第99話 ディエゴの話5

立ち上がりは、そんなに緊張する必要はなさそうだ。

客の入りは3割ほど、それもほとんどが遠目に

見ているだけ。

 

ステージの前のほうには2千人ほど、配信などで

アラハントのことはあらかじめ知ってそうだ。

それも、ウインが登場したあたりからステージ

前の人が増える。

 

そして、マルーシャが登場するころには5割の

入り、そして、かなりステージ前に集まって、

盛り上がっている。


エマドは、観客の中に、何かこう、いつもと違う

音楽に飢えている、そういった雰囲気を感じていた。

 

そして、やっぱり来た、ステージの遠くのほうで

手を振っている金髪の男。人込みをかき分けて、

途中からダイブして運ばれてくる。

 

そして、マルーシャのMCの途中でちゃんとステージ

に到着する。ライブ前に出てくる時間をちゃんと

計算しているようだ。

 

アミから見ても、ライブ自体にだいぶ慣れてきた

ように見えた。そしてアラハントからボッビボッビ

にバトンタッチされる。

 

ここらへんで客の入りは、7割ほど、今回の

ボッビボッビは、先住民や少数民族の迫害の歴史

よりも、過去の戦争の、特に世界大戦の悲惨さ

をメインに歌う。

 

特に反戦を叫ぶ、という感じではなく、ただ

事実を淡々と歌いあげ、その先は聴いている

人たちに考えさせる、というスタイルだ。

 

MCも長めに話す。今回は、事前にケイト・レイと

ライブの内容を綿密に打ち合わせていたようだ。

そして最後はダンス調の曲で盛り上げて終わる。

 

そしてマッハパンチがやるころには、ほぼ10

割の入り、かなり盛り上がっている。

マッハパンチ自体のパフォーマンスも良いのは

あるが、やはり、何か鬱屈したものを発散

したい、そういう勢いがあった。

 

一方楽屋では、演奏の終わったアラハントの

メンバーが、酒盛りを始めている。差し入れの

酒がたくさん並んでいる。

 

ボッビボッビの3人がそれを眺めながらお茶と

お菓子だ。いや、テルオもそこに加わっている。

 

控室のモニターからは、マッハパンチの4人が

ウィッグを取る場面が映し出され、会場は

とんでもない興奮に包まれている。

 

この後のライブのシナリオとしては、ネハンが

演奏したあとに3バンドがもう一度ステージに

登場、といったことはしない。

 

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