第68話 ゴシの話9

木星第4エリアの都市オイラトは、シリンダ

タイプの構造都市だ。宇宙世紀開始のころ

から存在するタイプであるが、オイラトの

築年数自体はそれほど古くない。


クリルタイ国ではシリンダタイプが多く使用

されているそうだが、第3エリアにも存在

するような、バームクーヘン型都市も少しづつ

増えているらしい。


クラブ・ブハラはオイラトのダウンタウンの

中心部に近いあたりにあり、建物の最上階も

含むフロアにある。実際は上から3階分を

占有している。


最上階にあたる部分の天井は偏光可能と

なっており、夜間は透過して外の景色が

見える。それほど広くないがバルコニーも

設置されて外の空気を吸うこともできる。


天気が良ければ対面の都市の夜景や日光を

取り入れるガラスエリアから星空も見える。


今日のライブは19時開演でクリルタイ国の

音楽ユニット・サクハリンの演奏でスタート

する。1時間ほどでアラハントの演奏が

開始し、1時間ののちにまたサクハリンに戻る。


開始2時間前でサクハリンのリョーコ・ミルズ

が到着した。早速メンバーを紹介してもらう。


「うち、第3エリアの人と共演するの初めて

やねん!」

若干訛りが気になるが、気さくな感じのひとだ。

ジェフのほうはDJとして火星以内でもプレイ

することがあるらしい。


「でもアラハントの配信見てるよ」

「え? マジですか」


「僕らと方向性似てるからねえ、そういうのは

メジャーかどうかに関わらずチェックしちゃう

かもなあ」

答えるのはジェフ・タナカだ。


「じゃあ僕ら出演先なんで調整させてもらいます」


3階分あるフロアの構造としては、一番下の

フロア中心部に少し高くなったステージ、

2階と3階は吹き抜けの見下ろし型でステージ

が見えるようになっているが、


メインの空間以外にも、別の曲も演奏可能な

セカンドブース、そして多くの休憩スペースを

備えていた。ダーツやビリヤード台もあって

長時間でも飽きさせないつくりだ。


ステージと接続された複数の控室もあって、

そこでアラハントは調整を続けていた。


そしてサクハリンの開演間近という時間になって、

「あー! やっばーい、あれ、忘れたー!」

アミの声だ。


「ゴシさん、あたし、空港まで取りに行く」

空母に忘れ物をしたというのだ。

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