第18話 クリスマスの日-1

「・・・」


 12月25日。ツチノコは朝早く起き、洗面所の鏡の前に立っていた。


「どう巻くんだこれ」


 素っ裸で、手にはリボン。サンタさんから貰ったものだ。トキが起きる前に自分をラッピングしようと必死になっている。


「サンタももう少し詳しく書いてくれればいいのに・・・」


 使い方が記されたメモ用紙には、『これを体に巻きつけて「私がプレゼント」って言えばOK』と大きく書かれて、端の方に『あまりきっちりしないで、はだけさせた方がGood』と小さく書いてあるのみ。


(サンタってどんなスケベなんだろ・・・)


 ツチノコの中のサンタのイメージが揺らぐ。





「えっくし!」


 ナウ宅。防音室で大きくくしゃみをするナウサンタの姿がそこにはあった。


「うー、本番なのに風邪・・・?」


 ジャン、とギターを鳴らしながらこぼした。





 場面は戻り、鏡の前のツチノコ。


「まず、隠すところは隠すだろ?」


 とりあえず、リボンで胸の周りを一周隠す。そこから、股に回してソコも最低限隠す。


「えっと、それで・・・」


 くるくるくる、と適当に胴体に巻く。鏡を確認し、なかなかえっちぃことになった自分の体を眺める。


「・・・なんかイマイチ」


 どうも巻き方が気に入らない。ほどいて、また巻く。試行錯誤を繰り返す。


「こんなのどうだ!?」


 二色のリボンを使い、うまい具合にエロカワツチノコが出来上がる。自分で自分の体を見ても面白くはないが、きっとトキなら喜んでくれるだろう。


「よし、寝室まで戻るか」


 ベッド横でスタンバイしようと、鏡の前から離れる。瞬間、スルスルとリボンが解け、床に落ちていく。振り出しへ。


「もぉーーー!」


 ツチノコは嘆いた。





(あれ・・・?ツチノコがいない・・・)


 朝、トキが目覚めた時隣にツチノコはいなかった。


「ツチノコー?」


 小さく呼んでみるが、返事はない。体を起こしてみると、床に散乱した衣服が見える。ツチノコのパーカーもその中には見えた。


(どこ行ったんでしょう・・・)


 とりあえず、ベッドから降りる。何も着ていないトキに、冬の室内特有の冷気が突き刺さる。つい小さな悲鳴を上げてしまった。


「下ですかね?」


 一階に降りようと、ドアへ向かう。しかし、これでは寒すぎるので毛布にくるまった。


(湿ってる・・・///)


 毛布は使い物にならない。そう判断したトキは、自分の服を着ようと脱ぎ捨てられた衣服に近づく。


「・・・」


 自分の服を手に取り、眺める。正直、ツチノコを探しに行くだけなのに着るのはめんどくさい。朝のシャワーを浴びてから着るので十分だろう。


「・・・ちょーっとお借りしますね」


 そう言ってトキが手にしたのはツチノコのパーカー。腕を通し、チャックを上げる。謎の背徳感があった。


(あ・・・ツチノコの匂い)


 好きな人の匂いに包まれて幸せな気分になりながら、トキは廊下に出る。パーカーの持ち主の名を呼びながら、階段を降り始めた。





「ツチノコー」


 寝起きの声が家の中に響く。それを聞いて、ギクリとするフレンズが一人。


(トキ起きちゃった・・・!?早く終わらせなきゃ・・・)


 ツチノコのリボン巻きは終盤に入っていた。あとは背中ですべてをまとめるため、蝶結びを作るだけである。しかし、トキが階段を降りる音がツチノコを焦らせる。


「くそっ、上手く結べない・・・」


 首をひねって、鏡を見ながら手を動かす。尻尾も補助に使っているのだが、なかなかできない。


「ツチノコ〜?どこにいるんですか?」


 トキの階段を降りる音が止み、代わりに廊下を歩く音が聞こえてくる。


(わわわわ・・・よし、できた!)


 なんとかセッティング完了。裸リボンツチノコの完成である。


(でも・・・)


 問題は、トキが起きてしまったことだ。リボンを巻いてトキを起こし、ドギマギさせる作戦が台無しである。


(作戦変更、トキを部屋に戻して私が後から登場にしよう。言い訳考えなきゃな)


 そんな時、コンコンと洗面所の扉がノックされる。


「ツチノコ?居ますよね?」


 トキの声だ。ツチノコはリボンの類を隠し、ドアの裏に体を隠す。首から上だけ出して、扉を開けた。


「お、おはよう・・・え、何それ」


 ツチノコが扉を開いてまず見えたのはトキ。しかし、来ているのはツチノコのパーカーである。


「おはようございます、ツチノコ。いや、ツチノコ探しに来るのに丁度いいなーって、少し借りちゃいました」


「そっか。私着替え中だから、少しリビングで待っててもらっていいか?」


 挨拶の流れの後で、一見自然な嘘をつくツチノコ。言ってから、とんでもない嘘をついてしまったと後悔した。


「ツチノコの服は私が着てるんですよ?何に着替えてるんですか?」


「え、いや、えーと・・・その・・・」


 ツチノコ、キョドる。誤魔化しが効かない状況に陥ってしまった。


「怪しいですね、入りますよ!」


「いや、ちょ、ちょっと待ってー!」


 ツチノコの制止を聞かず、トキが洗面所に入ってくる。そして、ハッと顔を赤くする。ツチノコも観念し、ぎこちない笑みを浮かべて言葉を出す。


「め、メリークリスマス・・・」


 トキは顔が真っ赤になっている。今までで一番の赤さかも知れない。


「クリスマスプレゼントに、私なんて・・・どうかな?」


 ツチノコの誘惑。正直、言うツチノコもものすごい恥ずかしかった。案の定、顔も赤くなっている。


「・・・もらっていいんですか?」


 トキの質問にツチノコが小さく頷く。


「・・・今日、午前中空いてるんですよ?」


 ツチノコが、こくり。


「本当に好きにしちゃいますよ?」


「・・・どうぞ」


「覚悟してくださいね?」


「トキが喜ぶなら・・・」


 心なしか、トキが来ているパーカーの目が光った気がした。


 この後滅茶苦茶(ry

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