45話Bar/ランクペイン級冒険者様のおな~り~
ツバキに連れられ俺達3人は、ガーエーションまで来て入り口で上着を羽織り困った表情で居るロッタさんが目に入る。
「ロッタさん、何かあったんですか!?」
俺は急いで問いかけた。
「ユニちゃんにエミリアちゃんにアンナちゃん助かったわ。アレ見て頂戴」
そう言って彼女は店の中の何かを指差した。
俺達は店の中を覗き込むと。
「にゃははは~アルデー! お酒、もってこーい!!! どーんと持ってこーい!」
と上機嫌で酒を催促する呑んだくれの
確かに大変そうではあるが、予想とは随分と違ったものであった。この光景を見るまでは店に危険が迫っていると思い込んでいたのだ。
真っ昼間から飲んでいる人に、なんで店を開けているのかと疑問には思ったが、考えていたような事態ではない事に俺は安堵のため息をつく。
反面エミリアは、顔が青ざめ冷や汗をかいていた。
「エミリア?」
「馬鹿、さっき言ったでしょ。酒豪のクラスペイン冒険者」
あっ。と声を漏らした。
この人か、この女性なのか!?
「ん~? 新しい
気が付くと、俺達の目の前まで彼女が接近しており俺達は思わず驚いた。
「おうわ!?」
「ほー、イタグラントでハーフウルフにドワーフか~。さっすが国境付近だけあるわねぇ。お姉さん泣きそうなほど嬉しいよ~」
舐め回すように2人を見ると、手に持っていたジョッキに入ってるバオム酒を一気に飲み干し、ぷはーと息を吐いた。
無茶苦茶酒臭い。予想以上に酒の匂いしかしない!?
「あ、あたし達はただの通りすがりだか━━」
「通りすがりも一緒に飲めばそれはもう友達さー! さー飲もう!! 血の果てまで飲もうー!!!」
逃げようとするエミリアの言葉を遮り手を掴み無理矢理中に引き込むと、流れるように困惑して固まっていたアンナも店の中へと引き込んだ。
そして、一瞬ほど俺に向けられた視線は、冷たく鋭いものであったがすぐに笑顔に変わると顔を捕まれ中に引きずり込まれた。
「ごめん。皆。本当に大変なの」
申し訳無さそうなツバキの声が聞こえ。
「これは逆効果だったかもねぇ……」
と、想定と違った。と言いたげな反応を見せるロッタさんの声が聞こえ俺はテーブルに叩きつけられる。
「んで、ちみの種族は何かなー?」
シャウラだと思われる人は笑ってイスに腰掛ける。
「いてて……知らないんで答えようがないです」
「ちょっと、シャウラ。乱暴に扱うのは駄目だってば」
そう言って、ウメがお酒が入ったジョッキを複数運んでくる。
「ごめんちごめんち。ちょぉっち、手加減間違えただけだからさ~」
大笑いしながら、シャウラは返答した。
俺は小さな身体を起こすと、彼女が座っているイスの隣に、割れたイスが1つある事に気がつく。
「ちゃんと弁償してよね」
ジョッキを起きつつ俺に目線を向ける。
「ユニーも大丈夫? 何処かぺっちゃんこになってない?」
「大丈夫、ほらこの通り」
そう言ってパタパタと飛び上がってみせた。
「私は厨房に居ますねー」
すぅっと、いつの間にか厨房に入っていたアンナは、カウンターから目から上を出して此方の様子を伺いつつそう言っていた。
そして、エミリアの姿は見えない。
逃げたな!? ……まぁいいか。何時もすげぇ頼ってるし。
「へーい! 此方に来てお姉さんと飲み比べだー!!」
総叫びジョッキに入っている酒を水の如く飲み干す。
強制負け確定イベントかな? てか誰か勝てる人いるのかな? と言うか。
「なぁ、ウメ。ちょっと聞きたいんだがこれ全部この人が?」
周りに転がっている樽を指差して俺は聞いていた。
「そうだよー。さっき樽のバオム酒一気飲みとか
疲れからか、何時ものお調子者の口調は何処かに行ってしまい、ウメの呆れ声で放たれた言葉に耳を疑う。
この人の体の構造どうなってんだ。と言うか、入るのか体に!?
