第46話 ヘンリクの話7

そうだ、エンゾさん手伝う仕事があった!


あわてて3人にそう告げて、ゲルググ店内に急ぐ。

40歳、独身、ヒゲの巨漢だ。


「おうヘンリク、遅いな」


エンゾ・グラネロ、バーゲルググの店長だ。


この店を一人で運営している。

というと聞こえが良いが、出演者や客に

けっこう手伝わせている。


今日も最初に来て鍵を開けて中を少し片づけて

くれたのはボッビボッビの3人だ。


とりあえずあるていど片付いているのを見て、

自分の分のセッティングを済ませておく。

端末をビジュアルミキサーに無線で接続し、

今日使う分が3つのフォルダに入っているの

を確認する。


それから照明機材の確認をしたら、ドリンク

や軽食の類がすぐ出せるようになっているか

確認。


「エンゾさん、前切れてたリキュール」

「おう、買っといたよ、そこそこ」


外が少し騒がしくなった。

マッハパンチが到着したようだ。


ちなみに今日の出演順は、21時から

アラハント、そこから1時間づつで

22時からマッハパンチ、トリが

ボッビボッビで0時に終わる。


開始20分前だがアラハントはまだ

来ていない。


「エンゾさんこんちわー」

太い声が聞こえてくる。


とにかくこの4人はでかい。4人とも

180センチ以上ある。基本的にステージ

ネームでしか呼んでいけないことに

なっているので、


ボーカルのキング、身長182センチで

この中では一番低い、髪もこの中では一番

短いが整髪料でうしろへ撫でつけている。


ギターのプリンス、身長なんと195センチ、

痩せ型、長髪、父親は郵便局員で、プリンスも

年末年始たまに局でバイトしている。


ベースのクイン、身長187センチ、長髪

美形であるが、男性だ。家はお寺でお酒

が飲めない。


ドラムのナイト、身長185センチ、長髪、

実家は道場で、キャポエイラという

古武術らしいが、この4人ともこの道場で

習っているらしい。一番筋肉がごつい。


4人はステージ横の扉から控え室へ抜けて

いく。控え室といっても、そこはサクティだ。

店同士がつながっていて、そのスペースに

それっぽく衝立を立てて控え室という

ことにしている。


通りぎわに4人とも無言でヘンリクの肩を

ガシっとつかんでいくが、これが地味に痛い。

今日もお互い頑張ろう、という意味らしい

のだが。

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