第25話 洞窟でお目覚めの日

 目が覚めたのは、薄暗い洞窟の中。天井に穴が空いているのか、部屋のような空間に一筋だけ白い光がさしていた。


 トキは、目の前のツチノコがすやすや寝息を立てるのをにんまりと見つめていた。


 昨夜、ツチノコが耳元で囁いた日付。自分とおそろいというのが嬉しくてしょうがない。思い出しては嬉しくなり、事実をかみしめまた嬉しくなる。上手に描けた絵をつい見返して顔を緩ませるのに似た感覚だった。


 だから、ツチノコが起きた時に目に入ったのは嬉しそうに笑うトキの顔だった。


「おはようございます、ツチノコ」


「おはよ、トキ」


 そういう二人の距離はとても近い。理由は簡単、ひとつの絨毯に二人で巻かれているからだ。お互い身動きが取れない状況で、胸から脚までピッタリ密着している。


「もう少しこのままでいい?」


「もちろん、大歓迎ですよ」


 短い会話の後で、お互い目の前のパートナーの顔を見つめ合う。


「こんな所に連れてきてごめんな」


「なに言ってるんですか、ツチノコのためならどこでも行けますよ」


 そう言い放ったトキの笑顔に、ツチノコは昨夜抱いた疑問を思い出す。


「ねぇ、悪い意味で訊くわけじゃないんだけどさ」


「なんですか?」


「・・・なんで、トキって私のために色んなことしてくれるの?」


 ツチノコがそう問うと、トキは目をぱちぱちさせてから逆に質問をしてきた。その話題は、もう一年ほど前にトキが失踪してしまっ時のこと。


「ツチノコは、なんでいなくなった私を探してくれたんですか?」


「なんでって、好きな人がいなくなったら心配するだろ」


「一日中探してくれたんですよね?なんでそこまでしたんです?」


「だから、私がトキのこと好きだからなの」


 トキの質問に、ツチノコはムッとした表情を見せる。そんなに問うような事でもない、好きな人、愛する人なんだから当然だ。ツチノコはそう考えていた。そして、トキの返事を待つツチノコに返ってきたのは少し予想外なものだった。


 トキの顔面が近い。唇が温かい。柔らかいものを押し凹ませながら、こちらも押し凹ませられる。いつもしているのと一緒なのに、今日のは特別心地よく感じた。


「同じです。私もツチノコのこと大好きだから」


 トキがそう笑ってくれた。その回答にツチノコは言葉を返せず、代わりにお礼でもう一回唇をつけることしか出来なかった。





「そろそろ出ますか?」


 少し長めの接吻の後に、トキが提案する。


「うーん、ちょっと惜しい感じが・・・」


「ツチノコなら何回でもぎゅってしますよ?」


「ふふ、それなら、またしてもらえばいいか」


 ツチノコがそう言って、絨毯の中でトキのことを抱く。そして、そのままころんと横に転がった。転がった分、絨毯が剥がれる。その際にトキが一瞬ツチノコの上に乗ったが、お互い気にしてないようだ。


 ころん。ころん。ころん。


 何回も同じように転がり、絨毯を剥がしていく。やがてトキとツチノコをくるむものは無くなり、洞窟の地面の冷たさを感じることになった。


「つめたいっ!」


「あはは、だな?そろそろ帰るか?トイレ済ませて」


「そうですね、食べるものも福豆しかないですし・・・あれ、そういえば」


 トキの頭に質問が思い浮かんだが、目の前でキョトンとした顔をするツチノコにそれを尋ねるのはやめにした。きっと野性的な料理をしていたことだろう。

 ところが、ツチノコはトキの意に介さず勝手に質問の答えを話し始める。


「バケツ持ってきとけば、料理もできたんだけどな〜。あ、でも水も貯めてないし食材が無かったか・・・朝から捕ってくるのも大変だしな」


「あはは、そうですね〜」(何を!?)


 とりあえず、ツチノコの食事は触れないことにした。その生活でも健康だったのはフレンズ体のおかげだろう。


「じゃ、トイレこっち。着いてきて」


「はーい」


 その後はトイレを済ませ、洞窟を後にした。トイレの時に、トキが色々困惑してしまいツチノコがレクチャーしたのはいい思い出。詳細はご想像にお任せします。





「ただいま帰りました!」「ただいま」


 一夜ぶりの我が家に返ってきた二人。ひとまず歯を磨き、トキが朝食の支度をする。その間にツチノコは朝風呂の用意などをして、最終的に二人でダイニングテーブルについていただきますを言った。今日のメニューは目玉焼きとトースト、ベーコン等々。海の向こう風朝ごはんだ。


「ねぇトキ?」


「なんですか?」


「やっぱりお家が一番だな」


「ふふ、そうですね」


















「ところでツチノコ、目玉焼き一口で食べるの好きですよね」


「ありがたみがなくてごめんな・・・でも一番美味しいんだよ、皿も汚れないし」


「んぐぐ、私のお口そんなに入りませんね・・・」


「いや、無理してやらなくても・・・」

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