大人になるにつれて、透明な自分に何かの色が染まることについて、悪のように語る人がいる。けれどそれは、間違いなのだと思う。染められる、という受け身なのは確かにあまり褒められたことではない場合が多いけれど、この作品の登場人物二人は、自分で選んだ色に染まっている。透明なまま生きてゆくのは難しい、というか無理だ。それは無個性ということに等しい。今から色を選ぶひと、今まさに色を選んでいるひと、まだ透明でまっさらなひとたちに、読んでほしいと思う。