにしてもすごい集中力だ。なにかスポーツでもやっていたのだろうか。

「真ん中にぶち抜いてやれ、ノエル」

 身楽からの珍しい激励だ。ノエルが投じた二球目。集中力はすごかったものの結果はガターだった。

「あれ、おかしいのだ」

 ノエルは自分の座っていた場所に戻る。これできららが三ピン以上倒すと同点になり四ピン倒すと逆転になる。

「次は平野さんの番ですね」

「ああ」

「早く投げろよー」


 俺がピンをいくつ倒してもゲームに影響はない。俺が投じた一球目は七ピン倒れた。

「相変わらず普通ね」

 ボーリングに来てからの咲の風格にはびっくりだ。そして俺が投じた二球目。結果は二ピン倒れ合計九ピンだった。

「はいはい、次行こうぜ、次」

 俺の投球がなかったかのように身楽は進める。次はきららだ。

「三ピンは倒さないといけないんですね」

「ああ、落ち着いて投げろよ」

「平野さん、ありがとうございます」


 注目が集まる一球目。きららの投げた球ははしの一ピンを倒した。

「落ち着け、落ち着けよ」

「はいっ」

 きららは一度深呼吸をする。あと二ピン以上は倒さないと最下位が決定してしまう。

「いきます」


 きららが投じた運命の二球目。投げた球はさっきとは反対側のほうにいき、二ピン当たった。しかしきららの投げた勢いが弱く、一ピンは倒れたもののもう一ピンはグラグラしただけで倒れなかった。

「残念です…」

「まあ惜しかったじゃないか。また今度リベンジしようぜ」

「平野さん…、はいっ!」

 これで下位三人の順位が決まった。残るは上位二名だ。

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