第26話 包囲殲滅
「元気がいいな兄ちゃん。
ちょっとやり過ぎちまったから、みんなでお仕置きタイムだぞ?」
どう見てもさっきのゴリラです。
双子同士でくっついてたのかよ…
さっきのは床に刺さったゴリラだから、刺さリラ。
こっちは今地面に埋まったから埋まリラね!
「な!?どうなってやがる!
魔法か!?ここから出しやがれ!」
魔法で落とし穴を作った直後に隙間を塞ぎ、首から上だけが出ている状態だ。
足下の小石を蹴ってぶつけていると、他の傭兵が周囲に広がっていく。
包囲されても大丈夫!
回し蹴りの風圧だけでもみんな吹き飛ぶよ!
「これぞまさに包囲殲滅!」
「逆じゃねえか!!!」
あ、埋まってたウマリラは吹き飛ばされず無事のようだ。
突っ込みを入れてくれたから、頭の上でさっき買った赤いみかんみたいな果物を握りつぶしてあげよう。
よい子は食べ物を大切にね!
ウマリラに蟻が集まる様子を無言で眺めていると、槍を持った人達がやって来た。
俺に気付くと槍を突き付けて牽制、威嚇を始めた。
「何者だ!この倒れているヤツらはお前がやったのか!」
4人で包囲しつつ槍を向けてくる。
つまりこれも殲滅すればいいんですかね?
「襲われたから反撃しただけだよ?」
「本当にそうだとしてもこれはやり過ぎだ!
ちょっと詰所まで来てもらおうか。」
おう、詰所って事はこの人達衛兵なのか。
うーん…どうしようか。ついていくべきか逃げるべきか。
「ちょっと待ちたまえ。そこの方は先ほど城の中で会った方だ。
それを踏まえた上で詰所に連れていくというのなら好きにするがいい。」
おおう、あれカイゼルヒゲって言うんだっけ?
鼻の下のひげが横にぴろーんってなってるやつ。
肩パットガッツリ入ったダブルのスーツって、ボディコン姫と言いこの世界の貴族はバブル期の日本のような恰好が普通なのだろうか。
「別に詰所についていくのは構わないけどさ、この国って襲ってきたやつを返り討ちにしたら犯罪なの?」
心底どうでもよさそうに質問する俺に、カイゼルヒゲが答えてくれた。
「それが真実なら犯罪になる事は無いはずなのだが、悪い人間に目を付けられると貴方が最初に襲った事になるかもしれんな。」
なるほど。
スリが何もしてないと口裏を合わせるなら、人材斡旋所にスリを叩きつけた俺が犯罪者で確定って事か。
つまりこの貴族っぽいカイゼルヒゲに借りを作らなければ、この場を丸く収める事は出来ないという事か。
でもそんなの関係ないな。
この衛兵と貴族がグルなのかどうかまでは知らないが、誰に何をしようとしているのか。
そこをしっかりと教えてあげないといけないかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます