古史古伝に書かれちょる通りや

 雄治がニヤニヤしつつ、

「卑弥呼様。お楽しみのところを大変申し訳ありません」

 と声をかけると、卑弥呼様は真っ赤になって、

「いやいや勘違いするなよ。これはその、つまり……そうそう。神の御意志みこころを賜る為の、儀式じゃて」

 と、苦しい言い訳をする。


 いやいやいや。今絶対、ひとりでお楽しみ中だったでしょ。○んずりしてたでしょ(笑)


 どうやって日頃からかわれる仕返しをしようかと思案していると、卑弥呼様は突然真顔になった。

「ほう。そなたはもう、ふみの謎が解けたか。なかなかさかしいのう……」

 と、感心している。


「そなたの推測通りじゃ。が幼き頃、この豊葦原瑞穂国は大いに乱れておった。神の御意志みこころに従いが『すめらみこと』に推挙され、弟の崇神天皇ミマキイリヒコの補佐として国の平定に明け暮れた」


 卑弥呼様の発音は、確かに「みもぁき」って感じだった。そこもあたしの想像通りじゃん。魏朝の高官達が「みまぉわっき」と聞き取ったとしても、全く不自然ではない。


「弟崇神天皇ミマキイリヒコはこの地を離れ、最後までこの豊葦原瑞穂国の平定に努めた。は弟の代わりにその息子、垂仁天皇イキメイリビコを側に従え、同じく娘の豊鍬入姫トヨスキイリビメの養女とした」

「なるほど」


豊鍬入姫トヨスキイリビメは隣の豊の国(大分県)に在りて、斎宮を務めつつ修行を積んでおった。が死んだ後は、の跡を継いだ筈じゃ」

 なるほどね。全部、あたしの想像通りだよ。――


のご先祖様は、天よりやって来た」

「うん。先程そのようにそげん聞きました」

 雄治が卑弥呼の言葉に頷く。


「他の国の連中も同様じゃ。ただし出自はと全く異なる。他国の祖は、それぞれ別々の星より降臨した」

「ほう。(先代旧事本紀)大成経に書かれちょる通りや……」


「そやつらはいつまでも、いくさばかりやっておってな。地上は乱れに乱れた。故にのご先祖様が世界中を巡り、いくさを控え穏やかに国を治めよ……と衆生を導く役目を担っておった」


 へ~~っ。スゴい。……


「ご先祖様は一時期、世界の真ん中に本拠地を移し、この星を治め導こうとした。しかし失敗した」

「それは……中東ですか」

「そうじゃ。そなたが中東と呼んでおる地じゃの。上手くいかなんだ故、やむを得ず再び本拠を高千穂宮に戻した。しかるに高千穂宮も、度重なる地震津波、それに阿蘇のお山の噴火に悩まされてのう……」


「それで世界を導く力を失った……というわけですか。すげえ。古史古伝に書かれちょる通りや」

 雄治が興奮し大声を上げた。

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