第33話 進化

「おっと」


 闘技場の横で復活した。

 どうやらデスペナはないようだ。


「いや~さすがだな。お前ならこれを使いこなせるかもな」


 そう言って闘技場から降りたモルドさんは俺にスキルソードを刺す。


『【抜刀術】スキルを会得しました』


【抜刀術】スキル? 聞いたことないスキルだな。

 聞いた感じ【刀術】スキルの進化とかだろうか?


 いや、進化状態のスキルソードは確かこの世界にはないはずだ。

 となると刀を使う特殊なスキルと言う可能性がある今度検証しておこう。


「それとこれは報酬だ」


 モルドが手をかざすと……


『リューヤはレベルが上がった』

『リューヤはレベルが上がった』

『リューヤはレベルが上がった』

『ナツメはレベルが上がった』

『ナツメはレベルが上がった』

『ナツメはレベルが上がった』

『ラルミィはレベルが上がった』

『ラルミィはレベルが上がった』

『ラルミィはレベルが上がった』


 ……は?


 ちょっと待て、今レベルが三つ上がったよな、状況からして恐らくモルドが上げたんだろう。でももう一度考えろ、俺とナツメとラルミィの三人分だぞ。そのレベルを三つあげたって事は合計で九つのレベルを上げたことになる。それは確実におかしいだろ。っていうかなんでモルドがプレイヤーのレベルを上げる権限を持ってるんだよ。そう言うのってもっと高位の権限が必要なんじゃないか?


「面白い顔してるな。状況が分からないって感じか? 簡単に言うと、俺のクエストは一度クリアすると永続するようになってるんだよ。一度に受けられるクエストの枠を潰さないために非表示になってるけどな。でだ、俺に勝った奴のレベルは強制的に二つ上がるようになってるんだ。そして俺は対象者のレベルを上げる権限を持っててな。俺に認められる腕を持った奴は俺がレベルを一つ上げてやることになっている」


 なるほど、つまり俺は槍の時の勝利で二つ。刀で認められて一つ。合計で三つのレベルが上がった訳か。

 そういえばモルドのクエストも、モルドに勝とうじゃなくて、認められようだったな。認められてもクリアってっことか。

 俺のレベルが上がると従魔達のレベルも上がるようになってるからナツメとラルミィのレベルも上がったって訳か。


 でも一NPCにそんな権限上げて良いのか?


「俺はちょっと他のNPCと頭の性能が違っててな。今お前らの居るこの世界がゲームってものだってのも知ってる。まあ裏を返せば他のやつらは知らないって言うかその情報を与えられてないって事だな。与えようとしても理解できないようにもなってる。だだ与えられてるのは、自分たちがNPCと言う存在であって、お前達がプレイヤーという存在であるってことだ。この情報はこの世界に居る全てのNPCに与えられている。あとはそれぞれの役割によるな。そういうわけで俺ってばちょっとばかし高位の権限が与えられてるんだよ。ちなみに最初に一気に四レベルも上がったのは最初に俺のクエストをクリアした特典みたいなもんだ」


 モルドさんてこの世界では偉い方だったのか、知らなかった。でもシルさんは相手の経験値を奪うこともしてたしそう考えるとやっぱシルさんって相当権限高いんだな。


「だけどこんな情報を知ったら次から次へとプレイヤーが来るんじゃないですか? 認められるだけでレベルが上がるなんて知ったら攻略組なんかが大挙して押し寄せると思うんですけど」


「それこそ大歓迎だ。さっきも言っただろ、俺はココが違うんだよ」


 自分の頭を指さしてモルドが言う。


「俺は他のNPCとは性能が違うんだよ1回攻撃を受けたらもうその攻撃は受けねえ。ただでさえ俺は他の奴より強いんだ。手加減はしているがそれでも俺を倒せるやるなんてそうそう居ないぜ。今のところお前だけだ」


 そういえばアーツの発動後の隙を突く攻撃も対処されてたな。今度は相手が飛ぶ場合の攻撃の対処もされているんだろう。戦えば叩くほど強くなる。厄介な相手がいた物だ。


 そして周りを見るといつの間にか人だかりが出来ている。更に動画を撮ってる奴までいる。恐らく今のやりとりも撮られていただろう。直ぐに情報が拡散して更に人が集まるはずだ。今のうちにギルドを出て置いた方が良いだろう。


「じゃあ俺はこれで」


「おう、また来いよ」




 ◇




「つ、つかれた」


 今俺は東のフィールドにいる。


 つかれた理由はパーティの勧誘である。闘技場から離れた瞬間、周りを囲まれて勧誘の嵐にあったのだ。なんとか断ったところにさらに攻略組が押し寄せて勝ち方のコツを押えろと言ってきて、既にげんなりしていた俺は、これはさすがに精神がもたんと翼を出して飛んで逃げたしだいである。


 ……時々気配ってどうやって感じるの? と言う声が聞こえた気がするがまあ気のせいだろう。


「そういえば俺って東に来るの初めてだな」


 北の洞窟、西の山、南の海は行ったことがあるが東の草原は初めてだ、本来なら最初に来るはずのフィールドだがモルドとの模擬線で一気にレベルが四つも上がってしまったのでここには来たことが無かったのだ。


 とりあえず後回しにしていたラルミィの進化を始めよう。

 もう既に15レベルになってしまっている。このままだと進化する前に3体目を召喚してしまう可能性だってある。それにスライムは多種多様な進化をすると言うし正直ラルミィが何に進化するかは結構気になる。


「早く始めるか【召喚】ナツメ、ラルミィ」


 ナツメとラルミィを【召喚】すると……


『ラルミィは進化が可能です。進化しますか?』


 もちろんYESを選択する。


 するとラルミィの身体が光り出し、思わず目をつぶってしまう。

 目を開くとそこには……青い壁?

