第83話 ゴシの話24

無重力下での引っ越しは簡単である。

家ごと目的地へ持っていけばいいのだ。


そもそも建てるときに、工場から家を

引っ張ってくる。例えば、居住キューブ

8個分の立方体をした、つまり

10メートル立方の大きさの家なら、

それが通る通路がある場所へなら

どこへでも引っ越せる。


行政でミスがない限り、来た時の道が

塞がることもない。


面白いのは、賃貸であっても大家次第で

移動が可能なのだ。よっぽど変な場所で

ない限り、賃貸物件の移動も可能だ。


住む場所を探すときは、都合のよい場所

にまず都市フレームの空き、つまり

空地があるか探す。あれば申し込む。


家はいくらでも工場に在庫があるが、

人気のサイズは地域ごとに空き家を

置いていて、それを移動させるだけだ。

申し込みから一日から二日で済む。


このあたりの住宅事情は、重力下の都市

とはだいぶ異なるかもしれない。


都市フレームについても説明しておく。

これは単に、居住キューブを支えるための

柱、というように聞こえるが、意外と

高機能である。


電気、ガス、上水、下水、有線ネットワーク

等のサービスを供給するからだ。


地方によっては、特殊なサービスも供給する。

例えば、温泉であるとか、果物の果汁を

加工して飲料できるようにしたものを

供給するところもあるらしい。


もちろんその場合は、居住キューブ側でも

インターフェースが対応している必要が

あるが。


無重力下でそのほかに異なる点をいうと、

実際身の回りのものはほとんど異なる、

と言えるかもしれない。


例えば、アラハントのメンバーたちが

泊まるホテルの、トイレ、バスなどは

比較的重力下のものと似せてはいるが、

働きはだいぶ異なる。


簡単な話、水を扱うものが特徴的だろう。

重力下でのものをそのまま無重力へ持って

くると、液体である水が散らばって

たいへんなことになる。


これは街中にも言えることだが、いたる

ところにフィルター付きの排気孔が

あり、空気の流れを作り出してゴミや

不意に散らばった液体などを回収

する仕組みがあるのだ。


重力がない、というのは、利点もあるが、

物が落ちてこないというのは意外と

面倒なのである。


アラハントとサクハリンのメンバー、そして

ゴシ・ゴッシーが夕食の場へ到着したようだ。

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