第39話 アーティファクト
思ったより多く取れたな。これだけあれば何度か失敗しても大丈夫だろう。
宝石は小さいのがいくつか出てきた。
『ナツメ、ラルミィ、そろそろ帰るけどどうする?』
現在俺はナツメとラルミィと別行動している。二人の実力なら洞窟の二層でもソロでいけるため狩りでもしてきたら? と言ったら二人とも行ってしまった。
『もう少し狩りを続けたいのじゃ』
『おなじく』
【コネクト】で声が返ってくる。二人とも狩りを続けたいようなので俺だけ先に戻ることにする。ナツメはこの先やるのが生産だって知ってるからまだ狩りの方を続けたいんだろうけど。ラルミィはどうなんだろう? 前回見たので飽きちゃったかな?
『分かった、満足したら合流した後に、町に戻ってきてくれ。【コネクト】で連絡くれたら迎えにいくから』
『分かったのじゃ!』
『りょうかいした』
元気な返事が帰ってきた。この感じなら、結構長い時間やってそうだな。でも一回夕飯のために戻らないとな。まあでも【鍛冶】の後で良いか。
◇
「エマ、鉱石採ってきたぞ」
「ちょうどいい、こっちも、準備、終わった、とこ」
エマのところまで戻るとエマが錬金板を取り出しているところだった。
「鉱石、ここに、置いて」
言われたとおりとって来たミスリル鉱石を全部、錬金板に置いた。
「じゃあ始める【抽出】」
エマがそう言うと、錬金板が淡く光り出しミスリルが浮き上がる。
光が強くなり思わず目ををつぶる。
光が収まったときにはミスリルが小さくなっていた。
「あれ? ミスリル小さくなった?」
「小さく、なった、違う。不純物、取り除いた」
よく見るとミスリルの隣になにか塊がある。
【鑑定】で見てみると鉄鉱石だった。
つまりさっきのアーツでミスリルの中にあった
ミスリルのほうを【鑑定】みると名前の横に純度100%と書いてあった。
「純度は、高い方が、いいもの、作れる」
なるほど、それで持ってこいって言ったのか。錬金のレベル上げをまじめに考えよう。
「【鍛冶】レベル、今、いくつ?」
【鍛冶】は確か鉄の武器を二人に作った以来だから……
「【鍛冶】は今確か10だったと思うけど」
「10じゃ、足りない。ミスリル、扱うなら、15は、必要」
何でそんなこと知ってるのだろうと思ったが、他のスキルと合わせて使うことが多いって言ってたな。
おそらくエマは【錬金術】以外にも色々持っているのだろう。
「15か、当分レベル上げだな。なんか早く上げる方法あればいいんだけどな」
そうつぶやくと聞こえていたのだろう。エマが簡単なレベル上げの方法を、教えてくれた。
「まず、レシピで、物を作る。その後、溶かして、インゴットに戻す。これを繰り返す。鍛冶場なら奥にあるけど使う?」
セコい! だけど効率はよさそうだ。
ちなみに何回もやってると作ったときの武器の耐久値がかなり減るようだ。まあ別にレシピで作った物など、使わないし問題ない。
「使っていいのか。ありがたい」
ココから噴水広場って結構距離があるんだよな。
それから俺はひたすら作って溶かしてを繰りかえした。
途中【コネクト】連絡が来たがエマのところまでこれるか聞くと道は覚えてるらしいので来てもらった。
そしてレベルが15になったところで夕飯のためにログアウトした。
よくよく考えたら既に深夜だった。エマには、悪い事したかな。
戻ったときに謝った方が良いだろう。
◇
「なあ、春香も魔法使うよな?」
現在夕飯中である。
「うん、使うけどそれがどうかしたの?」
「ちょっと今色々作っててな。美月用に作ってたんだが春香も使ってたなと思って。で、ちなみに属性は?」
「私は、主に補助として使ってるから風かな。ちなみに美月姉は水と火だよ」
二つの属性か、どうするか。
宝石を円形に研磨して勾玉みたいな形にして合わせてみるか。たしか太極図っていったっけ?
まあそこはエマに相談だな。
「どんなの作ってるの」
「まだ秘密」
「えー良いじゃん少しくらい」
「片付けを手伝ったら教えてやる」
「………………………」
ココで黙るのが家の妹である。
◇
再びログイン。
エマに遅くまで付き合わせたことを謝り、気にしなくても良いと言われ15レベルになった【鍛冶】でミスリルのインゴットを作る。
カンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッ……
インゴットを作るのは久しぶりだな。ダメージは受けてないし。大丈夫みたいだ。
ミスリルのインゴット
純度100%のミスリルで出来たインゴット
鍛冶で使われる
うんうまく出来た。
その後レシピでインゴットを作れるだけ作って金床を指輪用に設定して。指輪を作る。
指輪のようなアクセサリーには耐久値がないが経験値もほとんど入らないらしくあまり作られてないらしい。
このミスリルって魔力を通すんだよな。
魔力流しながら作ったらどうなるんだろう?
