13話Pervert/こう言う任務を待っていた!
更に2週間が経ち、もう浄化だとか魔法少女だとか忘れかけ傭兵としての生活を満喫していた。
週に1回から2回ほど酒場ガーエーションで働き、アンナが次第にエミリアとも会話を交わすようになり、傭兵業も軌道に乗ってきたそんな時であった。
「お待たせ」
エミリアが、俺が少し前まで恋焦がれていた任務を受けてきたのは!
ギルド内で任務内容を確認し、目的地へと移動を開始した。
任務内容自体は畑の見張り。と言う物であった。
一見するとこれまでと大差ない。と思えるが今回は少し違う。
補足として、奇行に出ている男性が畑を荒らしているそうだ。しかも強く、農家の男性複数人が襲いかかって返り討ち似合ったのだとか。
[心の汚れ]と言うものはいまいちどのようなものかピンとはこないが、奇行を働いていてなお強い奴ならあるいは何かしらあるかもしれない。
場所は町から出て、畑が広がっている場所の端の方であった。
民家が幾つか立ち並び、うち1つの家から老人が出て来た。
「貴方がたは、傭兵の方々でしょうか?」
「ええ、そうです」
エミリアが答えると、少々お待ち下さいと言い残し民家の中に戻っていく。
「警戒されたか?」
「ってより、甘く見られてるだけでしょ」
俺達はよく分からん生物1匹に女の子が2人。大の男が複数人掛かりで抑えきれなかった相手に対抗出来るかと言われると、無理。と答えるのが普通の反応と言える。
少し時間が経ち、複数人の難いが良い男を連れ老人が出てくる。
「申し訳ありません。この話はなかったと言う事に……」
「はい、来た。どする? 私が制圧して
小声で俺にエミリアが提案する。
が、極力依頼者とは穏便に事を進ませたい。
「却下だ。なぁ、魔法見せれば納得すると思うか?」
俺は彼女の耳元まで飛んでいくと、そう囁く。
「え? ええ、すると思うけど」
「ありがとう」
お礼を言うとすかさずテレパシーを送る。
『よく聞けアンナ。俺の言う通りにしてくれ』
少し間を置き、咳払いをしながらアンナは一歩前似でた。
「へんっ、しん!」
少し力強く裏返った声でそう叫び、彼女は光に包まれ魔法少女の格好へと変わった。
そして、すかさずワンドを上空に向ける。
「アクアバズーカ!」
ワンドの先から水が間欠泉のように吹き出し、一定の高さまで上がると周囲に広がり雨の用に降り注ぎ始める。
エミリアの反応から変身するだけでも"魔法を行使した"と彼らも考えるはずだ。これだけでも十分だろうが力を穏便に誇示するとより効果的だ。
よって、アクアバズーカを空に向けて使わせ天高くまで上がっていく水を見せた。もし、水の威力がうまく想像出来なかったとしても"2種類"の魔法を見せたと言う事実は残る。何より周囲への被害は少ない。
そう。周囲が水浸しになる。という事以外は。
「へくちっ! ちょっと、こういう事やるんなら早めに言ってよ!!」
水浸しとなった仲間から苦情が来た。
「伝えたとして、どう対策するんだよ!?」
「こ、心構えとか覚悟とかあるじゃない!」
無茶苦茶である。
すると、エミリアの胸元が透け薄っすらと水色の下着が見えていた。
「ぶっ!?」
想定外の収穫、いや事故に思わず吹き出した。
「んっ? ……えっち」
俺を睨みながら胸元を隠す。
「正直、すまんかった。アンナもういいぞ!」
彼女は、はーい。と答え水を止める。
俺達が言い争っている間、依頼者である彼らはというと天高く登っていく水を見上げ口をあんぐりと開けていた。
以後、彼らの対応はガラリと変わった。
例えば魔法を見た連中は全員敬語になったり、民家の中に招かれた後、過剰に必要なものがないか聞いてきたり、必要以上のお茶やお茶菓子を出してきたり、必要以上に低姿勢で
正直此処まで変わりとは思っていなかったので内心困惑していた。
ただ、ずぶ濡れのエミリアをお風呂に入れるための準備を手早くしてくれたり、女物の服を貸してもらえたのは感謝すべきだろう。
「ふー、いいお湯でしたー」
エミリアはタオルで髪を拭きながら、台所にいる1人の老婆に微笑んでそう言った。
