#010 感想は薬にも毒にもなる

 投稿を続けていると読者から様々な反響がかえってきます。今回は感想をはじめとするレスポンスの受け止め方の話。


 前にも話しましたが、閲覧数や評価得点などはモチベーション向上に役立ちますが、逆に下げられることもあります。「気にするな」とか「読者の声は真摯に受け止めるべき」とか様々な意見がありますが…、結局はケースバイケースであり、投稿者の性格や状況に起因する部分が大きいので絶対解はありません。


 先に結論を言ってしまいますが…、その場の雰囲気や単純な正論に惑わされるなよって話です。




 そう、正解は無いのです。あるのは短期的な納得や個人の感情の変動のみ。例えば…、「小説の書き方」これはセオリーとして存在しており、調べれば色々と出てきます。ですがコレのほとんどは「ラノベの基本文法」であり、一般文学作品や新聞などの他の文章媒体では見られない独自の作法だったり、そもそも「横書きで細かく区切られるWeb小説」と「縦書きで一冊(約10万文字)単位で販売される書籍」を同列に比べていいものなのか? そもそも、「その作法って本当に正しいの?」って疑問もある。


 本来良くないとされる表現でも他の分野の文章作品では普通に使われている表現で、「基本ルールだから」とか「皆がダメだと言っている」と言った理由で頭ごなしに否定されているだけだったり…、そもそも表現方法の自由の問題もある。「基本に反しているから」とか「自分は理解できない」ってだけで、その表現を選んだ作者の意図を無視してしまったり、そもそも全方位の読者をカバーできる作品は存在しえないと言う問題がある。その作品が誰に向けて書かれた作品なのか? それが自分に向いていなかったからと言って文句を言って強引に自分の方を向かせる、つまり"改変"させる権利が一読者にあるのかって問題もあります。




 ここで、どんな感想をもらったか覚えている限りで例をあげてみます。


①、「ストーリーは面白いけど表現が幼稚」


 具体的に何がどうダメなのかは一切書いておらず、個人的な主観だけの押し付け。そもそも、「擬音が多い」とか「情景の説明がほとんどない」からと言ってそれだけでダメとは限らない。分かっていてあえてその場は基本に反する表現を選んだのかもしれないし…、読者の中には長くて回りくどい説明よりも擬音一発での表現を好む者もいるので、そう言った人を対象にするのがダメとはならない。


 似たパターンで「登場人物の性格が不快」しかも、酷い時はストーリーだけでなく作者の性格まで批判してきます。悪役を悪役として書き、なおかつ確り制裁されていればいいのですが、立ち位置が曖昧だったり野放しになっているとすぐに文句を言う。作者の意図や今後のストーリー展開などが分かってくるのが待てないし、ストーリーが自分の思い通りにならないだけでキレる。ハッキリ言ってしまうと、こんな感想をわざわざ書き込む方が幼稚でただの潔癖なんじゃないかって思ってしまいます。


②、「誤字が多くて読みにくい」


 やはり具体的にどこが間違っているなどの記載はありません。実際に間違っていたのかもしれませんし、誤字とは別に表現が分かりにくかった可能性もありますし、読者側の理解力や誤認の問題、はては単なる嫌がらせでかき込まれた可能性もあります。


 この手の感想をもらうと、作者としては直近に投稿した話を再度チェックせざるをえませんし、その感想を見た未読の読者にも悪印象をあたえます。もちろんモチベーションも下がります。地味ではありますが、無意識にしろ故意にしろ、非常に迷惑であり悪影響を及ぼします。


③、「ざまーが楽しみ」「脇役が面白すぎ。今後の活躍に期待」


 悪意はない、むしろ今後の展開を楽しみにしている印象を受けますが、今後の展開を指定してくるのは作者としては非常に迷惑です。もちろん悪意が無いので邪険には出来ませんが…、すでに決まった展開があり、それを変更できません。変更できるものだったとしても、変更するのに労力は必要ですし、1つ2つのカキコミでも作者には見えているものが全てであり、他の読者が望んでいない可能性もあります。


④、文句しか書き込まない人。


 普段一切、感想を書き込まない。気に入らない事があったら一言二言の短く端的な文句を言う。挨拶なども無い。


 作品には向き不向きがあり、作品がターゲットにしている人に向けて改良を重ねていく必要があります。逆にターゲット外の人に対応した作品にしようとすると一番肝心のメインターゲットがブレてしまいます。普段から感想をくれる熱烈なファンの意見は重要ですが…、そもそもターゲットにしていない人の好みは反映するだけ無駄であり、むしろそんな意見に振り回されてはいけない。これが試行錯誤で文章表現を調整しているときに来ると本当に迷惑です。


⑤、「漢字が少なくて読みにくい」「文章が稚拙」「擬音が多くてダサい」


 難しい漢字を多用すると若い読者には敷居が高くなるし、そもそも小説で用いられる言い回しにはヒラガナ表記が推奨されているものが多い。私は判別ソフトや個人的な主観で漢字が多くも少なくもならないように調整している。しかし、私の作品は読者層が高めの印象なので、できれば万人受けする漢字レベルに抑えたいと思いつつも、意見を反映する形で漢字の割合を増やしています。


 しかし、本音を言えば若い読者にも読んでほしく、極力文章は簡潔で読みやすいものを目指しています。擬音を採用し始めたのもまさにそんな理由があってこそであり…、作為的な変更です。なので、文句を言うだけの浅い読者の意見に方針を成形させられるのは不愉快であり、迷惑ですね。




 結局、タイトルにあるように、感想は薬にもなるし毒にもなります。感想はあくまで個人の感想であり、常に正しいわけでもなければ、その作品に当てはまっているとも限りません。無責任で個人的な意見に惑わされないことが肝心であり、よせられた感想を上手く食べわけ、消化していかないと、投稿者はやっていけません。


 もちろん、必要な意見を受け止める寛大な心も必要ですけどね? しかし、それは容易に見分けられるものでも無ければ、普遍的な回答があるわけでもない。


 結局、無償の投稿なら…、まわりの意見に惑わされず、自分の納得できる選択肢を選び続ける。ことが重要なんじゃないかって思います。

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