俺オレサーガ  ~嘘つき男の英雄譚~

作者 油布 浩明

63

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★★★ Excellent!!!


 『俺オレサーガ』という題名をみると、主人公が人を騙しまくる話じゃないか?とか、あるいは、読んでいる自分自身が騙されてしまう話ではないか?と、ちょっと構えてしまうかもしれない。が、本作は詐欺小説ではなく、「俺」という主人公の一人称で語られる英雄譚である。
 歴史小説というほど堅苦しくもなく、かといってファンタジーというほど浮わついてもいない。名無しの男が、自分の信念に従い、自らを偽ることなく生きる物語である。
 ただし、その信念を貫くために、彼は平気で嘘をつく。それこそ、嘘をつきまくる。
 人を騙し、自分を騙し、煙に巻き、咄嗟の言い訳、洒脱な嘯き、優しい嘘。
 正直は美徳だ。だが、正直者が馬鹿を見るのがこの世の中。そんな世知辛い世の中を、嘘というコートを華麗に着こなし、彼は伸るか反るかの冒険を繰り返す。

 主人公は言う。「俺はうそつきだ」と。
 だが、「俺は正直者だ」という男より、彼の方がよっぽど信頼できる。信用はできないが。
 これは、そんな男の冒険譚である。

 この主人公はいまひとつ信用できないのだが、この物語の世界観や話の筋立てはしっかりしていて、内容は架空歴史物にちかい。だからだろうか。作中には名セリフが綺羅まさに星のごとく散りばめられている。
 もし本作が史実で、歴史上にこの「俺」のような洒落者がいたら、そうとう人気がでるのだろうが、本作の主人公は何分、正体不明の男。名前すらない。
 だが、英雄譚の主人公に、「俺」である以上の何が必要だろうか? ない。なぜならこれは、「俺」の英雄譚なのだから。

 君は、「俺」の英雄譚を読め。そして、自分の英雄譚を書け。英雄譚とはそういうものなのだから。

★★★ Excellent!!!

物語は一人の男の武勇伝が酒場で語られるところから始まります。

一騎当千と噂される槍の使い手、その張本人として登場するのが主人公。
……かと思いきや実は彼はその英雄に成りすまして儲けようと企む大嘘つきなのです。

共に仕事にありつく相棒も、隙あらば互いに切って捨てる気配を匂わせる油断ならない美青年。

彼らを待ち受ける相手も、自分の利益のためなら他人を陥れることを厭わない卑劣漢や金欲や利己的な性欲にとりつかれた貴族など一癖も二癖もあるものばかり。
そんな敵に口先と知略、そして己の体を武器に渡りあう、胸のすくような冒険物語です。

二転三転する展開と読みやすくも想像力を刺激する文章力は読んでいて唸らされます。
特にちょっとした台詞回しややり取りが実に洒落ていて格好よく、言葉選びのうまさを感じました。

商業作品として書籍化しても、なんら問題ない完成度です。
読了後にこんな作品が存在していたのかとため息が出ました。

是非ご一読を。

★★★ Excellent!!!

お互いに本性を明かさない「俺」と相棒のサズールが雇われたのは、悪名高い貴族。
雇い主が傭兵を雇った理由は、なんと……?

どんどんと大きくなっていくストーリー。けれども、ちゃんと太い背骨が通っていて、最後まで安心して読み進めることができます。

それは作者様のストーリーテラーの力量もさることながら、何より登場人物達が魅力的だからだと思います。
もう、なんと言っても台詞のやりとりの一つ一つが格好いいっ!!
しびれますっ、惚れちゃいますっ!!

「嘘」を主題に、けれども嘘だけでは終わらぬ、胸がすく英雄譚。
主人公たちの生きざまをぜひ、ラストまで追いかけてくださいっ!!

★★★ Excellent!!!

嘘と真実を的確に織り交ぜながら、巧みに相手の心理を操り勝利していくのが読んでいて楽しかったです!
特に台詞回しのセンスには脱帽しました。平易な文章と相まって、重たいテーマにも関わらず、次から次へとするする読めるのです。高い文章力が伺えました。
素晴らしい作品をありがとうございました!

