第27話 ロンとリンカ

「リューヤ君、紹介するね。こっちの小さいのがリンカ。でそっちの大きいのがロンだよ」


「ちょっとアーデ、小さいって何よ小さいって、ロンの隣にいるからそう見えるだけだよ!」


 ……いえあなたの……リンカさんの身長は十分小さいと思いますよ。ロンさんとか関係なく。


「全く、紹介するならもっと詳しいことまで言ってくれ。俺はロン。裁縫師だ。作って欲しい装備や服があったら言ってくれ。ある程度は協力するぞ」


 こっちの大きな人がロンさんか。身体が大きいせいで少し怖く見えてしまうが、話した感じそんなことは無く、優しそうな人だ。


「よろしくお願いします。リューヤと言います、ロンさん」


「そんなにかしこまらなくて良い。ココはゲームだ、歳の事なんて考えなくて良い。呼び捨てで構わないし、普通にしゃべってくれ」


「そうですか。分かりまし……分かったよ、ロン」


「ねえねえアーデ、この子ってさ」


「うん、ロックゴーレムとフォレストウルフの時の子だよ。それよりも自己紹介」


 え? 何その言い方? 俺そんな呼び方されてんの?


「あ、そうだね。私はリンカ。木工士だよ。弓とかロッドとかなら任せてね。ロッドはアーデと一緒に作ってるから、完成が少し遅くなるけど」


 うん、何か面白い組み合わせだな。ロンはドワーフでリンカさんはエルフだろうけど、本来ドワーフ族は身長が低くなりやすくて、エルフは身長が高くなりやすいらしいけど、この二人は真逆だ。


 そう言えばアーデさんの露店でも木製のロッドとか売られていたな。リンカさんのところで作った物だったのかな。


「金属を埋め込む作業はリンカさんは出来ないんですか?」


「………」


「………」


「………」


 あれ、俺なんか変なこと言った?


「ねえリューヤ君。金属を埋め込むのって誰から聞いたの?」


「この前アーデさんから買ったロッドを分解したら出てきましたし、誰にも聞いてないですけど?」


「うーん、このことに気づいてる人って結構少ないんだよね」


「どういうことですか?」


 何でもロッドの中に鉱石を埋め込むと魔法の威力が上がることはまだ公表していないそうだ。

 ロッドに鉱石を埋め込むと、魔法の威力が上がることは分かっているんだけど、それでなぜ上がるのかが分かっていないから公表する段階に至っていないらしい。



 ……あれ? 俺知ってるな。


「あの……威力が上がる理由なら俺知ってるぞ」


「へ……今なんて?」


「魔法の威力が上がる理由なら俺知ってるけど」


 ガタッ!!


「ホントなの!」


 リンカさん鬼気迫る感じの顔が少し……いえかなり怖いのでもう少し離れていていただけるとありがたいんですけど。


 その後アーデさんとロンさんになだめられてリンカさんが落ち着いたところで、ロッドに鉱石を埋めると威力が上がる理由を話した。


「……なるほど魔力の通りやすさに収束率。さらに【魔力操作】のスキル。いやあホントにリューヤ君は本当凄い物を発見するね」


「この話本当なのか?」


「うん、NPCから聞いた話だしもう一人魔力操作を持ってる子を知ってるのでその子にあとで聞いてみましょう」


 エマから聞いた話だから恐らく本当の話だろうけど、念のためあとでナツメにも聞いておいた方が良いだろう。知ってるかどうかはともかくとして。


「そうか、とりあえずこの話はあとにして。今回集まった本題に進もうか」


 そういえばミスリルの相場の話をしに来たんだった。すっかり忘れていた。


「とりあえずミスリルを出してくれる?」


「はい」


 インベントリからミスリルを取り出す。


「ほう、これがミスリルか」


 ロンが机の上におかれたミスリルを見て言う。


「結構軽いね。この軽さなら弓にも使えるかも知れない」


 リンカさんがミスリルを持ち上げて言う。


「でもコレ【鍛冶】スキルないとだめじゃない?」


 アーデさんが言う。確かにミスリルは鍛冶じゃないと加工できない。


「た、たしかに。私の仕事がなくなっちゃう」


 もしミスリルが大量に出回ったら、リンカさんに弓を作って欲しいという依頼は減ってしまうかも知れないな。そういえば……


「リンカさん、そういえば木材が大量にインベントリに入っていたんですよね。良ければ買い取ってくれませんか?」


「本当! 見せて見せて」


 インベントリから木材を出す。


「凄い量だね、どうやってこんなに取ってきたの?」


 いや実は知らない間にインベントリに入ってたんだよね。西に行った時に魔法使って木をえぐってたのが、切り倒した判定になっていたらしく、大量に入ってたんだよね。


「うん、結構質も良いしこれなら結構良い武器がのが作れそう。はいコレお金」


「ありがとうございます。って結構なお金ですね」


「まあ量が量だからね」


「二人とも売りに行くから早く来て」


 アーデさんから声が掛かる。


「はい」


「直ぐ行くよ」




 ◇




「また結構なお金になったね。まあまだ一つも流通してないから、あれくらいはするかもね。そうだ武器屋行かなくちゃ」


 武器屋に? アーデさんは自分で作ってるんだからいらないのでは?

 と考えているとロンが―――


「武器屋には既にミスリルの武器が並んでるはずだからな。自分が作る時にどれくらいの値段で売るかの参考にしてるんだろう」


 ―――と教えてくれた。あ、そうだ。


「ロン、実は毛皮が大量にあるんだけど買い取ってくれないか?」


「リューヤのインベントリの中身を見てみたい衝動に駆られるな。さっきも木材を大量に売っていただろ」


「まあね、でコレがエルダーウルフ戦の時のなんだけど」


「なるほど。フォレストウルフの毛皮か、確かに大量に狩ってたしな」


 買い取ってもらったところでアーデさんが帰ってきたようだ。


「遅くなってごめん。スクショ取ってたら遅くなっちゃった。とりあえず掲示板で拡散するよ」


 そう言うと三人がネットに繋いで色々し始めた。他の生産職に情報を流しているのだろう。


「さてこれくらいで良いかな。そうだリューヤ君。一応相場は決まったけどいくつ売ってくれるの?」


「さっきギルドに一つ売ったので、残ってるのは三つですね。全部売ります」


「毎度あり。今日だけで大金持ちだね」


「はい、余り物を売っていただけなんですけどね」


「余り物で大金持ちか、羨ましいね。どうする? ミスリルでメイス作る?」


 ミスリルのメイスか今は良いかなメイスは新しくしたばっかだし。それに……


「いえ良いです、最近【鍛冶】を始めたんですよ」


「そうなの! ミスリル売って良かったの?」


「はい、多分まだスキルレベルがたりません」


「そっか、じゃあ私は露店に戻ろうかな。また良い素材有ったら教えてね」


「あ、それは私も知りたい。フレンド登録しよ」


「俺も頼む」


 こうして二人とフレンド登録して別れた。もう夕方かもう少ししたら夕飯を作りに戻ろう。そろそろナツメ達も帰ってくるし。


 インクでも取りに釣りに行こう。


 俺は海へ向かった。

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