第21話 お正月振り返りの日

「もうお正月も終わっちゃいましたか・・・」


 トキが買いたてのカレンダーを撫でながら、寂しそうに呟く。


「正月楽しかったな」


 そのトキに後ろから声をかけるのはツチノコ。その声を聞いてトキは振り返り、ツチノコと目を合わせてからにこりと微笑む。


「そうですね?いろいろありました」


「な、色々やったなー」


 話しながら二人で移動し、ソファに身を寄せて座る。


 本日は1月6日。前回の年明けの瞬間から、丸五日間過ごし、正月であるその間に様々なことがあった。例えば・・・


「トキが餅詰まらせたのはビビったな」


「ご迷惑をおかけしました、あはは・・・」


 元旦の日に、二人でお雑煮を作って食べていた時のことだ。



 ☆☆☆



「美味しい・・・」


「ふふふ、良かったです」


 トキが作った雑煮の汁に、市販の餅を入れて食べていた。トキもツチノコも満足な味に、いい顔をしながら口にくわえた餅を伸ばしていた。


「この餅、柔らかいのはいいけど噛み切りにくいな」


「ほふでふね、きほつへなひゃ」


「ほらほら、そんなことやってると危ないぞ?」


 そんなやり取りをしながら、またツチノコは次の一口。伸ばしてから噛み切って、口の中でもぐもぐさせていた時だ。


 トントントントン。


 その肩が物凄いスピードで叩かれた。叩くのはもちろんトキ、ツチノコがそちらを振り向いた時にはすごく苦しそうな表情をしていた。


「どうした!?」


 ツチノコが声をかけても返事はしない。代わりに嗚咽の声を出して、ツチノコに状況を知らせる。


「詰まらせたのか!?」


 トキが頷き、オエッとポーズをとる。


「ええと、どうすれば・・・」


 ツチノコがうろたえる間にも、トキの表情がより苦しそうになる。


「ごめんトキ、痛いかも!」


 詳しくはないが、なんとなく身につけていた知識でツチノコはトキの背中を叩く。トキが咳き込む。もう一発。咳き込む。


「げへ・・・ごほっ・・・ぇ」


 ツチノコが数回叩いているうちに、トキが静かになった。そのまま逝ってしまったわけではなく、何も言わぬままトイレに行って口の中の餅を吐き出した。


「はー・・・死ぬかと思いました」


「大丈夫か?」


「ビックリしました、お餅には気をつけないとですね」


 深刻そうな表情のトキは、その後餅をまた焼いてお雑煮を美味しそうに食べていたという。ツチノコは、トキのたくましさに少々引いていた。



 ☆☆☆



「でもお餅って美味しいですよね」


「私だったらトラウマでもう食べれないけどな・・・」


 トキがあまりにも平然と話すので、ツチノコは一周まわって笑ってしまう。


「そうだな、餅以外だと・・・着物が思い出になったかな」


「無料レンタルのやつですね?着物ツチノコよかったですよ!」


「トキもな」


 お正月のバタバタ感が落ち着いてきた、3日のこと・・・



 ☆☆☆



「ツチノコ!これ見てください!」


 トキが嬉しそうにツチノコに見せたのはチラシ。


「えと・・・着物無料レンタル?凄いな」


「神社の通りらしいです。初詣してませんし、そのついでに行きますか?」


 遅詣こと暮れ詣をしたので、初詣には行かないつもりだった二人だがこのこともあり神社に赴くことにした。





「混んでますね・・・」


「観光客も多いな、まぁそんなもんか」


 特に気にすることなく、神社に続く道にある着物屋に入る。例のレンタルサービスのところだ。受付を済ませ、住所等書いた上で着物を選ぶ。二人ともよくわからないので、お店の人に選んでもらった。