「次から、後のことを考えて行動するように言っときよ」
「分かりました。そうします」
そうします。の部分はドスが効いており俺を睨みつつ言っていた。
寒気が走り身震いする。
「で、作戦はどんな感じ?」
「時間まで待ってドーン! です!」
アンナが力強く言うがこれではまず伝わらない。
「……はい?」
予想通り彼女は理解できずにいた。
俺は咳払いをし、情報も伝えるついでに説明を始める。
新たな情報として、対象は大体14時から15時の間にやってくる。
見た目はきゃしゃだがその実、力はものすごく強い。単独犯であり、数の優位は此方にある。そしていつも広大に広がっている草原からやってくる。
最後に女を追い求めている節が見られる。今の所ナニとは言わないが被害は発生していないが、視界に入ると奇声をあげて襲い掛かってくる。
以上を踏まえ、考えた作戦は。
「やってくる方向かつ畑から離れた位置で、自分達を囮にして倒す。ね」
戦闘予定位置に着き、アンナは予め変身させておき何時でも戦闘を出来る状態にし、3人で背中合わせで立ち周囲の警戒をしていた。
3人居るのだ。死角はない。とは言い切れないが限りなく少ないだろう。
「畑や民家から離れとかないと、アンナが戦いにくいからな。メイン火力が十二分に発揮できない状況はまず過ぎる」
アクアバズーカは威力があり強いのだが、如何せん周囲への被害が出てしまう。そのため、畑周辺で使ってしまえば、守るべき物を破壊してしまう。からと言って、ユニ・サンダーだけでは心持たない。よってこのような形を取ったわけだ。
正直、この地点畑から数百メートルは離れており背にしている状態だが、場合によっては畑側に向けて放つ可能性があり、少し被害が出ないか心配になっていたりもしていた。
「トドメはアンナがやる。って事でいいのね?」
「はい。そうです」
両手でワンドを持ち縮こまっているアンナが答えた。
「そんなに緊張しないの。場合によっちゃあたしが前に出るんだから、気楽にね」
いい事言った。と内心で思いつつ俺もテレパシーを送る。
『もしもの時は俺も変体して戦うから、安心しろって。リラックスリラックス』
アレ以降、ギリギリの時間を調べようかと何度か考えたのだが
そして、あの形態の事をエミリアは知らない。
「はい。ありがとうございますー」
少しは安心したのか多少は自然体に戻っていた。
「よしよし、それでいいわよ。っと、今更だけどこの円陣みたいなのあまり意味ないと思うけど」
「え゛っマジで!?」
「大体の来る方向分かってて、全方位警戒する必要あると思う?」
全くもって仰るとおりです。必要ないです。ハイ。
陣形を解き、目標が来るのをひたすら待った。
待つこと約30分。
最初にソレを発見したのはアンナであった。
「あれじゃないですかー?」
遠くから近づいてくる何かを指差す。
だが、それは人にしては身長が低すぎる。どちらかと言えば獣に近い。
「違うんじゃないか?」
目を凝らして指差すソレを見ながら一度は否定した。
「あれー? じゃぁ、私の見間違いかもですね」
だが、ソレは近づき形が分かるようになってくると人である。と、認識する事が出来た。したくはないが、せざるを得なかった。
「何よあれ。気持ち悪いんだけど」
嫌悪するようにエミリアが口走り、俺も心底同意していた。
それもそのはずだ。
焦点が合っていない目。狂気に満ちた笑みを浮かべ、深いクマがある顔。ボロボロの服。垂れ下がった長髪。
そして、ブリッジを維持した状態で走ってきて来ているのだ。気持ち悪いと思わない方がおかしい。
と言うかこれを走っている。と言っていいモノかも疑問に思ってしまう。
何にしても異質、奇行という言葉がピッタリな人物であった。
「キョェェェエエエエ!!! パンツパアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!」
目標が発した奇声が周囲の空気を震わせたのだった。
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