これが卑弥呼様の墓なのかな?
翌、金曜日。――
快晴である。六月後半は雨が少なかったけれど、そろそろこのまま梅雨明け宣言があるかも。
雄治から妙な指示があった。
「今日は多少オシャレして来てくれ。いつものTシャツ姿は不可。先日のキャミでもいいよ」
意図がさっぱり解らないんだけど、取り敢えず先日とは異なるスリム系のキャミに、七分丈のパンツで大学へ。三人と合流し、教育学の講義を受ける。
講義が終わると学食でさっさと昼食を済ませ、雄治のクルマで生目古墳群へと向かった。ざっとひと通り、古墳を見て回る。
ここ数日、古墳研究に
また柄鏡式の中でも、前方部の
つまり前方後円墳は、弥生時代後期に「墳丘墓」として登場する。最初は三味線のバチのような形をしていたが、次第に柄鏡のような形に定まる。ただし古墳時代前半は、帆立貝型などと呼ばれる前方部のショボい、イレギュラーなタイプも存在する。それらが後半になると、次第に前方部の幅が広がり、くびれ付近にコブのような張出部を持つようになる。仁徳天皇陵等、あたし達がよく知るタイプが、いわゆる最終形態らしい。
「だからここでは、一号墳、三号墳、一四号墳、二一号墳、二二号墳あたりが古いみたいだよ」
と智ちゃんは言う。あたし達は公園内の掲示を頼りに、それらを一つずつ確認する。
三号墳は非常に大きかった。初期型で、全長が一三七mもあるらしい。全体像が解りづらい。
その傍らに位置する五号墳は、キレイに復元されていた。全長五七mだそうであるが、それでも充分に大きいと感じる。だってさ、いにしえのロボット「コンバトラーV」の身長と一緒なんだよ(笑)
表面に葺石が施され、全体像が解かり易い。
「ふ~ん……。あたし達は前方後円墳って、木や草の生い茂ったモノしか見たことがないけど、こうやって復元されてると形がよく解かるね。こんなシャープな形をしてたんだ……」
なかなか壮観である。
一心に古墳を眺めるあたしや智ちゃんを、わずかに離れた位置から雄治と敬太郎君が写真を撮っている。何やってんだか。――
二二号墳も見つかった。初期型で、全長一〇〇mを超えている。二一号墳は後円部しか残っていなかった。
タオルで汗を拭いつつ公園内を歩き回るが、肝心の一号墳が見当たらない。あたし達はひとまず、併設の埋蔵文化財センターに入ってみた。
まだ比較的新しくキレイな建物である。冷房がよく効いていて、涼しい。ただし如何にも博物館っぽい、謎の匂いに満ちている。
残念ながら、あまり見るべきものはなかった。展示パネルに主要な古墳の図と説明が書かれているが、Web上で見かける情報以上のものは得られない。土器など出土品がズラリと並んでいるが、これまた特筆すべきものは無さそうである。雄治が職員さんをつかまえ、一号墳の場所を聞いていた。それから智ちゃんが、古墳について色々と質問をしていたが、納得出来る回答を得られなかったらしくしきりに首を捻っていた。
「一号墳は、ここを出っせぐるりと迂回せんにゃならんらしい。行ってみっど」
と雄治に促され、あたし達は再びクルマに乗り込む。
五分程走って古墳群の北側へ回ると、はたしてお目当ての一号墳が見つかった。
「これか……」
鬱蒼と木々の生い茂る、小山のようである。三号墳同様、全体像が掴めない。
「これが卑弥呼様の墓なのかな?」
「いや、違う気がする……」
雄治と智ちゃんが同時に言う。
あれれれ!? そうなの?――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます