第37話 クラーケン

 さあリベンジマッチだ。


 今回は前回と違い、ナツメとラルミィがいる。

 ナツメとラルミィは俺が何を言うまでも無く動く。

 ラルミィは二体に分裂した後、片方は更に【縮小】し親指の先くらいの大きさになってからナツメの肩に乗ってナツメの護衛。


 ナツメの耐久でも連続で攻撃を食らうとやられる可能性がある。俺は回復できるがナツメは魔法で回復できない。ナツメにもポーションは渡しているが、連続で攻撃が飛んできたら、ポーションを飲むとか言ってる時間は無いだろう。その時に時間を稼ぐために【縮小】状態のラルミィが肩で待機している。


 まあナツメにヘイトがなるべく行かないようにするのが俺の役割の一つだ。と言うわけで。


「こっちを向きやがれ、イカ野郎!【クイックチェンジ】タイプ刀【スキルチェンジ】【壱ノ太刀・刹那】」


 クイックチェンジで刀を取り出しついさっき覚えた【刀術】を使って見る。

 この技、使った瞬間周りがスローモーションみたいになるな。まあそうならないと知らない所に転移した、みたいになりそうだしな。

 それと【壱ノ太刀・刹那】は、空中でも真っ直ぐ進めるのか、いやへたすりゃ海に落ちることを考えてなかったな、反省しないとな。


 ちなみに【抜刀術】は現在のスキル構成には入っていない。

【クイックチェンジ】【解体】【体術】【刀術】【空歩】【立体軌道】という構成になっている。

【クイックチェンジ】と【解体】はもはや言う必要が無いだろう。【体術】は武器の耐久が無くなったりしたとき用に必須だろう。後は武器スキルの【刀術】そして万か一吹き飛ばされたときに、今回翼が使えないので海に落ちないように【空歩】そしてその移動を補助する【立体軌道】を入れている。

【抜刀術】を入れるにはもう一つスキル枠が必要になるが、出来れば【鑑定】も入れたいところだ。


 ダメージもメイスの時よりは入ってるな。斬撃が効くのかそれとも打撃が効かないのか。

 これを使えば分かるか。


「【クイックチェンジ】タイプランス【スキルチェンジ】【ペネトレイト】」


 武器を槍にしてアーツを放つ。【ペネトレイト】はかなり射程の長いアーツだ。威力もそこそこ高い。わざわざ岩を飛んでクラーケンに近づいて攻撃する必要はない。その変わりかなり隙が大きいが。


 威力を見ると槍のほうが威力の高いアーツを使ったのだが、与えたダメージは先ほどとほぼ同じようだ。となるとおそらくクラーケンは打撃に強く突撃は普通で斬撃に弱いのだろう。


「【クイックチェンジ】タイプ刀」


 弱点で攻めるべきだろう。ナツメも先ほどは色々な属性の魔法を使っていたが、今は【風属性魔法】を中心に使っている。ラルミィは片方はナツメに付いているがもう片方は【擬態】でロックゴーレムになっている。ん? なんか小さいような気が……ってロックゴーレムのまま【縮小】してるのか。そんなことも出来るんだな。でもそのせいで【スキル模倣】は使えなくなってるな。【ステータス模倣】は問題なく使えてるようだが。


