PAGE.52「生譚 ~魔法世界クロヌスという歴史~ 」
魔法世界クロヌス。
古代人と呼ばれる文明人類により生み出されたマジックアイテム。そして、魔法。
この世界に住む人類の支柱となる存在によって組み上げられた世界である。
この世界の歴史は今も謎が多い。
これは、クロヌスに存在する王都の魔法学研究学会と呼ばれる組織にて考察されたものである。その歴史が真実であるか否かは今もなお、解析が続いている状態だが……その(仮)の考察をお聞きいただこう。
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数千年前。
古代人の文明よりも前……魔法世界歴よりも前の世界があったとされている。
魔法世界歴以前の時代の遺産等は一切残っていない。そのような世界の痕跡はほとんど存在していないと言われている。
では、何故。古代人より前の文明が存在していたと考察されたのか。
それは魔法世界歴、魔族界戦争を生き抜いた古代人が遺したとされる文献。
王都の博物館に寄贈されている、古代文明の遺産にこう刻まれているのだ。
___人類は一度、魔族の手によって壊滅させられた。
___地は焼かれ、海は枯れ果て、空は闇に包まれた。
___そこは……かつて平和だった人類の世界とは思えない地獄であった。
__そんな地獄の中、我々は神とも思わしき存在によって生み出された。
___精霊。かつての人類とも……世界を滅ぼした魔族とも違う”別次元の存在”。
___精霊は我々を生み出し、世界を滅ぼす脅威である魔族を討滅するために、新たなる人類として生まれ変わった我々と手を結んだのである。
___精霊は、我々人類に“魔法”と呼ばれる聖なる力を授けた。
___この世界を生きる者にのみ適応した新たなる力。それが魔法だ。
___我々は……精霊と共に新たな世界を、ここに作り上げようと記録した。
これが、古代文明最古の文献に書かれてある一筆である。
かつてこの世界には別の人類がいた。
その人類は魔族の手によって滅ぼされてしまったようだが……そこへ現れた、“精霊”と呼ばれる存在により、精霊と同じ力を持った新たなる人類が後に生み出されたのである。それが“古代人”だ。
精霊が描かれているだけの壁画は数枚発見されている。
その全ての絵には【八体の精霊】と、【その精霊を束ねる長】が描かれている。
赤き大翼、炎の精霊・オーヴァ。
藍色の妖妃、水の精霊・マリオン。
韋駄天の獣、風の精霊・ドレーク。
刹那の雷針、雷の精霊・ボルゾォーゾ。
透明な牙、氷の精霊・コロロッカ。
好戦的な一匹狼、鋼の精霊・フォルトレイス。
山を砕く巨人、地の精霊・グライアス。
天に溶け込む白き超人、光の精霊・レイサー。
八体の精霊。
そのすべてを束ねる……魔法の原初であると同時、古代人を生み出した神とも呼ばれる大いなる存在。
___その名は、【精霊皇・アルスマグナ】。
この精霊の登場こそが、ここ魔法世界クロヌス誕生の始まりだったのである。
古代人は魔法と呼ばれる力を手にし、魔族界との戦いを繰り広げ続けてきた。
古代人の体内には、この世界の住民しか持たない特殊な力……“魔力”が込められている。
これを利用することで人間は、精霊の専売特許と言われている“魔法”という特殊な力を使えるようになったのだ。
ほとんどの古代人が魔法を使えるとされてきたが、中には才能を見いだせず、魔法を具現させることが叶わない人間も多数存在した。
しかし、その空いた戦力の溝は間もなく塞がった。
魔力さえあれば、誰でも魔法を使用することが叶う“マジックアイテム”を古代人は精霊と共に作り上げた。これにより、全ての古代人が魔族界と戦う手段を得たのだ。
精霊と古代人。
この二つの種族により魔法世界歴は組み上げられ、世界を支配せんと目論んだ魔族界の帝王との戦いに挑んだのである。
……戦力は整い、古代人と精霊達は八人の戦士を選抜する。
魔族界を壊滅させるために呼び出された人類最強の八人。八人の戦士はそれぞれの精霊より力を与えられ……古代文明最強の戦士として、生まれ変わるのである。
その八人を従える男。その器に選ばれた長の人間は“精霊皇本人”より力を受け継ぎ、この世界の皇王となって、新たなる人類を束ねた。
その一味、時代を救うべく立ち上がったこの英傑たちこそが、魔族界戦争が終わって以降も、世代を引き継ぐことで存在しつづけた“精霊騎士団”と呼ばれる騎士達である。
精霊騎士団の活躍により、魔族界は次第に窮地に追いやられる。
圧倒的な力の差。それを前に、古代文明は勝利の光を見出し始めていた。
しかし……戦争はまだ終わらない。
むしろ、本当の闘いはこれからであった。
八人の騎士に対し、魔王側も【八人の戦士】を選抜する。
魔族界最強の八人は……それぞれ、“精霊をその身に吸収”したのである。
これにより魔族界は人類では観測も困難なレベルにまで力を得た。その出来事は精霊皇を持ってしても脅威と言わざるを得ない絶体絶命の状況であった。
精霊騎士団に魔族界の八人。
全ての古代文明人と魔族界住民による戦争は千年にもわたる長い歴史を刻んだ。
……そして、ついに戦争は終結した。
精霊騎士団と魔族界。
その決戦の最中、精霊皇と魔王により行われた最終決戦……精霊皇が自身の使える最大の魔法を手に、ついに魔王を討滅することに成功したのである。
戦争が終わり数年後、古代人は独自の文明を作り上げる為、精霊に感謝し、新たな一歩を踏み出したとされている。
精霊たちにより受け継いできた大いなる力・魔法。それを今後とも、人類を守るために使うことは勿論、人類に新たな革新を迎えさせる為と……数多くの人間が、希望のある未来へと歩き出した。
だが、そんな中……精霊皇は数か月後に姿を消した。
誰も発見したものはいないらしく、どこへ姿を消したのかも謎。
最早、人類には精霊の助けは必要ない。あとはその力で数多くの人間を導き、新たな世界を作り上げてくれると信じて、精霊皇は姿を消したと推測されている。
精霊という存在が幻へと成り果てたその後の歴史。
今も魔族と呼ばれる存在におわれながらも、人類は新しい人の歴史を築き続けていた……。
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