ほら、ますます臺与っぽいじゃん
「ほなそしたら、邪馬台国長官『伊支馬』は第一一代イクメイリビコ垂仁天皇か」
「何かそんな感じがするよね」
「っちゅうことは……最初は卑弥呼の弟の『
雄治は、う~ん、と唸りつつ腕を組む。
「卑弥呼様は『いきめ』って言ってたし、現在の地名も『いきめ』だけどさ。魏朝の高官達がそれを正確に『いきめ』と聞き取って文字に起こしたかどうかは、かなりアヤシいじゃん。それとさ、記紀には『活目』って文字が充てられてるみたいだけど、本来は『いきめ』が正解で、それが後々訛って『いくめ』に変化した……とか」
「そうやなあ。やっぱ『伊支馬』は、魏朝の連中がどげん読んだかはともかくとして、イクメイリビコ垂仁天皇っぽいな……。じゃったら、生目神社には垂仁天皇が祀られちょった、っちゅう伝承にも納得がいく」
「うんうん」
「そン次の景行天皇も結構長い期間、宮崎に滞在しちょる。古代宮崎が『本家ぃやぅまとぅ』なら、そイも説明がつくよなあ。本家からの要請で、景行天皇直々に狗奴国熊襲征伐をやったっちゃろ」
「ほらほら。何か色々、見えてきたんじゃない!?」
雄治は喉の渇きを覚えたらしく、椅子から立ち上がりテーブルのワイングラスを取り上げる。そしてボトルからドボドボとワインを注ぎ、豪快に飲み干した。
あたしはPCを操作し、改めて崇神天皇と垂仁天皇の記述に見入る。
「卑弥呼様の跡継ぎの『
「じゃっど~」
「じゃあ、この人じゃない!? ミマキイリヒコ崇神天皇の娘に『
「ほう。何か聞いたことがある名前やな」
雄治は再びグラスにワインを注ぎ、右手に抱えたままPCのモニターを覗き込む。あたしはそのグラスを取り上げ、一口飲む。
「ああ、こン人か。初代伊勢神宮斎宮で、巫女やち言われちょるわ」
「まぢ~!? ほら、ますます臺与っぽいじゃん。名前が長いから、魏朝の高官達は省略して記録してるんだよ、多分」
ふたりは顔を見合わせる。
「なるほどなあ。消された歴史を読み解くっちゅ~のは、こういうことか」
「うん……」
雄治は腕組みしつつ、考え込む。
「よし。卑弥呼様に確認すっど~。紗耶香はもう一度、ひとりでアレをやれ」
え~~~~っ!?
そんな……。毎度毎度、ホントに恥ずかしいんですけど(泣)
雄治のどスケベっ。どヘンタイっ。どS野郎~っ!!
――――――
【まとめ】
魏志倭人伝に、卑弥呼の弟と記述されている人物。
→ 邪馬台国高官「弥馬獲支」
→ ミマキイリヒコ(第一〇代崇神天皇)
→ 卑弥呼の指示で倭国大乱を平定
その後継者(つまり卑弥呼の甥っ子)
→ 邪馬台国長官「伊支馬」
→ イクメイリビコ(第一一代垂仁天皇)
→ 父崇神天皇の後を継ぎ、卑弥呼の側近として仕える
卑弥呼の養女(後継者――つまり卑弥呼の姪っ子)
→ 「
→ 崇神天皇皇女、
→ 初代伊勢神宮斎宮(巫女)
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