「んだよー! 泣きそうなほど構ってよー! 一緒に飲もうよー!! にゃははは~♪」
この調子は長くは続かず。
「どうしてさ……。どうしてアイツは何時も、何時も……お姉さんの邪魔をするのォ! うわぁぁあああんアルデ慰めてぇええ! そして、カウスのお馬鹿ちんは死んじゃえー!!」
急に泣き上戸にシフトチェンジし俺は困惑する。
「はいはい、分かったから昔のぺっちゃんこな名前呼ばないでって」
「やっと、多少は沈静化した……かねぇ」
疲れきった声のロッタさんが聞こえてくる。
ツバキも限界だったようで、今はバックヤードに寝かせリューンが面倒を見ている。
「みたいですね。後はあたしらでなんとかするんでー、ママは帰ってさっさと寝て下さいなっ。昨日から寝てないんですから」
「そうかい? じゃぁ、お言葉に甘えさせてもらおうかね。ユニちゃんと、エミリアちゃんもアンナちゃんもごめんなさいね。埋め合わせはちゃんとするから」
ロッタさんは厨房に向け叫ぶと店を後にした。
「……バレてたか。ママさんお疲れ様です」
エミリアが厨房から顔を出してそう返答していた。
お前、隠れてただけかよ。
「アルデって、ウメの名前か?」
「そ。この町に来てから変えたんだよー」
そう言いながら、半泣きで抱きつくシャウラの頭を叩いていた。
「お姉さん的には、アルデって名前の方がいいと思うんだよ。うん。ほら、両親から付けられた名前って大切だと思うんだよね。今泣きたくなるぐらいいい事言った!」
「あたしの事、知ってる癖してそれはないと思うんだけどー。それに"カレス"も人の事言えないじゃん」
「揚げ足取りは行けないんだぞ~」
「ブーメランだと思います。そしてこれが揚げ足取り」
「こまけーこったいーんだよー! きー!」
テーブルに置いてあるジョッキを手に取り酒を一気に飲み干す。
「ぷはー。ひっく。あー、吐きそう」
「はい!?」
「うそー、にゃはは~!! ……うわあぁあん!! もうバカー!」
彼女は笑ったかと思うとすぐに泣き崩れてしまった。
と、とんでもなく、忙しい人だな。せっかく綺麗な人なのに何もかもこれで台無しにしてる気がする。
「そういや、ウメ。シャウラさんって、知り合いか何かか? 親しいとか以前に、変える前の名前知ってるって」
「そだよー。お姉さんとねぇ~アルデは~……言っちゃえば同郷だね」
テーブルに突っ伏したシャウラさんが答え更にこう続ける。
「でねぇ、お姉さん達の故郷は地味ぃに有名人多くてね。ひっく。お姉さんを含めランクペインが3人にぃ宗教の教祖様にぃ~諸国連合のお偉いさん。後は、そうだね。プー太郎の筋肉バカ♪」
最後は有名人でもなんでも無い気がする。
「ランクペインの人が3人ってすごいですね」
「でしょでしょ~。他はアルデみたいに目立たずって人も居るんだけど……そういや、後の人は今どうしてるかお姉さん知らないんだよねー。そうそう、ソレ聞きに無理言って1人で来たんだった~何かしーらない?」
思い出したかのようにそう言って、再びウメに抱きついた。
ただ、ウメに会いに来て飲み散らかしてるだけだと思ってた。いや、見る限りでは実際そうなんだけど。
「あーもー、くっさいってば。あたしだって知らないってー。後分かってないの寝坊助さんに双子ちゃんに、ドチビくんと面倒くさがり屋さんじゃん? と言うかあの面子と連絡取れると思う?」
「えへー、思わなーい、駄目じゃーん! 根本的に破綻してるじゃーん。泣きそう。慰めてぇえええ!」
はいはい。と言いつつウメは再び平手で頭を叩く。
慰める気まるでないな……。
「そうそう。因みにねぇ。宗教の教祖様ってのがさ、面白くて……なんだっけ?」
「魔法を許すな。魔法を扱う者を許すな。見知らぬ獣を許すな。だっけね」
なんだ? 何か似たような……。
「そうそう、それそれー!」
ゲラゲラ笑いながら彼女は肯定し、更にこう続けた。
「それがさ。その当時魔法の被害を受けてたイルリカン共和国の帝国との国境沿いの町救ったのね。で、デザートフリーク帝国のせいだー。って、そいつ、嘘なのに言い切っちゃってぇ。さっきアルデが言った事を掲げて宗教たてて、ソレが近くに伝染して━━」
「ああああ!!!!」
俺は思わず叫んでいた。
「うわっ!? びっくししたー。どったの?」
「いや、あのな……」
俺はこの世界に来た時のことを嘘を交えつつ所々濁して2人に伝えた。すると、なぜ叫んだのか分かったシャウラさんは泣きながら笑い始める。
「にゃはは、あいつの宗教の被害者が此処に居たー!!!」
そう、初日のあの対応。宗教の勢力圏でそのせいだったらしい。
此処に来て可笑しいとは思ったんだ。近いはずなのにあまりにも対応が違いすぎる。
「あらら、災難だったね。その時にぺっちゃんこになるくらい背が縮んだとか?」
「そうなんだよ。その時にこんな小さくってうるさいわ!!」
「ひー、笑いすぎて泣きそうなほどお腹痛い。つまり、君はあの面白おかしい宗教の、手厚い歓迎を受けたわけだ」
「悪徳宗教の手荒な歓迎の間違いじゃないですかね!?」
「こまけーこったいいのさ。ま、ちみは特に気をつけた方がいいよ。見た目的にぃ、見つかったら捕まって即処刑の流れだろうしぃ」
一服置き、更にこう続けた。
「後、お姉さん達にも、ね」
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