「【ストレングスエンハンス】【ディフェンスエンハンス】【アジリティエンハンス】」


 ラルミィが擬態しているロックゴーレムは【縮小】している上に打撃しか使えない。少しでも効率を上げるために自分とラルミィに【付与魔法】を掛ける。


 おっとまずい、ナツメの方に攻撃が行ってしまった。

 ナツメにクラーケンの足が振り下ろされる。


「【衝拳】」


 ナツメが【体術】アーツの【衝拳】を振り下ろされる足に斜めに打ち込んだ。


 そのまま打ち込んでも押し負けると言うことが分かったのだろう。だからあえて斜めに打ち込んで、受け流す事にしたようだ。俺が斧を受け流したように。


 あれを見ただけで行うとかやっぱナツメは普通じゃないな。

 あれ? ラルミィさん? なんかさっきからものすごく受けるダメージが減ってるような気が……あれ? おかしいな? なんかロックゴーレムがすごい滑らかな動きで次々と襲い来るクラーケンの足を受け流し続けてるんだけど。なにあれ? 召喚従って見ただけで受け流しとかできるようになってんの? うわーなんか腕が四本あるようにすら見えるよ……あれ? 待って! ほんとに四本あるんだけど。ロックゴーレムってそんなショッキングな身体に変形したっけ? 


 そういえば【擬態】て多少なら姿を変えられるんだっけ。……いやそれは多少なのか? 腕を増やすって多少ですむ話なのか? なんか二本の腕でクラーケンの足を受け流して、すかさず残りの二本で攻撃加えてるよ。ラルミィさん普通に強くないですか? いくら【アジリティエンハンス】を掛けているって言っても元がロックゴーレムだよ。何でそんなに滑らかに受け流せるの? よく見たら関節の部分をスライムに戻しているな。うんそりゃ滑らかになるはずだ。


 ナツメの肩に乗っているラルミィも【光属性魔法】と【闇属性魔法】を使って攻撃している。


 俺も負けてられないな。


「【スキルチェンジ】」


【スキルチェンジ】を使って【二刀流】をセットしインベントリから刀をもう一本取り出す。


 刀で足を受け流し切りつける。

 やっていることはラルミィと一緒だがこちらは打撃ではなく斬撃だ。こちらのほうが良く効く。


 まあこんな頃をやっていればクラーケンのHPはどんどん減っていき半分を切る。

 うん、やっぱりあるよねパターン変更。うわーなんかさっきの倍くらいの足が海からで出来た。おいお前、イカなら足は10本までにしておけよ。


 あーもうこうなったらその足全部切り落としてやる。まあ今まで足を振り回すだけのワンパターンだったからな。退屈しかけてたんだ。そうこなくちゃ面白くない。


 一気に三本の足が襲いかかってくる。二本は振り下ろし、一本は突きだ。

 ラルミィみたいに腕が四本ほしくなる。

 右手の刀で上から来る足を一本受け流し左の刀で前から来る突きをはじきもう一本の足は無理やり身体をひねって避ける。


 やっぱ避けきるのは無理だな。すこし食らってしまった。ラルミィは四本の腕で防いでいるしナツメの方もナツメと肩に乗っていたラルミィが連携して防ぎながら攻撃を加えている。


 俺は俺だけダメージを食らっているな。なんか悔しいな【ヒール】で回復してクラーケンに突っ込む。


「【壱ノ太刀・刹那】」


 防げないのなら無理に防ぐ必要は無い。多くのダメージを与えてダメージを食らったら【ヒール】をすれば良いだろう。


 と言うわけで俺はクラーケンと超近接戦闘インファイトを行う。幸いにもナツメとラルミィが頑張ってくれたおかげでこちらに攻撃してくる足はそこまで多くない。


「ハァアアアアアアアッ!!」


 クラーケンの胴体を切って切って切って足が飛んできたら足も切ってダメージを食らったと同時に【ヒール】で回復する。


 俺の今の状況は肉を切らせて肉を切るであった、骨を断つほどの威力は今の俺には出せないが、実際状況は五分五分と言った所である俺の捨て身の超近接戦闘インファイトとナツメの魔法でHPは削れているが、俺も相当HPを持って行かれてる。クラーケンのHPがなくなるのが先か俺の【ヒール】のMPが尽きるのが先かの勝負だろう。


「オラオラオラオラオラッッ!! 【弐ノ太刀・五月雨】」


 既に数百、いや数千の斬撃を加えているがようやく決着が付く。

 俺のMPとクラーケンのHP。先になくなったのは。







 ………俺のMPだった。




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