第163話 小説が書き手を育てるのかも


 現在、『ときめき☆ハルマゲドン』第5章の詳細なプロットを作っています。


 そもそも『ときめき☆ハルマゲドン』は、『刀剣オカルトMØDE』を書き終えたとき、「いやおまえ、100人斬りとか書く力があるのなら、それをもっと読者を楽しませるために使えよ」と、書き手としてのスタンスを深く反省したことがきっかけで書き始めた物語でした。


 以前に第1話だけ書いてそれっきりの長編、旧作『ときめきハルマゲドン』から主人公の死織を残し、新たに新主人公ヒチコックを作り出して、「とにかく読む人を楽しませる」、それだけを考えて書き始めたのが最初です。


 自分に似たキャラである死織と、ぼく自身とはまったく異質であるヒチコックという二人の主人公。

 そして、とくにプロットに力を入れて書くスタイルはこの『とき☆ハゲ』から始まりました。

 そしてその『とき☆ハゲ』も第5章になります。


 現在第5章のプロットを作っているのですが、この長編小説『ときめき☆ハルマゲドン』という作品が、ぼくに要求してくることは、いつもながら多いです。



 第1章では、ヒチコックにつらい選択をさせました。ぼくはああいうストーリーは通常は書きませんが、あそこではそうも行かなかった。


 第2章では、複雑な伏線に挑みました。基本ぼくは伏線頼みのストーリーは嫌いです。


 第3章では、プロットに苦労しました。


 第4章では、もっとプロットに苦労しました。


 そういえば、第4章で思い出したのですが……。



 他の場所で、自分が意識していないキャラクターが、読者に大人気ってことがある、みたいな話が出ていました。

 ぼくが半分ギャグで書いた第4章のキャラ、コヨーテ。登場させたら、女性読者さまから黄色い歓声が飛んで、まじビビリました。どうやら流行りのイケてる親父ってことだったらしいのですが、彼、実は……(笑)。



 あと、もう一人。『とき☆ハゲ』ではないのですが、『電影竜騎士団』のダメ子も人気があって驚きました。



 キャラって、あまり考えない方がいいのでしょうか? もっとも、うちには、よく考えて練り込まれたキャラクターっていないんですけれど。なんなんですかね、あの、『宇宙海賊☠キャプテン・モーモー』のコアラってネーミングのキャラとか、書いているそばから勝手に出てきた『カーニヴァル・エンジン戦記』のビュートとか。




 まあ、それはさておき、話を第5章にもどします。



 プロットって、ちゃんと組んでいると、ストーリーの転換点というものが明確になってきて、そこで重要な意味をもつ、というか、ストーリーを転換させるために必要な推進剤が明確になりますね。

 それは、だいたいにおいて、キャラクターのセリフだと思うんです。ここ一番という転回点において、主人公なり、それを導く脇役なりが放つ、心に響く名セリフ。



 今回は、死織とヒチコック、二人にそれぞれ一回ずつ、物語を転換させるためのセリフを吐いてもらう予定でいます。そのためのセリフを考えるのはぼくなんですが、……自信がねえ。いままでセリフってあまり意識して書いてきませんでしたからね。苦手なんです。



 それと、これも他の場所でちらりと話題になっていた、長編小説は冒頭が大事という話。ぼくはとくにコメントはしなかったのですが、まあ、小説で冒頭が大事なのはみなさん分かっていることだと思います。

 ぼく個人の意見としては、「長編小説は最初の1行で勝負を決めろ」ですが。



 で、ですね。

 たとえば、書店とかに行って小説の1行目ばかり立ち読みしてくると、やはりプロの作家の書き出しは、どれもこれも上手いんですよね。

 それで、ああいういい書き出しを書くためにどうするか?をちょっと考えたんですが、こんなアイディアが出ました。

 それは、「手書きで書く」です。



 つまり、タイトルと書き出しあたりまで、パソコンではなく、原稿用紙に万年筆で手書きしてみようと思いついたんです。もう早速B5版の原稿用紙を買ってきて、万年筆との相性を確認しました。 ←すでにちょっと行動がズレてますが。



