第33話
部屋に戻った拓哉はベッドに寝転びもんもんとさっきのことを考えていた。もし本当に根本と付き合ったらどうしよう。考えてもみなかったことだが、意外と想像はつく気がした。
根本とは元から仲は良かった。部活ではよく話す女子の方だったし、帰り道も途中まで一緒だから帰ることはちょくちょくあった。だからこそ今回の噂がなぜそんなに大ごとになっているのか不思議だが。
根本は可愛いし快活で好きなタイプだ。女子としての魅力は充分あるし、気も合う。相手としては充分だった。しかし根本はどうなんだろうか。こんな俺と噂されて嫌な気分になっていないだろうか。
今日はずっと根本のことを考えている気がする。これじゃあまるで根本のことが本当に好きみたいだ。今誰か好きな人がいるわけではない拓哉にとって、一番頭を占めている女子であることは間違いなかった。
根本か。と呟く。たしかに根本みたいな彼女がいたらいいと思う。きっと根本なら楽しく過ごせるだろう。まんざらでもなくなってきた拓哉は妄想に思いを馳せ始めた。
突然、ピロリンと携帯が鳴る。誰かからLINEが来たようだった。携帯を開くと、そこには根本菜摘と書かれていた。心臓がどきりと跳ねた。このタイミングで根本からのLINEはびっくりする。まるで考えが漏れて伝わったんじゃないかと思うくらいだった。
『山岸明日暇?』
LINEにはそう書かれていた。どうせ何でもない用事と手伝いでもさせられるのだろう。過度な期待は持っていなかった。
『暇だけど、何かあるの?』
『明日放課後一緒に用事付き合ってくれない?』
どうせプリント運びとかそういう面倒くさい仕事だろう、と言い聞かせる。喜んではいけない、平生を保って冷静に接しなければ変に思われるだろうと、気をつけた。深呼吸をして、ふーっと息を吐いてから返事を返す。
『いいけど、結構時間かかる?』
『そこそこって感じかな?大丈夫?』
『大丈夫、いいよ』
『ありがとう〜じゃあ明日ね』
よろしくね、と書いた可愛いスタンプが送られてくる。根本は何を思って俺にこのタイミングで頼み事をしてきたのだろうか。本当に根本は噂なんて知らないのか?それとも全く気にしない強靭な精神の持ち主なのか、それともまんざらでもないから平気そうなのか。
考えるだけで頭がこんがらがって煙を吐きそうだった。
ベッドに顔を埋め、頭をかきむしる。一体どうなってるんだこれは。考えれば考えるほどドツボにハマりそうだった。拓哉はこれ以上は考えるのをやめにして、明日の自分に任せようと決めたのだった。
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