第43話 ギルド登録

 私もウインドマジックリングを貰った時こんな感じだったのだろうか。


 ……うん、自重しよう。


 取りあえず今はフライビルフィッシュを倒すことだけ考えよう。


「【ウインドブースト】【ウインドアーマー】」


 私は効果が切れた魔法をかけ直し、現在リュー兄と戦闘中のフライビルフィッシュに向けて攻撃を放った。




 ◇




 そろそろHPが半分を切るな。

 フライビルフィッシュにもパターン変更はあるだろう。

 速くて落下からのアーツは避けられそうだから使えないな。

 となるとやはりちまちま削って行くしかないか。


 ルカが居たおかげでHPの減りが早いな。ルカの【風属性魔法】がかなりHPを削ってくれている。

 一人だったらもっと時間が掛かっていただろう。


 HPが半分を切った。


 フライビルフィッシュの動きが速くなった。


 速い、捕らえきれない。

 これは避けることはかろうじて出来るが、攻撃には出られない。


 何より心配なのはルカだ。ルカは恐らくこの速さの攻撃を避けられないだろう。となると、こっちに注意を引く必要がある。


 元々ヘイトは俺が稼いでいたので、問題はないが、このままだと俺は避けることしか出来ない。

 そうなるとルカの魔法の方がダメージを稼いでルカにヘイトが向かう可能性がある。どうにかこちらからもダメージを与えてヘイトを向ける必要がある。

 ルカもそれが分かっているのか魔法で攻撃できないでいる。

 このままではダメージが稼げない。


 だが速すぎて攻撃どころか回避すら危うい。どうするか。


 ……何かこの避けるパターンさっきもやったような気がするな。


 でもパターン変更されてるはずじゃ……もしかして。


 俺はフライビルフィッシュの動きを見て躱す、躱す、躱す。


 ……やはりこのパターンは前と同じだ。もしかして速さが変わっただけで攻撃パターンは全く変わってないんじゃないか?


 もしそうなら攻撃方法はある。

 フライビルフィッシュの攻撃パターンは既に見切っている。今なら目をつぶってでも避けきる自信がある。


 なら簡単だ。フライビルフィッシュの通るコースに向けてメイスを振り抜くだけだ。そうすればメイスのコースに面白いようにフライビルフィッシュが飛び込んで来る。

 うん、この方法なら攻撃できる。


 攻撃方法は出来た。これならヘイトを稼げる。


 ルカも魔法での攻撃を再開したようだ。


 ここまで来れば後は簡単だった。これなら取り巻きが出た方が難しかったかも知れない。取り巻きが出るとしたら何だろう? ツラヌキ魚が出てきたり? いやでもツラヌキ魚はすでに海の中でスタンバってたな。そう考えると今回はずっと取り巻きが居たことになるのかも知れないな。


 《プレイヤー「リューヤ」「ルカ」によって南のボス、フライビルフィッシュが討伐されました。以後南のボスは弱体化かそうでないかを選ぶことが可能です》


『今回の戦いの動画を公開しますか?』


「ルカ。動画どうする?」


「私は良いよ(人外レベルのPSが露見するけど既に手遅れだしね)ボソッ」


 何か言ってるようだが取りあえず許可は出たので。動画を公開する。


 《動画が公開されました》


 流石にレベルアップはしないか。


「良し、それじゃあ帰るか」


「次のエリアは見ないの?」


「ああ」


 まあ、確かに見るのも良いが、本来ココは船に乗って来るエリアだ。次のエリアに行ったら突風が吹くエリアだったとか嫌だしな。


 運営もそろそろ俺の【飛行】スキルの存在がかなり厄介なことになっていることを気にして修正を入れてきてもおかしくない。


【飛行】スキルは【魔力操作】が必須になる。【飛行】スキルは翼に【魔力操作】で魔力を通すことで使う事が出来る。


 最初の方は無意識にやっていたが、最近は操作をコントロールして【飛行】しながら魔法を使うなんてことも出来るようになった。ただ、ナツメが言うには【魔力操作】は非常に扱いが難しいらしい。本来はスキルを手にいれた段階で魔力を感じられる位なのだそうだが、俺はその時点で魔力を体中に循環させていた。このおかげで【飛行】も簡単に行えた。


 このことを運営は想定していなかったんだろう。本来は、四苦八苦して【魔力操作】を使いこなせるようになり、そこでようやく【飛行】スキルが使えるようになるはずだったが運悪く(俺にとっては運良く)【飛行】スキルを手に入れた奴がログインしてすぐに体中に魔力を循環させるなんて思わなかったのだろう。


 ちなみにだが【飛行】スキルに【魔力操作】は必須と言ったが、これは【飛行】スキルと【魔力操作】スキルを二つとも種族スキルに有している場合にのみ必須という意味で、【飛行】スキルのみを有している物には適用されない。


 例を挙げるとするならば、洞窟にいたビックバットだ。

 ビックバットは種族スキルに【飛行】は持っているが、【魔力操作】は持っていない。その代わり【飛行】スキルを使用する場合ずっと翼を羽ばたかせないといけない上に、直進や旋回など全部自分で翼を動かして行う必要がある。魔力を流して飛ぶ方向をイメージするだけの【魔力操作】と併用する【飛行】とは飛行方法が根本から違う。


 飛ぶだけなら【魔力操作】を持っていない方が簡単だろうが、移動するには【魔力操作】での【飛行】の方が簡単だ。


『運営からお知らせが届きました』


 お知らせ? 何だろうか? このタイミングで来ると言うことはボス討伐に関係することだろうか?