 いや分かっている。この壁の正体くらいは。唯一つ言わせてくれ。


 ……でかくね?


 目の前には5メートルほどの大きさのラルミィがいた。


 とりあえずステータスを見る。



 CN:ラルミィ

 種族:ウォールスライム

 LV:15

 HP:1400/1400

 MP:900/900

 ――――――――――――――――――

 STR:5→15

 VIT:30→50

 INT:10→25

 MND:20→45

 AGI:5→12

 DEX:20→14

 ――――――――――――――――――

 職業:従魔


 ステータスポイント:18



 ウォールスライム高い防御力とHPをもつモンスターで、打たれ強くスキルとの組み合わせで多彩な攻撃をしてくる実に厄介なモンスターらしい。ちなみにこれはナツメ談である。ナツメってかなり博識だよな。いや、こっちの世界では常識なのかもな。

 とりあえずスキルも見てみるか。



 種族スキル

【捕食】【擬態】【スキル模倣】【物理攻撃ダメージ軽減】【縮小】【分裂】【ステータス模倣】【魔法攻撃ダメージ半減】



 うん、おかしいね。

 俺でも分かるよ。まず四つも増えてるんだけどどういうこと? あと【ステータス模倣】これは付けちゃ駄目な奴じゃない? もう完全に別のモンスターだよそれ。

 効果は……あ、スキルと違って模倣出来るステータスは一つだけか。

 でもな懸念要素のHP量は既に解決してるしな。っていうか模倣したら下がる可能性もあるんじゃないか? よく考えたらラルミィのINTって意味ないんだよな、魔法使えないし。

 ナツメに聞くとスライムは種族スキル以外は自力で覚えることは出来ないらしい。覚えさせたいならスキルソードを使うしかないそうだ。

 今度魔法のスキルソードでも買って覚えさせよう。


【縮小】は文字通り小さくなれると。


【分裂】も同じく文字通り。ただ【擬態】を使う時は一定量の大きさでないといけないと。具体的には……【擬態】する物と同じ量の体積がないといけないのか。

 細かく【分裂】して一斉に【擬態】して全員突撃、みたいなことは出来ないのか。いやスライムのまま突撃でも十分驚異なんだけど。

【分裂】した数に応じてステータスが下がるらしいがそこは検証しないと分からないな。

 で、分身体の中には一体だけ親が居て、その親が本体なので親がやられると子も全部やられると。うん普通に厄介だな。俺だったらそんなのに出会ったら逃げるか【アースブレイク】だな。


【魔法攻撃ダメージ半減】ってもうほとんど死角ないな。ただでさえ今回ので固くなったのに更に魔法威力半減って固くなりすぎじゃないか。



 PN:リューヤ

 種族:天使族

 LV:15

 HP:1500/1500

 MP:1500/1500

 ――――――――――――――――――

 STR:29→33

 VIT:30→45

 INT:18→25

 MND:30→45

 AGI:24→30

 DEX:17→20

 ――――――――――――――――――

 職業:召喚士

 

 ステータスポイント:10




 CN:ナツメ

 種族:龍人

 LV:15

 HP:1400/1400

 MP:1600/1600

 ――――――――――――――――――

 STR:23→32

 VIT:19→25

 INT:31→43

 MND:23→33

 AGI:22→32

 DEX:10→13

 ――――――――――――――――――

 職業:従魔


 ステータスポイント:10



 ステータスも俺たちに追いついてきている。総合では足りていないがMNDは俺に追いついてるし、VITについては俺より上だ。そこに更に【物理攻撃ダメージ軽減】【魔法攻撃ダメージ半減】のスキルで軽減ってもの凄く面倒な相手になってるな。これは敵としては会いたくないな。


 ペット枠とか思ってた自分を殴りたいな。これ普通にボスクラスじゃないか? ナツメと同じ枠だろこれ。1回の進化でこれっておかしくないか? そこん所どうなんです、ナツメさん。


 聞いたところ、何度か進化を飛ばしているらしい。本来ウォールスライムになる前にビックスライムになる必要があるらしい。だがラルミィはビックスライムになる前にウォールスライムになった。理由としてはラルミィが特殊な個体だったか、突然変異、召喚獣だったから、進化する前にレベルが上がりすぎたせい、などと色々考えられるが実際の所は分からないそうだ。


 本来ウォールスライムはレベル30以上の個体が進化することで現れるらしいのでしばらく進化は無いだろうとのことだ。

 スキルが一気の増えたのもそのせいかもな。


 とりあえず実力を知っておきたいし戦わせてみようか。

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