第23話 魔の森のお茶会(11)
魔物を閉じ込めた球体だとは分かるが、先ほどから濁っている。青や緑を帯びていた球体の中が徐々に赤く、やがて黒に近い色に変わる様は興味を引かれた。
「ああ、襲撃者の残りを結界で『遮断』したんだ」
遮断……閉じ込めたという意味に取ったルリアージェは深く考えずに「そうか」と納得した。しかし意味を知るライラは溜め息をつく。
遮断した――簡単に説明されたが、要は世界から隔離したという意味だ。魔族は基本的に散らされても元に戻れる生き物であり、ジルは止めを差さずに彼らを隔離した。
空気も時間もない結界内で、魔物は死んで魔力を散らすだろう。そして結界により隔離された空間で魔力は再び核に集まり、魔物は復活する。だが同じ空間の中でまた殺されるのだ。繰り返す終わりのない生と死は、襲撃した魔物に対するジルの
彼にとって、罰ですらない。邪魔だから隔絶した結界に閉じ込めただけ。その結果を知りながら、虫の羽を千切るように残酷な子供の意識で放置する。
『我は還っても構わぬか?』
アズライルの問いかけに、ジルは少し考える。それから左手を伸ばして柄を掴んだ。
「毎回呼ぶの不便だから、こっちにいたら?」
『呼べばいつでも応えるが』
言外にこちらの世界にいたくないと示されれば、これ以上引き止める理由はない。あっさりと柄を離した。宙に浮いた鎌はそのまま風景に溶けるように薄くなって消える。
「あいつ、付き合い悪いよな」
「しかたないでしょう。モノなんだから」
者でもなく、物でもない。意思がある武器は、世界の核を生み出した
「さて、お茶も終わったしお祭りに行きましょう♪」
浮かれたライラの提案に、ジルも「そうだな」と同意する。しかしルリアージェは不安に駆られていた。
もしかしたら、アスターレン同様サークレラにも『災厄』を持ち込もうとしているのではないか?
「リア、手を取って」
ジルに促されて素直に手を取る。後ろのテーブルや食器を片付けてジルの亜空間に放り込んだライラは、少女の外見に似合わぬ豪快な所作で手を叩いた。
「片付けは終わったわ」
狐に似た大きな尻尾を左右に振るライラが足元に魔法陣を描く。彼女の緑の魔力が魔法陣にいきわたるより早く、ジルは己の足元に出現させた魔法陣で転移した。
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