第22話

店内は話し声であふれていて少しうるさいくらいだった。若い男女、主婦たち、老人など見渡す限り様々な人がいる。呼び出し音や食器の音、様々な音が店内を飛び交っている。

その中で男3人、年も住んでいるところもバラバラな3人が同じ机で顔を付き合わせているのはとても違和感があった。一見では、一体どんな共通点で一緒にいるのか絶対に分からないだろう。

特殊な能力を持つ3人なんて思いもしないはずだ。


悠人はドリンクを片手に2人を眺めた。露のついたグラスが手を濡らす。まだ氷の解けきらないアイスティーがカランと音を立てた。


「他にもこういう能力持ちの人っているんですかね?」

「そりゃ、たまたま見た掲示板で3人も集まったんだ、他にもいるだろうよ」

「俺、探してる能力の人がいるんですよ、実在するかはわかりませんけど」

「どんな能力なんだ?」


海野は運ばれて来たハンバーグを切り分けながら悠人を見る。そして口に頬張り、答えを促した。


「病気を治せる能力です」

「それはまたすごい能力ですね」

「そんな便利なやつがいたら今頃全国を飛び回って金儲けしてるだろ。気功療法とか適当にかこつけてやりゃいいんだから」

「たしかに。そしたらネットで噂になっててもおかしくないですよね」

「なんでまた病気を治すなんて能力が必要なんだ?自分か家族でも病気なの?」

「いや、大切な友達が難病で、治療には高額な治療費がかかるんで、他に治し方がないか探してるんです」

「そりゃ友達思いなこった。でもそんな能力の人がもし本当にいたとしたら今頃ビジネスにしてると思うぞ」

「確かに…」

「能力持ちが仲間だからって無償で能力で助けてくれるとは限らない。俺たちみたいに使い道が微妙な能力だからこうやってひけらかしてるけど、重要な能力を持ったら俺だったら金を取るぞ」


その考えは無かった、と悠人は頭を殴られた気分になった。確かに同じ能力持ちだからと助けてもらう気でいたが、そんなすごい能力があったらお金を得る絶好のチャンスだろう。結局高額な治療費を払うのと同じくらいの報奨金を要求してくることだってあり得るのだ。


「じゃあ一体どうすれば…」


口ごもってしまった悠人に海野は軽快に続ける。

「俺たちで稼げばいいんだよ。例えば俺だったらどんなネットワークに繋がられるから銀行からお金引っ張って来るのなんて簡単だぞ」

「それは犯罪じゃないですか!だめですよ犯罪は」


海野の言葉に山岸が抗議する。正義感が強いのか犯罪には厳しい顔をしていた。


「わかったわかった、冗談だよ今のは。俺はまだせいぜいツイッターや掲示板を見ることくらいしかやってないよ」


海野は手をひらひらとさせて山岸を宥めた。その笑顔は少し胡散臭かったが、悠人はやっていないという彼の言葉を信じることにした。


「他にどうやって稼げばいいんですか」

「そりゃもうアイデア勝負よ。坂下くんだったら占い師でもやったら心の中のことは百発百中なんだから良いんじゃないか?」

「俺だとどんな風に稼げます?イメージ湧かないんですけど」


山岸が困り顔で海野に尋ねる。海野はしばらくうーんと考えた後、分からないと答えた。

「山岸くんのはすごいけどそれをどう使うか難しいね」

「えーそんなぁ!」


山岸はひどくがっかりした様子を見せた。それをフォローするように海野は山岸の肩をぽんぽんと叩いた。

「俺だって法律の範囲内だと、自由にネットが出来るくらいが限度だよ。クイズ番組に出て答えをネット検索してクイズ王になれるくらいじゃないか?」

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