21話 陽炎
正直募金活動は善意云々よりも、
かなりの体力、スタミナ、脚力を要する。
これはもはや一種のスポーツであるといっても過言ではない。
どれだけ長くその場で棒立ちできるかという耐久性を試されるスポーツだ。
まだ歩いたり走ったりしている方がマシである。
その場でじっと立つという作業はここまで地味に脚にダメージを与えるものとは思わなかった。
重心を変えたり屈伸をしたりして、
紛らわせてもきつい。
一方彼女たちはというと、
涼しげな顔で整然と募金活動に精を出している。
なんなんだこの差は。
日ごろ募金活動をやりなれているせいなのか。
スポーツで脚力を鍛われているからななのか。
あるいはその両方からなのか。
それに比べて自分はいかにひ弱か。
ジェンダー論を持ち出すわけではないが、
こういう時こそ、「男のくせに」という言葉がよくお似合いなのかもしれない。
もしかしたら帰りのバスの中、
もしは僕のいないところで彼女たちは僕の今日の有様をいうのではないかと思う。
いやぜったいそうなる。
ついでに言えば、
「キモイ」とか「ダサい」ということもいうかもしれない。
自分を必要以上に卑下しているわけではなく、
これでも客観的に自分をみている方だが、
それでもこの自分の体力のなさはひどいと思う。
そして僕のこうしたマイナスの予想は結構あたると評判なのだ。
まあ、評判といっても自分の中での評判ということだけなのだけれども。
それにしても、僕の募金箱の入りが悪い。
別に競っているわけではないのかもしれないが、
もう一人の女子の募金箱には次々とお金が入っていく。
中にはお札も入れる人もいた。
なんなんだ。この差は。なんなんだ。
この差は。
やっぱりみんな女子高生が好きなのか。まったくもって。
それか僕自身のせいなのか。
ほほう。これはこんなに重いとは。
それに比べて僕が背負っていた、
募金箱はこの半分以下だ。これが人間の差なのか。
それにしても暑い。
アスファルトの地面からは陽炎が揺らめいていた。
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