「じゃ、またあとで」


「外で待ち合わせにしましょう!」


 二人とも別の部屋に入る。着付け師の人も一緒だ。なんとこの店、レンタル無料だが着付けは有料である。そういう商法だ。トキとツチノコはケチらずに着付けを頼んだのだ。


 少しの時間を置いて、外・・・


「おお!トキ似合ってる!」


「ツチノコこそ。可愛いですね?」


 お互い、いつもより綺麗に見える愛する人に興奮を隠さない。ベタ褒めしながら写真を撮り、そのまま手を繋いで参拝に向かった。



 ☆☆☆



「カメラ買っといてよかったよな」


 ツチノコがデジカメをいじって、撮った写真を眺める。その小さな画面を、横からトキも眺める。二人の着物姿が何枚も入っていた。


「ほら、ツチノコかわいい」


「トキだって」


 カメラにはトキかツチノコ、もしくは二人での写真がほとんど。ラブラブな証拠だろうか。いやらしい写真や動画が入ってるかはご想像にお任せします。

 そんな中で、珍しくトキでもツチノコでも無い写真が出てくる。


「初日の出はすごかったですね!」


「綺麗だったな」


 綺麗に撮れた、初日の出の写真。



 ☆☆☆



「ツチノコは眠くないんですかぁ・・・?」


「テレビ見てると平気じゃないか?」


「私は無理です・・・ふぁぁ」


 年明け後の午前三時頃、二人ソファに並んで日の出の時間を待っていた。昨年は二人ともフラフラしながら日の出を待ったが、今年のツチノコは平気そうである。


「ツチノコ起きてるんですか・・・?」


「え、トキ寝ちゃうのか?」


「少し仮眠だけ・・・」


「了解、起こすよ」


「ありがとうございます・・・」


 こて、とトキがツチノコの肩に頭を乗せる。


「寝にくくないか?」


「・・・でも、ツチノコで寝たいです」


「じゃ、はい。膝枕」


 ツチノコがとんとんと自分の太ももを叩く。この寒い日でもホットパンツの彼女の、綺麗な脚がトキを誘惑した。


「お言葉に甘えて・・・」


「ん、おやすみ」


 トキがソファに横になり、ツチノコの膝に頭を乗せる。トキが目を閉じたところで、そのおでこをツチノコが撫でる。


(トキかわいい・・・)


 自分の膝にいる好きな人を眺めてると、色んな気持ちが湧き起こってくる。正月の特番なんかよりよっぽど面白かった。





「トキ、起きて」


 五時頃になって、ツチノコがトキのおでこをぺしぺしはたく。なかなか起きないので、ほっぺをつついたり目覚めのキスごっこをしたりしたがトキは起きなかった。


(そういえばトキって、寝ると色々変なんだったな・・・)


 トキが寝ると、寝相が凄かったり寝言が凄かったりする。一年近くツチノコの腕に絡みついて寝ていたので、寝相は何とかなるしツチノコも寝ている間は寝言が気にならないので平気だったが・・・


「んん・・・ツチノコ、はげし・・・」


 なぜ、こうも寝ている間に積極的に誘惑してくるのか。ツチノコは疑問でしょうがないし、ドキドキしてたまらない。実は、もう一時間くらいこの感じなので罪悪感に駆られながら悪質お触りをしてたりしていた。


(くそっ、トキの夢の中のヤツめ・・・羨ましい)


 寝言でツチノコと呼んでるあたり、トキは頭の中でツチノコとイイコトしてるようなので、ツチノコは誰を妬んでいるのかよくわからないことになっている。

 しかし、だからツチノコが満足できるわけではない。叶えたいとは思いませんか?思うに決まっている。


 その後、トキを無事に起こして初日の出を拝んだ。ツチノコは一睡もしていないので眠そうだったが、それから寝てしまったのか朝エッチコースだったのか・・・二人のみぞ知る。



 ☆☆☆



「色々ありましたね?」


「な、楽しかった」


 お正月の間に、他にも色々あったが二人の思い出話はここまで。


「改めて、今年もよろしく」


「はい、よろしくお願いします!」


 今年もよろしくお願いします。

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