 まず一発目に試したのが、ペリカンのスーベレーンです。55000円した万年筆。


 基本的に万年筆は、10000円くらいの値段です。金のペン先を使用して、普通に作製するとそれくらいの金額になるみたいです。たまにある20000円、30000円の万年筆は、構造は同じでボディーが豪華な素材ということが多いです。

 ウォーターマンのエキスパートなんか、16000円のペンのボディーだけ変えて、25000円の商品を出したりしています。


 が、ペリカンやモンブランといった一部のメーカーはちがいます。吸入式で、ペン先のゴールドはもちろん、内部構造まで一体型に設計された、本物です。伊達や酔狂で高い値段がついているわけではない。

 それほどのペンなのですが……。


 や、やはり中字は太すぎた……。


 字が潰れちゃうんです。とくに死織の「織」とか。

 いえっ! 決してぼくの字が汚いからだけではないはずです!

 年賀状書くときは、すごくいいんだけどなぁ。


 一瞬マジで、極細のペリカン買うか!とヤバい方向へ思考の舵を切りましたが。



 とにかく、うちにある万年筆全部、原稿用紙に試し書きしてみました。



 コクーンやウォーターマンまで引っ張り出してきて書いてみたのですが、相性がいいと感じたのは2本。



 パイロットのカクノ(1000円)とプラチナ♯3776センチュリー(13000円)。

 結局この2本かぁ。



 余談ですが、カクノは万年筆熱の再燃の切っ掛けになったペン。

 そして♯3776は、若いころに初めて買ったペンの最新モデルです。


 ちなみに、カクノと同じペン先のコクーンは、ほんの僅か劣る気がします。ペンの重量に比して、ペン先が硬く、微かにはね返りが強いかんじがしました。


 とまあ、趣味の万年筆の話はおいておいて。





 原稿用紙に、『とき☆ハゲ』第5章の最初の行を書いてみました。

 やはりキーボードと手書きでは、出てくる文章の質に差異があると思います。これは完全に気分の問題ですが、小説の書き出しにおいて、気分ほど重要なファクターがあるでしょうか? いーや、ないっ!!


 ということで、次回から、小説の書き出しだけは、万年筆の手書きにすることにしました。もしかしたら、最近書いた長編作品の書き出しも、手書きで書いていれば違った出来になっていたかもしれません。


 なんにしろ、新しい手法を手に入れたぞ。

 ピロリロリーン!← レベルアップした音



 しかし、名セリフといい、書き出しといい、プロットいい。

 なにか『ときめき☆ハルマゲドン』って、書いていていろいろとぼくを成長させてくれている気がします。

 ぼくは『とき☆ハゲ』ほど、だれかのためを考えて書いた小説はありません。いつも自分の趣味全開で書いてきました。それ自体はもちろん問題ありとは言い切れませんが、しかし、たとえば第3章ラストの格闘バトル。


 あそこは初稿では、自分の趣味全開の、格闘ゲーム的なバトルでした。ですが、ふと気づいて、「これ、格闘ゲームやらない人には刺さらないよね」と気づき、逆に、ゲームをやらない人にも格闘ゲームの面白さが伝わることを念じて書き直しました。

 まあ、そういう風に書き切れているかは分かりませんが、気分の問題です。

 小説の執筆において、気分以上のファクターなんぞ、ありはしない!! ぼくは素面です



 



 最初の話にもどりますが、いま第5章の詳細なプロットに入っています。が、登場キャラのうち、敵役剣士の名前が決まっていません。ここって重要ですよね。


 第4章の『百万Gを取り返せ!』なんかでも、最初は敵役のなまえが「ドノヴァン」でした。なんか悪そうな奴の名前ってことで考えたのですが、プロットを作るうえで、単純な悪ではつまらないな、と違う名前にしました。


 そう、もっとお洒落で、高級で、そんな名前がいいなと、そこから「ロレックス」を考え付きました。


 自分のためではなく、だれかのために書けば、ちょっとずつではあるけれど、自分自身の壁をこえて行けるような、そんな気がしています。そして、それをぼくにさせてくれているのが、もしかしたら『ときめき☆ハルマゲドン』なのかもしれないですね。


 いろいろ書いているうちに、今回はちょっと長くなっちゃいました。ごめんねー。




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