第127話 特撮メタルヒーロー・シリーズ『世界忍者戦ジライヤ』をそこそこ語る
『世界忍者戦ジライヤ』は1988年から放映された特撮ドラマ。メタルヒーロー・シリーズに分類されますが、メタル感はほぼゼロです。
内容は、「世紀の秘宝パコ」をめぐって世界各地の忍者がバトルを繰り広げる、というもの。世界各地の忍者?と思ったそこのあなた。それ正解です。この『ジライヤ』、はなから突っ込みどころ満載の作品なんです。
主人公は、山地
謎の秘宝「パコ」をめぐって、悪の忍者「妖魔一族」や世界各地の忍者たちがバトルを繰り広げる破天荒な物語。
第1話でパコが発動し、世界中からパコを得ようと忍者たちが集結してくるのです。そこで山地哲山は闘破に「おまえは今日からジライヤを名乗り、これを着て戦え」と告げ、ごん!とばかりにジライヤ・スーツの着ぐるみを渡します。
そして第1話。ドイツからやってきたフクロウ男爵(忍者)。馬に乗り、ソードを手に、鐘みたいな兜をかぶり、叫ぶ名セリフは「アイアム偽物などノーサンキュー」。ドイツ語じゃねえし。
また宿敵「妖魔一族」も、東京都を脅して100億円要求する悪事を働いた翌週の計画が、女子高生のお誕生日会の妨害であったりと突っ込みどころ満載です。
もう、とことんおバカで、でもアクションはCGなしのガチ。停止したロープウェイでの命綱無しでのバトルなんて、現代では絶対できません。
しかも、武術考証は世界に冠たる初見良明先生がしてます。作中、武術に詳しい人なら、マジか!と思うような演出もあります。
敵が酔拳つかったり、んなバカなというデザインのロケットマン(頭がロケット)とか、アメリカ忍者の44マグナム相手に手裏剣で挑むジライヤとか、突っ込みどころも多いのですが、それでも超格好いいんです。
最終的に話は宇宙的スケールまで発展したり、聖徳太子の作った巨体ロボが登場したり、ジライヤの成長はもちろん弟の学くんの成長まで描かれていて、製作費がケチられたチープな作品であるにもかかわらず、内容は燃えるものがある名作なんです。
そして、ジライヤ役の筒井巧さんは、いまも役者を続けておられます。
何年か前、『機動刑事ジバン』の日下翔平さんとともにブラジルに招かれたことがあるそうです。実は『世界忍者戦ジライヤ』はブラジルで放映されて記録的な人気を博していたそうです。当時の子供たちが大人になって政府の中枢に上り詰め、筒井さんたちは国賓待遇だったそうです。
近年、筒井さんはVシネマの『特捜戦隊デカレンジャー 10YearsAfter』に脇役で出演します。ジライヤとは関係ない役だったのですが、むかしのスタッフさんなんかと顔を合わせ、『ジライヤ 10YearsAfter』もやりたいね、なんて雑談したそうです。
そして、数日後、筒井さんのもとに『手裏剣戦隊ニンニンジャー』への、ジライヤ役での出演依頼がとどきます。
『手裏剣戦隊ニンニンジャー』は忍者の戦隊ということで、過去の忍者の戦隊からゲスト出演があり、ニンジャレッド・サスケとかハリケンレッドとかが登場していました。
その流れで、メタルヒーロー・シリーズにはなりますが、ジライヤもゲストとして登場することになったのです。
ジライヤの役どころは、忍者協会の会長。正式には『忍びの名誉を守る会』。設定では、先代宗家・第三十四代戸隠流正統・山地哲山(演・初見良明)のあとを継いで第三十五代宗家となっています。昔は若造だったジライヤが、すっかり大人になって責任ある立場になり、若手の忍者たちに指導します。
「いいか、忍術は、おのれの心と身体を鍛える武術だ」
このセリフは胸に刺さりました。まさに、『世界忍者戦ジライヤ』で山地哲山がたびたびジライヤこと闘破に伝えていたことそのまんまだったからです。
で、筒井巧さんなんですが、『ジライヤ』の放映前当時に、武神館(初見良明先生の道場)に稽古に来いと言われていたのですが、そのころは「お腹が痛いです」とか言い訳して稽古はさぼっていたらしいです。が、最近は足しげく通っていて、『ニンニンジャー』への出演回が放映されたあと、道場で初見先生にこう言われたそうです。
「三十五代目継いだそうだね」(笑)
フィクションの三十四代宗家・山路哲山は死んでますが、本物の三十四代宗家・初見良明先生は健在。しかも現役で稽古されています。
で、本当はこの、初見先生の一言で今回の話は締める予定でしたが、さらにオチがつきます。
そののち、俳優の筒井巧さんは、初見良明先生より、戸隠流の三十五代宗家を継がれたそうです。
ジライヤは、いまは本物の忍者です。
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