★★★ Excellent!!!

謎に満ちた主人公コンビが隠された目的のために戦いを繰り広げる。
ただしこのコンビの戦い方は、とてもじゃないが正統的とは言えない。勝利を確実にするためなら、嘘だろうがなんだろうが、使える手段はなんでも使いまくるのだから。

しかし読んでみれば分かるのだが、この主人公コンビのスタンスがたまらなく格好いい。とにかく頭の回転が早い。気がつけば確かな心理戦が繰り広げられている。そして、そこに読者を引き込むのが「これでもか」というほどにハードボイルド要素が満載のセリフと地の文だ。

一生に一度はこんなセリフを言ってみたいものだと、きっと誰だって思うはずだ。

この物語は、男子だったら必ず持っている厨二心を徹底的に刺激する。いや「厨二心」ではなく、これはもはや「男のロマン」と言った方がいいかもしれない。

魅力満載の主人公コンビの生き様を、隠された秘密をアレコレ想像しながら、憎たらしいほどに格好いい文章を堪能しつつ読み進めて欲しい。
読書に費やした時間は決して無駄にはならないと請け合おう。

★★★ Excellent!!!

素敵の一言です。こんなに愛を感じる嘘つき野郎の物語がかつていただろうか、いやない!格好いいんだよ本当…!

龍を倒してお姫様を救うスレイヤーから始まり、期せず英雄の階段を登っていくお決まりのシンデレラストーリー…では、決してない。徐々に明らかにされていく壮大な陰謀、嘘は吐くが約束は破らない男(達)の本当の姿は何なのか?

文体からプロレベルのハイファンタジーを感じさせることで有名な作者様ですが、今回も一発かましてくれました!

★★★ Excellent!!!

自主企画(頭脳戦・心理戦)より
まずは企画ご参加ありがとうございます。

この主人公のキャラクター性には度肝を抜かれるレベルでした。
コミュニケーションが苦手で、キャラの掛け合いに苦手意識がある私からしたら、このキャラクター像には感動するばかりです。

こんなにも引き込まれるキャラクターは初めてですよ。
本当にセリフになんの違和感もなく、そのしゃべっている姿が容易に想像できました。
まだ読んでいない方、1話だけ(できれば2話の冒頭まで)読んでみてください。
絶対、このキャラに引き込まれます。

★★★ Excellent!!!

いいなー。うらやましい。こんな小説が書けるなんて。

ずっと、そんなことを思いながら読んでいました。

舞台は中世欧州をモデルとした架空世界の冒険譚。そうです、ファンタジーによくある世界観です。竜も出てきます。でも、この作品はファンタジーと呼ぶのをはばかれるくらい、地に足がついています。地に足がつきすぎて、主人公たちが訪れる土地の土や草の匂い、身にまとう衣服の匂い、食べ物やエールの匂いが漂ってきそうです。

とてつもない臨場感です。リアルです。私は読んでいる間ずっと、主人公たちと一緒に旅をしているような感覚に陥っていました。

この小説は、誰もが簡単に書ける代物ではありません。この約11万字のアウトプットの背後には、作者の持つ膨大な量の知識と教養が横たわっているからです。中世の農家にとって、氷砂糖やチーズの価値がどれほどのものか、パンを膨らませるイースト菌がどれほど貴重か、ほとんどの人は知らないでしょう(私は知りませんでした)。

そんなの別に知らなくてもいいじゃん、という人もいるでしょう。どうせ架空のお話なんだから、と。でも、こういったディテールが物語にとってどれほど重要かは、実際にこの小説を読めば明らかです。気づける人はちゃんと気づくはずです。神は細部に宿るのです。

だから私はとてもうらやましいのです。これは真似しようと思ってもできるものではありませんから。

このような詳細な世界の設計、二転三転し最後まで読むものを引きつけて離さないストーリー、そして魅力的なキャラクターたち。どれもが素晴らしく、さらに、それぞれのバランスがうまく保たれています。

とにかく、一話だけでも読んでみて欲しいです。引き込まれれること請合いです。

面白いよ!