第36話 お風呂でラブラブな日

 生活をする上で、入浴をすることは必須である。シャワーのみか湯船に浸かるかはそれぞれだが、体を洗うというのは我々には身近なことだろう。


「トキ〜、お風呂沸いたぞ」


「入りましょうか!」


 それはアニマルガールでも同じである。無論、トキとツチノコも当てはまる。


 さて。


 恋人同士で同棲しているからといえ、二人でお風呂に入るわけではないのだろう。実際のところ、世の中のカップルを統計で見てどっちの方が多数派なのかは分からないが、毎日二人でお風呂というのもそう多くはないだろう。


「ほらトキ、行こう?」


「すみません、ご飯だけ炊いちゃうので……」


「ああごめん、手伝うよ」




 しかし!


 トキとツチノコは毎日一緒である!!




 そんなわけで、炊飯器のセットだけして二人で脱衣所にやってきた。別に特別なことではなく、毎日のことである。


 最初に出会った頃は裸を見せるのも恥ずかしがってた二人だが、今ではなんの恥じらいもなく服を脱ぐようになった。もちろん相手が相手だからである。


「ツチノコのパーカーは脱ぐの楽そうですね」


「トキはたくさん着てるもんな?手伝う?」


 ツチノコが自分のパーカーとホットパンツを脱いだ状態でそういうので、トキは両手を振って否定した。


「いやいいですよ!?」


「え、いいOKですよ?」


「あ、ちが……あっあっあっ」





 二人で浴室に立ち、順番でシャワーを浴びる。というが、実際は先にシャワーヘッドを手に取った方がもう片方に湯を浴びせながら自分も少しずつ浴びるという形で体を流す。今日はそれがトキだった。


「ツチノコ?シャワーかけますよ?」


「あ、ありがと」


 トキがツチノコにしゃわわわと簡単に湯を浴びせる。デリケートなところを狙ったりするのは先程の仕返しである。

 その後にトキも自分で体を流して、二人で湯船に浸かった。


「あったかいですね」


「うん、癒されるな」


 二人が湯船に入る時は、基本的に端と端にそれぞれ背中をつけて顔を合わせる形である。足を伸ばして相手のお腹をつついたり、両者膝を抱えてみたりと姿勢は様々だ。今日は、足をゆるく伸ばしてツチノコの股の間にトキの両足が入るような形だった。


「ツチノコ、私、身体洗いますね」


「あ、背中流すよ」


「えへへ、お願いします」


 最初に湯船に肩を沈めるのはほんのわずかな時間で、すぐに身体を洗い始める。今日はトキから。自身の体を綺麗にしている間に、ツチノコが背中を洗う。


「トキの肌はすべすべだな」


「もー、いつも言ってますね」


 ははは、とツチノコが笑って返す。ツチノコは普段スケベだが、あまりこういう所でイタズラはしない。素直に背中をこすり、おかげでトキは首から下全てが泡だらけになる。


「頭もお願いしていいですか?」


「もちろん」


 トキの泡は取らずに、そのまま髪の毛を洗いに入る。頭を洗うのは、この家ではパートナーの仕事だ。トキの髪はツチノコが洗い、ツチノコの髪はトキが洗うのだ。


 トキの湿った髪に、シャンプーをつけたツチノコの手で触れる。そのまま頭皮を揉むように手を動かすと、白い髪に泡が立ちさらに白く見えるようになる。


「ツチノコはシャンプー上手ですね」


「どうも?羽も揉むぞ」


「わーいありがとうございます!」


 トキの羽もみも恒例だ。日頃飛ぶ時の疲れをツチノコがほぐす。この時のトキのだらしない表情がツチノコにはたまらないらしい。


「はいおしまい。流すぞ?」


「はーい」


 手桶で湯船から湯をすくい、トキの頭からざばーっと流す。トキは体の泡まで一気に流されて、綺麗になったキレイな身体をあらわにする。ツチノコ悩殺。


「じゃ、ツチノコの番ですね!」


 前後を交代し、今度はツチノコが身体を洗う。自分で前を洗う時に、トキが背中を磨く。やはりいつも通り……のはずだったが、今日はちょっと違った。トキの手が、背中から零れてツチノコの前の方まで出てきたのだ。


 そして。


 ツチノコの慎ましい胸を、きゅむっと手に取った。


「と、トキ?なにして……」


「さっきお洋服脱がされた仕返しですよ?」


 ツチノコからは見えないが、トキは何食わぬ顔で返事をした。ツチノコは特に抵抗しない。そのせいか、トキも少々エスカレートする。


 その胸を、揉み始めたのだ。


「ほら、ツチノコ?私のこと好きですか?」


 いやらしい手つきで、手に収まるサイズの柔らかさを堪能しながらトキが問いかける。


「うん、好き……愛してる……けど」


「ふふふ、私も。知ってますか?好きな人のこと考えながらおムネ揉むと、大きくなるんですって」


「ストレートすぎ。私も少し気にしてるのに……」


「知ってますよー?だから、私もお手伝いしようと思って」


 トキの手の動き方に呼応して、ツチノコがぴくんと跳ねる。


「トキは、前に気にしなくていいって言ってくれたじゃん」


「それはそうですけど、ツチノコが大きくしたいなら別ですよ?私にできることがあれば、こうして……」


 ぎゅっ、とトキが手に力を込める。当然、ツチノコはその分の少し強引な心地良さを胸に感じることになる。つい、身体をよじらせながら声を漏らしてしまった。


「……トキ、仕返しの仕返しは覚悟しておいて」


「きゃっ、ツチノコのエッチ♡」


(酔ってたりしないよな……?)


 トキは素面である。若干、変なスイッチが入っている感じではあるが。


「ほーら、女性ホルモンが大事なんですって!エッチなことするとたくさん分泌されるらしいですよー?ほら、ツチノコは尻尾をさすられるのが〜……」


 トキは片手をツチノコの胸から外し、代わりに尻尾へやる。ボディソープでヌルリとした手で、テンポよくそれを撫で始めた。ツチノコから、抑えようとしたのに出てしまったような弱々しくも艶めかしい声が発される。


「トキ、ストップ」


「だーめ」


「これ以上したら、私も手加減しないぞ?」


「うふふ、どーぞ?」


 トキがツチノコの手をまた一揉みした。


 どったんばったん。最近は禁じていたはずだったが、誕生日の日からすっかり緩んでしまった。愛し合っているのでそれでもいいことにする。


 本日も平常運行、これがH常です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る