【見えないからこそ、強きチカラ】 第十八部
「えっと、どうゆうことですか? その、必要ないって……」
「簡単なことだ。アンドロイドを必要としない状態ってどうゆう状態だ?」
「アンドロイドを必要としない状態? えっと、対象者がめっちゃくちゃいい子とかですか?」
「馬鹿か、アンドロイドは国の法で十八までつけられるんだ。だから、答えはそこにあるだろ」
「そこ?」
「お前だよ」
「俺ですか!?」
「そうだよ。お前は十八以上だろうが」
「十八以上……。あぁ! でも、待ってくださいよ。それってつまりこのアンドロイドにとって対象者との関係が一八年近いものがあるってことじゃないですか」
「そうゆうことだな」
「そこまで長い関係があるなら、少しくらい情が湧いてもいいのに。本当に血も涙も無いですね。アンドロイドって」
俺はその男の言葉を聞いてそろそろこの場から去ろうと体を動かす。知りたかった情報は手に入ったし、現状、俺一人では容姿の確認できていない男性二人を打ち負かすことはできない。それに、もしかすると他に仲間がいるかもしれない。だから、俺がこの場にいる意味はない。
それに、これ以上この場に居たくない。それがいちばんの理由だった。
俺は立ち去るためにゆっくりと動く。
“がたっ”
「今、音しました……?」
俺は自分の足元に壁の破片が落ちているのを失念していた。足を動かした時にその破片に足を当ててしまった。俺は男たちがこちらに来ると思い、身構える。
「あまり、私の対象者の詮索はやめてもらえますか?」
すると、ユメの声が聞こえて来た。
「おい、今は……。って、お前何してんだ!!」
軽い声の男が不意に叫ぶ。
「私に何をしても構いませんが、私の対象者に何かされるくらいなら、どうせ処分されるのは一緒ですから一人ぐらいは相手できますよ。死の果てまで…………」
その時のユメからは今まで聞いたことのない冷たさを持った声がした。そして、その声に声を荒げた男も、俺も何もできないでいた。
「はっははははは!」
すると、落ち着いた声の男が大きな声を上げて笑う。
「やっぱり、なんとも思ってねぇなんて嘘じゃねぇか」
男の声にユメは何も反応しない。
「安心しろ、お前の対象者なんかには俺らは微塵も興味はない。だから、お前も大人しくそこに座ってな」
男の言葉に対して、がたっとまた音がする。
「念のため、もう一度腕と足を縛っておけ」
「わ、わかりました」
「あと、こいつは明後日の二十四時に相手へ受け渡す。それまではお前がここで監視しておけ」
「え、俺ですか!?」
「安心しろ、こいつはもう何もしない」
「でも……」
「いいな?」
「は、はい……」
俺は男たちがユメに注意を向けているうちに部屋からの離脱を試みる。
幸い、他に仲間もおらず、来た道を戻り、俺は帰路へとついた。ユメのあれがなければ俺は間違いなく男たちに見つかっていた。どうなっていたかはわからないが、あまりいいとは言えない結果になっていただろう。
不意に携帯の画面を確認すると時刻は九時過ぎ。もしも道端先生に電話するならギリギリ出てくれるかもしれない時刻。先生は案外健康的な生活を送っているのか、これまでに今みたいに電話をかけたことが何度かあったが、いずれも出てくれたことはなかった。翌日になって折り返して電話はしてくれるが、すぐには出てくれなかった。
返答が翌日になってでも、今日のことを道端先生に伝えるべきだろうが、俺は言わないことにした。なぜなら、明後日の二十四時まで、ユメの見張りがあの男だけになるからだ。正直、あの冷静な男が相手なら、一対一でも勝てるかわからないが、もう一人の男なら正直勝てる見込みがある。公園でぶつかった時のことを思い出せば、あまりガタイがいいとも思えないし、あの感じだと格闘関係にも触れていないだろう。
明日すぐに決行してもいいが、相手がいちばん油断している時。もうすぐ、見張りが終わるという安心感のような安堵がある時刻。
俺の受験前日の二十二時がいちばんいいだろう。
俺はそう決心して、自宅のドアを開いた。
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