136

 パーシー先生はそのまま、上の階に移動する。

 メテオラは上の階にいるニコラスは大丈夫かな? とそんなことを思う。

 パーシー先生が見えなくなると、また通信機が反応する。

「はい。メテオラです」と言ってメテオラが通信機に応答すると、「マシューです」という声がした。

 どうやら地下の通信機はマリンからマシューの手に移動したようだ。

「なにか動きはありましたか?」

 マシューの問いにメテオラは見たままの風景を答える。

 すると「そうですか」とマシューは言ったあとで、「そういえばメテオラくん。シャルロットさんのことについてなんですけど、メテオラくんはシャルロットさんについて、どんな印象を持っていますか?」とマシューが言った。

「シャルロットさん? ……えっと、そうですね。優しくて、それから真面目で、あと料理がとても上手だと思いました」とメテオラは答える。

 先ほど会議室で食べた料理は本当に美味しかった。まるでお店で食べる料理の味みたいだった。

 そんなことをメテオラはマシューに伝える。

「シャルロットさんは料理好きですからね。そもそも、なにかを極めようとしたり、研究に没頭したりして人生を過ごすのが魔法使いの生きかたですから、好きなものに対してはどうしても、真剣になってしまうのでしょう。シャルロットさんも実際に料理をしたり、自身の研究室で料理の研究をしているときが一番、幸せそうですもんね」とマシューは言う。

 それからマシューはメテオラにシャルロットの魔法使いの研究は料理であることを教えてくれた。

「シャルロットさんは魔法使いの研究として、料理の研究をしているのですか?」メテオラが言う。

「ええ、そうです。食堂のメニューなんかも数品はシャルロットさんの生み出した料理ですよ。シャルロットさんは本当にすごいんですが、本人はまだまだだと言っています。自分の持っている数十冊の魔法書の空白部分を全部埋めることが、シャルロットさんの夢なんだそうです」

 メテオラは通信機越しにうなずく。

「とくにチョコレートとコーヒーがすごいですね。一時期冗談で、南にある人間の港町と密貿易でもやっているのか、と言われたりしてましたけど、シャルロットさんは自分の農場と果樹の森を持っていて、そこでカカオの実とコーヒー豆の栽培に成功しているんです。もともと、魔法の森にあることはあったのですが、シャルロットさんの新しい栽培方法の成功のおかげで、大量生産の可能性が出てきたんですよね。それがシャルロットさんの見習い魔法使い卒業試験免除の功績なんですよ」

 マシューはシャルロットの話を続ける。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る