第44話
世の中は面倒くさいことが多すぎると思う。面倒くさい人、面倒くさい仕事。面倒な人とは出来れば関わりたくないし、面倒は仕事は出来ればやりたくない。しかしそうもいかないのが人生というもので、そんな人生にさえ面倒くささを見出せるくらいだ。
例えば接客だ。変なクレームを言ってくる客は沢山いる。返却期限を電話で通知してこないから延滞になったんだ、そっちが悪い、だとか、ポップと内容が違ったから金返せだとか、変な客ばかりだ。本当にうんざりする。
そんな客にいちいち申し訳ありませんと謝ってなんとかその場をしのぐのも面倒くさい仕事の一つだ。
DVDの清掃作業が一番一人になれて落ち着く。もしかしたら自分はもともと接客業には向いてないのかもしれない。ビデオ屋の店員の仕事も別にそんなに好きでやっているわけではなかった。店員割引で安く借りられる特権がなければこんなに長く続けていなかったかもしれない。
平日の昼間、閑散とした店内のレジ前で、海野浩二はぼーっと客が来るのを待って考え事をしていた。もうビデオ屋の店員をやって8年になる。この人のいない時間のやり過ごし方も慣れたものだった。
人が少なく主婦の喋り声がたまに聞こえる程度の店内。映画ランキングを告げるラジオ形式の店内音源が繰り返し響き渡っていた。
ほとんど誰もレジに来ないこの時間帯、その間になんとなく考え事をするのが唯一好きと言える時間だった。
「海野くん休憩入っていいよ」
「はい、じゃあ休憩入りまーす」
店長に呼ばれて、奥のスタッフルームへと下がる。エプロンを脱ぎ、休憩室に入ってまずすることといえばスマホだった。スマホ依存症と呼ばれてもおかしくないくらいには浩二はスマホ中毒だった。
ゲームアプリを立ち上げ、スタミナがなくなるまでゲームをする。それが終わったらツイッターでタイムラインをチェックする。とくに日頃のニュースなどをまとめたアカウントのツイートが浩二のお気に入りだった。
今日はどんなニュースが来ているだろう。
『本当に願いの叶う神社で宝くじ当選!?』
まさにこういう感じの胡散臭いニュースが浩二の好みだった。記事の内容は単純で、願いの叶う神社で願ったら宝くじに当選したというだけの内容だった。しかし写真に付け添えられた神社の外観に目を引かれる。これはいいかもしれないと思った。
京都にあるらしいこの神社に行って、その内容と適当に京都飯の写真を上げればツイッターでいくらかはリツイートな稼げるだろう。
ここのニュース記事を見て観光スポットに赴くのは浩二の趣味になっていた。
週末はこの神社に行こうと決めて携帯をしまう。そして休憩を終わりまたアルバイトに戻って行った。
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