デブ飯ィィィィッ!

蒼井金太郎

オレの敵、ゼロカロリー

 これは自慢だが、オレは百キロ越えのデブだ。

 デブに誇りを持ってる。


 健康診断では糖尿を宣告され、数値は+3だった。


 糖尿の数字は350。(入院コース)

 だが、オレは病院には行かなかった。


 糖尿の奴には聞いて欲しいが。

 糖尿なんて、好きでなったわけじゃない。


 愛しい豚肉を頬張り、美味い酒で胃を洗浄し、野菜をフルスイングで近所の庭に投げ捨てる。


 だが、糖尿ってのは、まるでヴァンパイアになった気分だ。


 超喉が渇いて。

 異常なくらいにションベンをしまくる。


 息苦しい。疲れやすい。


 健康? 良い響きだね。

 だけどよ。クソみたいなエゴを押し付けられるのが、オレは大嫌いだ。


 だから、食べ続けるんだ。


               ζ


「おお。美紀。帰ってたか」


「……兄ちゃん」


 妹の美紀はギャルだ。

 帰りに買い物をしてきたらしい。


 袋の隙間から、ゼロカロリーのゼリーが見えた。


「……邪教徒が」


「また始まったよ」


「いいか? ゼリーなんて食べるんじゃない。せっかく蓄えた肉が全てウンコになって流れちまう」


「……るっせぇな」


「だいたい、ゼロカロリーってのは人類の敵だ。

 悪魔崇拝って知ってるか? こんなものが敬虔な信徒(デブのこと)に見つかったら、お前は間違いなく火あぶりに……。

 待て。……はぁぁぁ。……スゥゥゥゥ。ちょっと疲れたぜ」


 ストレスは糖尿に悪い。

 ブチキレたせいで、息が吸えなくなってきた。


 くそ。

 妹め。


               ζ


 まずはベーコンを10枚くらい、……いや、20枚切り刻む。


 それから、パックに入ったバターを全て熱したフライパンに入れ。

 アボガドを二つほど中にぶち込む。


 あとは、……卵を五つ分、かき混ぜた物を入れて。

 ベーコンを投入。


「うわ……。マジで?」


 それから白米を二合投入。


「ん? 醤油はどうした?」


「あ~……切らしてるね」


 ならば、めんつゆだ。

 めんつゆをドバドバ入れて、よく分からなくなったフライパンの中身をグチャグチャにかき混ぜる。


「ふふ。……美味そうだぁ」


 オレは涎が止まらなかった。

 なんなら、ちょっと入った。


「汚いってば!」


 待て。

 肝心な物を忘れていた。


「あらびきのウインナーはどこだ?」


「……ないよ」


 嘘だと気づいたオレは冷蔵庫の中を調べ、取り出す。


「それ明日の弁当に使うのに」


「うるせぇ! オレは今、飯を食うんだよッ!」


 オレの気性は荒くなっていた。


 自分好みの女が全裸で横たわっていたら、男は助けるより先に。

 まず一発入れてから物を考えるだろ?


 それと同じで。

 オレは明日、どうなってるか分からない。

 それを考えるのは、腹がいっぱいになってから考えるんだ。


「おい! オレのプリン食うなよ!」


「あのさ。兄ちゃん、バケツでプリン作るのやめてよ!

 兄ちゃんのせいで、バケツにゴキブリ集るんだから!」


 クソ妹め。


「まさか捨てる気じゃないだろうな」


 バケツを両手で抱えた妹が、イラっとした表情で振り返る。

 なんか、外に向かおうとしてんだよ。


「これいつ食べるの?」


「今だよッッ!(ガチギレ)」


 オレはこの瞬間。

 女性に暴力を振るう事を良しとした。


                ζ


「ようしっ。頂くぜぇ」


 糖尿は悪。

 だが、好きでなるものじゃない。

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デブ飯ィィィィッ! 蒼井金太郎 @tuzi

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