「ゴルコンダ」

 僕は集団に紛れるのが得意である、本来は電車の中だろうと、バイクで走っている最中であろうと、取り立てて目立つような人間ではない。まるで風景のように。


 似たような姿、似たような動きをしていればエラーとみなされない。エラーだと見抜かれない。


 工場の工程表にある検品検査が日常の生活にあるわけではない。一人一人を吟味され、○✖️つけられるわけではない。逸脱さえしなければいいのだ。


 僕みたいな人間は何処にでもいる。隣に住んでいる名前も知らないアパートの住人、バス停で同じ時間に乗り合わせるあいつ、同じ会社の話しの合わない同僚、大学時代の先輩、コンビニの前の喫煙所によくいる君、子供の頃友情を誓ったお前、みんな似たようなものだ、だからよく見ないで欲しい。吟味しないで欲しい。


 そういう訳で、今回はしくじってしまった。いや、もしかしたら毎回しくじっているのかもしれない。


 たまたま乗った早朝の電車、たまたま電車の中に人がいなくなり、たまたまそこに問題を抱えた彼女が乗り込んだ。そしてたまたま彼女は僕を探していた。助けてくれる人を探していた。


 見つかりたくないなら部屋に引きこもっていればいい、見つからない為の外出なんてナンセンス、でも興味がある他人の人生に。


 出会うべくして出会っている。


 彼女の風景を探しに行こう。とりとめもない意味の無い行為。でもそこには彼女の求めた絵があるはずだ。

 目立たない僕ができるのは、だれか主役を作ることだけなのだから。

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