第18話 エルダーウルフ
「おら! こっち向けや【パワークラッシュ】」
鼻っ面にアーツをぶち込んだ。
今のでエルダーウルフのヘイトは完全にこっちに向いた。フォレストウルフはコウ達に任せているので、思いっきり戦える。
少し不安だがいざとなればナツメが龍魔法を使うなりしてくれるだろう。
メイスを握り直しボスに向かって走り出す。
「速いな」
エルダーウルフは兎に角速かった。今までであったモンスターなんて比較にならないレベルだ。
だが見えないほどではない。ならば対処法はいくつかある。
だがこうも速いと攻撃を当てづらい。まずは攻撃パターンを見極めないといけない。モンスターはある一定の攻撃パターンがある。それはボスモンスターにも言えることだ。攻撃パターンが分かれば避けることも攻撃する事もぐっと楽になる。
なのでまずは回避に専念したい所なのだが、やはり速すぎる。これでは見極める前にHPがなくなる可能性が高い。
「こっちもスピードを上げるか」
「【アジリティエンハンス】【ディフェンスエンハンス】」
【付与魔法】の一つ、一時的にAGIとVITを上げる魔法。これで少しはエルダーウルフの速さに対抗でき、さらにHPが減りにくくなる。
更に翼を出す。飛行速度はAGIに関係してないが加速や急停止などに翼を補助として使う事で素早く移動できる。
「さあ準備完了だ。来い!」
俺の言葉を聞いてかエルダーウルフが突っ込んできた。
俺は翼を動かし更に高くなったAGIを使ってエルダーウルフの攻撃を避けて避けて避けて弾いて避けて弾いて食らって避けてまた弾く。
ちょくちょく攻撃を食らうが、【ディフェンスエンハンス】のおかげでHPの減りは少ない食らったあとすぐに【光属性魔法】の【ヒール】で回復する。
大体分かってきた。とは言え後ろに回り込んだりしたことはなかったからその場合の攻撃パターンは分からないが、それは後でもう一度検証すれば良いだろう。
兎に角ある程度分かったので攻撃に移らせてもらおう。
まず狙うのはやはり脚だ。突っ込んできたボスの攻撃を避けてアーツで膝に一撃。
「【パワークラッシュ】」
「GRUUUUUU!!」
「まだまだ行くぞ!」
流石に一撃じゃあたいした効果はないが、ならば何回でも叩けば良いだけだ。
それからはエルダーウルフの膝を集中的に狙った。そして……
「足が遅くなった? あ、ついに状態異常になったか」
エルダーウルフが骨折の状態異常になっている。
これでスピードが下がる。
「途中から思ってたんだがここに乗られたらどうするんだろうな」
そう言ってリューヤは翼を使ってエルダーウルフの首の上に乗る。そして両足で首をしっかりホールドする。
さて
「おらおら【インパクトシュート】更に【パワークラッシュ】」
アーツを思いっきりたたき込む。
何かまた別の状態異常に掛かってるな。これはスタンか。条件は頭に打撃攻撃かな?
とりあえず今のうちにダメージを稼いでおこう。
「オラオラオラ!!!」
スタン状態のエルダーウルフにメイスを、時々体術のアーツも交えて攻撃をたたき込む。
「おいリューヤこっちそろそろ限界だ。1回死に戻って作戦を練り直そう」
ん? 今コウの声が……
「え、なんだって? おわ! 凄い量だな」
いやフォレストウルフ多すぎだろ。もはや毛玉に囲まれているようにしか見えないんだけど。
この状態じゃ話も聞けないし……あ、もしかしてあのアーツ使えるかも。
そう思って翼を使って高く飛び上がり……
「全員3秒後に飛べ。3・2・1・今」
俺の声に従い全員がジャンプしたところに……
「【アースブレイク】」
うん、フォレストウルフは一掃できたな。これで話しやすいだろう。
「うん、これで話しやすいな。あ、でも地形ダメージ食らったな。っておわ9割も減った。魔法教えてもらっといてよかったな【ヒール】」
まさか9割ももってかれるとは思わなかった。
今回【ヒール】に世話になりっぱなしだ。
なんかコウ達が話し合っている気がするが今はどうでも良いか。
「さっきなんて言ったんだ? よく聞こえなかったんだが」
ん? 何か3人がため息はいてるな。何かあったのだろうか?
