第19話 大地の魔女(3)
ルリアージェの表現に大きな目を丸くしたライラは、「そんなロマンチックな表現されたのは、初めてね」と笑った。事実、1500年近くを生きる彼女についた二つ名は『大地の申し子』や『大地の魔女』であり、魔性からは『混じり物』という不名誉な呼ばれ方もする。
魔性は親もなく、突然
大地の精霊の子であるから、地の魔力を強く引いて生まれた。大きすぎる魔力は重力のように彼女の成長を押し留め、それでも余った魔力が水晶として耳に現れる。大地の色をした長い髪、萌える緑の瞳、大地を豊かにする動物の尾を持った。
「味方ならば、これからは一緒だな」
ルリアージェの何気ない言葉に、ライラは嬉しそうに頬を緩ませる。と、その首根っこを掴んだジルが彼女を放り出した。透明の床を通り抜けて落ちる彼女に驚いたルリアージェだが、何もなかったように少女は戻ってくる。
万が一意識がなかったとしても、大地の申し子である彼女は傷ひとつなく地に受け止められただろう。それでも抗議はしっかり行っておく。
「ちょっと乱暴すぎるわ」
「うるさい、ルリアージェに触れるな。オレの主人だぞ!」
「あら、あたくしも契約しようかしら」
「ダメ」
子供同士のケンカにしか聞こえないやり取りに、かなり物騒な内容が含まれている。気付いて引きつるリオネルをよそに、ルリアージェは仲裁に入った。
「こら、やめないか。ジル、ライラ」
「でも……」
「だって……」
「やめろ!」
きっぱりルリアージェに言い渡され、無言で2人は頷いた。魔王と肩を並べる実力者、その実力者に封じられた大災厄、どちらも情けないことこの上ない。リオネルは呆れ顔で口を挟んだ。
「レンさんを探すので、私は離れます」
「頼む」
足元に魔法陣を描くと、その中に沈むようにリオネルが姿を消した。この場で唯一のストッパー、まともな常識人がいなくなる。
「ジルが復活したのなら、もうすぐ魔王も起きてくるでしょう? またケンカするの?」
少女は笑顔で爆弾を投下した。
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