第94話 お祭り巡りをしませんか(3)
「銀髪は目立ちますから、そうですね。黒はいかがですか?」
「あら、赤も素敵よ。きっとリアの顔立ちなら映えるわ」
「瞳の色と髪の色を交換するというのは珍しいのでは?」
様々な意見が出た後に、ジルが溜め息をついた。
「あまり似合いすぎると、貴族や王族に目を付けられるぞ」
「「「「確かに」」」」
なぜか全員に納得されてしまい、ルリアージェは首をかしげた。色を変えて目立つと注目されるのはわかるが、貴族に目を付けられる理由がわからない。こういう疎い部分がルリアージェの好ましい部分でもあり、悩ましい部分でもあった。
母親を含め美人を見慣れた彼女にとって、自らの顔が整っている自覚はない。ましてや現在はトップクラスの上位魔性という美形に囲まれたため、己の容姿について客観視する機会はなかった。
「まあ、胸がないから……っ」
パチンと大きな音で、禁句を口にしたジルの頬が叩かれる。側室にされる心配はないと言いたかったのだが、安心するより怒りが先に立ったルリアージェの平手を喰らった。さらにパウリーネとライラの冷たい視線も刺さる。
「本当にデリカシーのない男ね」
「さすがに主でも許せませんわ」
「しょうがないだろ。安心材料の一つだぞ。これでリアの胸がこんなだったら……」
両手でメロンくらいのサイズを示し、ジルは先を続けた。
「過去の国すべての国王に求婚される騒動だった」
まあ、地方領主やアスターレンの第二王子には求婚されたが、そんな話は余談と切り捨てる。ジルの指摘に誰も反論が出来なかった。
くびれた悩ましい腰から尻へのライン。細く長い手足。健康的な象牙色の肌と整った顔立ち……珍しい銀髪と至高の宝石である蒼く透き通った瞳――これで妙齢の女性である。狙われる要素が多すぎて、逆によく無事だったと魔性にすら感心されるレベルだ。
「今までよくご無事でしたね」
人の世の醜さと欲深さを誰より実感している元国王リシュアの、しみじみとした物言いに全員が頷いてしまった。
「私のような性格の女は好まれない。問題ないぞ」
この自覚のなさが最大の問題だった。とにかく子供に甘く、息をするような気軽さで人助けをする。この集団の中で一番魔力は少ないが、人族として見れば最上級の魔術師だった。
「この通り自覚がないから、出来るだけ地味めに仕上げよう」
「でもダサイ恰好は無理よ」
「そうね。リア様の美貌を引き立てながらも目立たない格好がいいわ」
着飾って遊びに行くのに、地味で平凡そうに見える髪色や瞳の色を検討し始める。なんとも複雑な判断を迫られる状況となった。
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