九、
おおっ。誰この美女!?
「みんな、お疲れさま~。どうもありがとう」
智ちゃんの音頭で、乾杯。
雄治のアパートに歴史研究会メンバー四人が集まり、飲み会が始まった。
今日のメニューは、鍋。費用はあたしが全部出した。何故かと言うと、ナイショなんだけど先日遺跡巡り中に買った宝くじが、案の定当たった(笑) マジで新たなセンスが発現したかも。……
「ジャジャ~ンッ♪」
智ちゃんが、傍らにある雄治のデスクトップPCで、動画を再生し始める。
先週末、四人で生目古墳群と青島方面に行き、撮影を行った。それを智ちゃんの伝手で、動画職人に編集して貰ったらしい。
「おおっ。誰この美女!?」
とあたしが大げさにボケたが、意図に反し誰もツッコんでくれない。うわ、逆に恥ずかしいじゃん!!(涙目) あたしは赤くなる。
正面に座っている雄治が、ニヤニヤと笑っている。
「いや、マジでキレイだよ」
と、敬太郎君が言ってくれるんだけど、それってフォローになってないよ(焦)
映像はまず、復元されている生目五号墳の前を歩いているシーン。智ちゃんが用意してくれた、暖色系の清楚なワンピ姿。ベタな歴女イメージね。
BGMはあたしと雄治の提案通り、チャイコフスキー交響曲第五番の二楽章第二主題が流れている。そしてシーンが変わり、あたしは古墳をバックにヴァイオリンを弾いている。あ、BGMに合わせて弾いた真似をしているだけなんだけどね。
BGMはそのまま流れ続けるが、次にシーンが一変する。今度は日南海岸堀切峠で、快晴の日向灘をバックにあたしがヴァイオリンを弾いている。衣装はプロジェクトチームのゆうかと京子ちゃんが作ってくれた、ミスコン本番用のパーティドレスである。パ○ツが見えそうな程大胆にスリットが入っていて、高いヒールと相まってスゴくカッコいい。
ドレスは鮮やかなワインレッドのグラデーションカラー。凄くゴージャスな感じ。本格的過ぎるよホントに。そんなゴージャスなドレスを身にまとい、あたしはヴァイオリンを構え、チャイコフスキーの甘い旋律を情熱的に演奏している。
ちなみに何度かBGMに合わせてヴァイオリンを弾いたが、全然上手く合わなかったのね。で、この演奏に精通している雄治がタクトを振り、あたしはそれに合わせて弾いてみたら、上手くいってあっさりOKが出た。
その次のシーンは、あたしが展望デッキのフェンスに身を委ねつつ海を眺めている所に、カメラが迫って来る。あたしの横顔がアップで映る。更に映像は一変し、あたしが水着姿で、青島神社をバックに波打ち際ではしゃいでいるシーン。
「スゲえな。グラビアモデルの、マジもんのイメージビデオみたいやなあ。完成度高過ぎやぞ」
雄治が唸るように言う。
いやホント、色々驚きだよ。あたしがこれだけカッコ良く映ってるのもびっくりだけど、こんなスゴいイメージ動画が出来上がるなんて、想像していなかった。
智ちゃんの企画力と行動力、それに人脈に驚かされる。智ちゃんが言うには、あちらのご趣味をお持ちの方々ともお付き合いがあって、動画編集だとか特殊技術をお持ちの人もいるんだとか。
あ、智ちゃんが以前アヤシげな本を読んでいたのも、そういう方々からの要請があってアドバイスを頼まれていたらしいよ。なるほどね。――
「さて、次なる課題は歴史研究会のサイト構築やなあ」
と、敬太郎君が言う。
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