いや何かあったから呼んだのか。
「いや、フォレストウルフが対処しきれなかったから1回戻ろうってはなしっだったんだが」
「お兄ちゃんの一撃でこうなっちゃったからね」
俺達の周りには無数のフォレストウルフが転がっている。解体が大変そうだな。
【解体】スキルはボス戦前につけといたよ。
「でもこれバリケードになって逆に良いんじゃ無いか?」
「そうだな。とりあえずこっちが危なくなったら呼ぶからさっきみたいに一掃してくれないか?」
「いやそれは難しい。今回はエルダーウルフがスタンしてたからこれただけで、そんなに何回もこれん」
「となるとバリケードで守りながらやるしかないか。少しそっちに行くけど良いか」
「分かった。エルダーウルフと戦ってる間に余波でやられるだろう」
「お前それは……いやなんでもない」
ん? なんか変なこと言ったか?
まあいいか。いまのおれの仕事はエルダーウルフの討伐だ。
流石にスタンも直ってるし、首の付け根はまだ使えると良いけど。
それにまだ4分の1しか削れてないんだよな。こっちのボスもロックゴーレムの時みたいにHPが減った時に何かやるんだろうし、どうにかなんないかな。
たとえばHPが半分を切る直前に大ダメージを与えて何か起こす前に多めにHPを削るとか。
そうすれば実質、変化後のボスとの戦闘時間は減るしな。
そんなことを考えながらエルダーウルフを殴る。
……ん? よくよく考えたら今の案、普通に使えるんじゃないか。
それにそろそろHP半分切るし。
やってみる価値はあるだろう。
と言うわけでやってきました上空です。
あれ? 今更だけどここから魔法撃てば簡単に倒せるんじゃないか?
……うん無理です。はっきり言って当たんないし普通にMPつきて終わるね。
まあそれはおいといて今回はこっから落ちます。
翼を消す。身体は重力に引かれて落ちる。おや、真下に大きな狼がいるぞ~。それじゃあせーの……
「【インパクトシュート】」
ドゴ―――――――ーン!!!!
なあ今の音ってさ、動物から出たんだぜ。え? 動物から出ていい音じゃない? まあ確かにそうだけど出ちゃった物はしょうが無いよね。
いやー削れたな。今ので残りHPが4分の1くらいまで削れたよ。
まあこっちも9割なくなったけど。【ヒール】
「AOOOOOOONNNN!!!!」
あ、また吠えたやっぱあるよねパターン変更。
「リューヤ」
「おう、みんなどうしてここに?」
「いやなんかもの凄い音が聞こえたあとに遠吠えがあっただろ。その遠吠えが聞こえた瞬間フォレストウルフがいっせいに消えたんだ」
「消えた? ……まずいな」
「え? 何がだ」
「何がってフォレストウルフは1分で消えるんだぞ。まだ【解体】もしてないのに。……お前らエルダーウルフを頼む。俺は解体ナイフで今残ってるのを【解体】してくる」
「え、おいチョッ……マジか」
「フォレストウルフはどうせ次々出てくるからあとで良いだろうと思ってたんだがまさかいなくなるとは。こうなるなら【解体】はボスのHPが半分になるまで外すべきだったな」
まあ今言っても後の祭りだ。今は【解体】していこう。
◇
うん、こんなもんかな、さて戻るか。
「よう、どうだ?」
「見て分かるだろ! いったいどうなってんだほとんどHPが減らねーぞ」
ホントだ全然減ってない。パターン変更で防御力が大幅に上がったのか。あ、骨折が治ってる。状態異常の回復まで付いてたのか。そりゃ苦戦するわな。
…………とりあえずもう一回折るか。
そして2分後にエルダーウルフの前足は折られその1分後に自由落下+【インパクトシュート】のコンボでHPは空になった。
《プレイヤー「リューヤ」「コウ」「ルカ」「ミキ」によって西のボス、エルダーウルフが討伐されました。以後西のボスは弱体化かそうでないかを選ぶことが可能です》
「なあ、なんでアイツ速くなったエルダーウルフを捕らえられるんだ?」
「まあお兄ちゃんだから」
「リューヤだからね」
「ああ、そうか……リューヤだからか」
この
『今回の戦いの動画を公開しますか?』
「動画どうする」
「お兄ちゃんが良ければ公開して良いよ」
「分かった」
YESを押す。
《動画が公開されました》
『リューヤはレベルが上がった』
『ナツメはレベルが上がった』
お、レベルが上がった。流石に今回は上がらないと思っていたんだが。
「うわ!」
「どうした?」
「レベルが一気に二つも上がった」
「? 良くあることだろ?」
「いや、それはリューヤがおかしいだけで普通は起きないわよ。多分フォレストウルフの経験値が入ったんだと思うわ」
「(お兄ちゃんが)大量に倒したもんね」
「そうね(リューヤが)大量に倒したものね」
「とりあえず戻るか」
「賛成ー。流石に疲れた」
その後現実逃避中のコウをつれて始まりの町に戻った。
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