 運営のメールの内容を要約すると東西南北全てのボスを討伐した記念に初のイベントを行うとのことだった。開催期間などは明日の正午にホームページにアップするのでそちらで確認して欲しいということだった。


 イベントか、そろそろ次の召喚獣が召喚できそうなんだけどな。期間が遠かったら召喚できそうだけど。

 いや、そういえば来週から夏休みだ。今週中にイベントっていうことはないだろうし、きっとレベリングも間に合うだろう。


 内容なんかは明日にならないと分からないか。


 しばらくはレベリングにしようかな。いや、ナツメとラルミィのみで行かせるのもありだな。

 そうすれば俺は生産に集中できる。

 でもそうすると戦闘向けのスキルのレベルが上がらないな。


 今度ボスマラソンでもやるか。

 そうすればスキルレベルも上がるだろうし。


 とりあえず戻ってラルミィ用にもう一狩りしておこう。そういえばツラヌキ魚って釣ったやつがいたな。ラルミィに【捕食】させてみよう。ちなみに以前フォレストウルフのドロップアイテムを【捕食】させたが、【擬態】してもドロップアイレムにしか【擬態】できなかった。ラルミィを【分裂】させて、それぞれ骨になって繋がれば、スケルトンみたいになるんじゃないかと思ったが。そもそもそんなに沢山の種類の骨は無かった。もしかしてミスリルを【捕食】させれば、身体をミスリルで覆うことが出来るかもな。盾とか鎧を【捕食】させるのも面白そうだ。


「それじゃあ俺はもう一回ボス戦行って来るよ」


「あれ? リュー兄、ギルドにクエスト完了報告は?」


「クエスト? そんなの受けてたのか? ギルドからのクエストか」


「……はぁ、リュー兄。聞くけどギルドからクエストを受けたことはある?」


 ため息つかれたっ! 何かまたやってしまったのか?


「……ないな」


「じゃあギルド登録ってした?」


 ギルド登録? ギルドに行ったのはチュートリアルの時とミスリルの買い取りとモルドさんとの2回目の模擬戦ぐらいか。


「……してないな」


「……リュー兄、チュートリアルの話を詳しく聞かせて」




 ◇




「……つまりモルドさんと模擬戦した後ギルドを出たと。」


「そうだな」


「取りあえずギルドに行こうか」


 ルカの話によるとアーツの使い方を教えてもらったあとに、ギルド登録という物をすると、ギルドのクエストを受けることの出来る許可証のような物をもらえるそうだ。


 ……そういえばチュートリアルでギルドを出て行く時、モルドさんが何か言ってたような気が。


 ギルドにはランクという物があり、最高がFからSまでランクがあるらしい。現在、大体の人がEランクで、トップ組はDランクぐらいだそうだ。


「取りあえずギルド登録しておこう。その間に完了報告してくるから」


「分かった」


 ギルドの受付の一番右に行く。この受付が登録専用らしい。


「こんにちは、ギルド登録ですか?」


「ハイ、お願いします」


 「ではこちらに手を置いてください」


 そう言って受付のお姉さんは水晶を机の上に置いた。

 水晶の上に手を置くと水晶が光り、中からカードが出てきた。

 受付のお姉さんはカードを取るとそれを透明な板に置いた。

 板が光るとお姉さんはカードをこちらに差し出す。


「これで登録は終わりです。ランクの説明は必要ですか?」


「いえ、妹に聞いたので大丈夫です」


カードを見ると、名前、ランク、職業の三つが書いてあるカードだった。


「そうですか。クエストは壁にあるクエストボードかギルド内でメニューを開くとクエストが載っていますのでそちらからも受けられます。クエスト終了後は横の受付で完了報告を行ってください」


「分かりました。ありがとうございます」


 取りあえずメニューを開き、フライビルフィッシュの討伐依頼を受ける。

 ちょうどルカがクエストの完了報告を終えて戻ってきた。


「速かったなルカ」


 隣を見るとかなり長い列が出来ていた。


「いやあれはあそこの列が混んでるってだけだよ」


 よく見ると奥にも受付の人は居るがあまりそちらは並んでいない。なぜだろうか?


「あそこの列が長いのは担当の人のせいだよ」


 そうルカに言われて列の最前列、受付の人を見ると、思わずなるほどと呟いてしまった。

 運営がワザとやっているだろうなと思うほど、その受付の人は整っていた。だが俺から言わせて貰うと少しきれいすぎて逆に怖い。何かクエストが絡んでいるのであれば別に並ぶのもやぶさかではないが、正直積極的に並ぼうとは思わないな。


 あの調子だと全然休めてないんだろうなと思う。人気っていうのも大変だな。


「さて、それじゃあそろそろもう一回行くか。ルカはどうする? 着いてきてもボスドロップはないぞ」


 今回はラルミィが【捕食】するのでドロップはない。


「うーん、今回はいいや。ドロップもないし船の方もどうなってるか気になるし」


そうしてルカと別れた。船か。やはり持っていた方が良いだろうな。今度森に行って木材を手に入れておこう。ミキの武器用にも欲しいし。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る