でも鍛冶バサミのせいで通りずらそうだな。
魔力を流すにしても鍛冶バサミを経由しないといけない。魔力を無理やり流し込んでいけば多少は流れるだろうけど、あんま変わら無そうだな。
そういえば【付与魔法】に新しいのがあったな、試してみるか。
「【アイテムエンチャント】」
【アイテムエンチャント】はアイテムに色々な効果を一時的に付けることが出来るらしい。本来の使い方は武器にエンチャントして威力を高めたり、防具にエンチャントして防御力を上げたり、ポーションにエンチャントして飲むことで効果が高まったり、と言うことらしいが効果が1.1倍と低すぎて不遇だとか言われてるらしい。……そんなに低くないと思うのだが。
まあそんな感じでアイテムにエンチャントして追加効果を与えることが出来るわけだ。効果が切れる前に叩いてしまおう。
ちなみに今回掛けたエンチャントはMPの回復速度が上がる効果がある。
ミスリルの指輪
純度100%のミスリルで出来た指輪
INT上昇+5
MP回復速度上昇(極小)
どうやらうまくいったようだ。ちなみにINT+5は基本的な効果らしい。エンチャントを掛けなければINT+5のみの効果だったのだろう。
問題は付与されるのうりょくがランダムなことだろう。今回みたいにINTであれば、ミキには嬉しい効果だがこれがSTRだった場合はミキに上げてもあまり意味は無い。まあ、ランダムなのでこれは数をこなして当たりを引くしか無いだろう。
でもこうやって見るとアクセサリーって大事だな。INT+5ってステータスポイントで考えると2レベル上げても届かない。
エンチャントも効果はあったけど(極小)なんだよな。もうちょっとあげられないものか。エンチャントの重ねがけとか、色々やってみたいな。
でもインゴットにも限りがあるし実験は銅でやることにしよう。
◇
結局色々試したが(極小)より上になることはなかった。
そこでエマに聞くと……
「【アイテムエンチャント】掛けて【鍛冶】なんて、やったこと、ない。でも、面白そう」
そう言うとエマは錬金板を持ってきた。
良く見ると魔石も持っている。
「一つ実験」
そう言うとエマはインゴットと魔石を【融合】した。
【融合】はそのまま物質を融合させる【錬金】のアーツだ。似た物に【合成】と言うアーツもあるがそれとは少し違う。
【合成】は物と物を繋ぐだけだが【融合】は混ぜるのだ。
たとえば木の矢と石の矢尻があったとして【合成】すると石の矢尻が付いた矢が出来るが、【融合】を使うと中に砂のように粉々になった石が混じっている木の矢になる。もしくは矢尻の方に粉々になった木が混じる。(どちらになるかは選べる)
更に分かりやすく言うと【融合】を使った物は両方とも粉々にされた後、混ざってまた元の姿に戻るのだ。(体積は変わらない)
つまり今このインゴットは―――
ミスリルのインゴット
中に砕かれた魔石が入ったミスリルのインゴット
鍛冶で使われる
―――となる訳だ。
「これなら、結果が、変わるかも。後、これ」
渡された鍛冶バサミ。おいこれってもしかして。
【鑑定】を使って見る。
ミスリルの鍛冶バサミ
純度100%のミスリルで出来た鍛冶バサミ
用途は普通の鍛冶バサミとほとんど変わらない
これなら魔力操作で魔力を流すことが出来る。
いやでもミスリルをそんなことに使って良いのだろうか?
まあ貸してくれるんだし使ってみよう。
純度が100%じゃないのが問題だが鍛冶のレベルも銅で色々やったときに上がったし、大丈夫だろう。
◇
「うん、これはかなりうまくいったな」
「なかなかの、出来」
後は宝石をはめて、魔方陣を【転写】するだけだな。
宝石をこの前ココで買った固い物を柔らかくする手袋で成型する。
勾玉のような形をルビーとサファイアで作り合わせて固く戻す手袋で元に戻す。
うん、うまくいったけどこれだとちょっと大きいかな?
「これ、使って、小さく出来る」
エマに渡された機械使い方を聞き、エマの教えに通り、機械の上に宝石を置き、レバーのような物を握り【魔力操作】で魔力を流しながらレバーを引く。
そうすると機械の中に宝石がすいこまれるように消えてしたにある別の口から一回り小さくなって、出てくる。
ホント凄いな。これは後で買おう。
それはともかく、これならはまるな。
プロング(宝石をはめる場所)に宝石をはめてエマに預ける。エマは魔方陣の書いてある手のひらサイズの紙を取り出した。
「【転写】」
エマがそう唱えると、魔方陣か輝きだし紙からはがれるように離れていき、そのまま指輪の宝石の中に吸い込まれていく。
「これで、完成」
エマから指輪を受け取って【鑑定】する。
ミスリルの指輪(
ミスリルで作られた指輪
INT+5
魔力回復速度上昇(中)
水魔法威力上昇(極小)
風魔法威力上昇(極小)
ついに完成した。
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