第131話 ピエールの話24

そのころテルオ・リーは、作業着にヘルメットで

現場にいた。

 

朝廷のほうは、アルバイトたちがしっかりと仕切って

くれていたので、安心して任せている。

 

フイ帝国の都市建設は、すべてが完全にストップした

わけでもなく、一部でまだ継続している。すでに

今いるこの都市は、大気が循環している。

 

現場では、農地や住宅の整備が進行していた。

テルオはとくに決まった役割があるわけでもない

ので、お茶くみなど、現場で何か必要なことを

探しては、手伝っていた。

 

今いる都市を外から眺めてみると、月のラグランジュ点

第3エリアにある、都市マヌカのようなバームクーヘン

型の都市が8個円形に連なり、その中心に、円柱型、

直径約100キロの、無重力都市がある。

 

無重力都市の外周にはレールが敷かれ、移動ユニットと

8個のバームクーヘン片がケーブルで接続され、

全体としては、直径約300キロの、円柱形に

配置されていた。そして、外側は回転して重力を生む。

 

それを、マンダラ型都市、と呼ぶようになった。

マンダラ型都市は、中央の無重力都市の中央部と、

外側の8個の都市の重心部を大型船で引っ張り、

移動することができるように都市のフレーム構造が

設計されていた。

 

そして、その横では、移動できるタイプの100キロ

立方の無重力都市も建設されていた。

 

一方そのころ、アミ・リーは、

大群衆を前に演説をしていた。

 

カラフルなラフな服装、金髪のボブに、ピンクの

サングラスをしている。

 

「えーと、細かいところは政策一覧をあとで

発表するので、見といてくださーい」

 

群衆も皆カラフルな派手な格好で、お祭り騒ぎだ。

皆、カラフルな国旗を持って振っている。

 

横から担当者に耳打ちされるアミ。

「国名を言うのを忘れてましたー。ラスター共和国

でーす」

 

「フイ帝国との違いは、あとで政策比較一覧出すので

見といてくださーい。あ、でも一番違うのは、

うちの国には禁酒法がありませーん」

 

拍手喝采が起きる。

 

「酒と国に対する私の義務を果たすよう最善を誓います」

 

宣誓を終え、

 

「じゃあ、かんぱーい!」で就任式をしめた。

花火が上がる。

 

そして、バレンシア共和国の解体が本格化し始めた。

いったんほぼゼロに近いところまで移住し、その後

都市を再構築する。

 

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