香澄の日記(八)
[二〇一五年八月二七日 午後六時〇〇分……エバンズ医師とケイトによるカウンセリングも無事終了し、私がこのワシントン大学 メディカルセンターへ入院する一連の手続きが無事終了した。また親友のエリーもまた同じ病院かつ隣の病室で入院することになったようで、彼女は拒食症という精神病を患っている。二つの病気こそ患ってはいないものの、エリーの心身もいつ不安定になるか分からない――そんな現実が私の胸を締め付けてしまう。
その発症原因は私と同じで、トムが他界してしまったことにおける強いストレスによるもの。発症した病名こそ異なれど、私はエリーと共に歩くことを決心した。そしてエリーと一緒ならどんな困難でも乗り越えられる――何も根拠はないけどそんな気がするの。
そんな入院生活に不安を覚える私たちのために、フローラたちが時間を作ってお見舞いに来てくれた。私とエリーはお互いにフローラたちへお礼の言葉を述べ、おのおのの気持ちをそれぞれ伝える。その中でも私は親友のメグとジェニー、エリーはフローラやケビンとお話しする機会が多かった。
これは私の推測だが、エリーはフローラとケビンの両名に亡き両親の面影を重ねているのかもしれない。エリーはアメリカへ留学する前に、両親を病気で亡くしているという哀しい過去を持つ。そんな心に深い傷を持つエリーを誠心誠意で救ってくれたのが、何を隠そうフローラとケビンなのだ。
以上のことから、仮にエリーが彼らへ亡き両親の面影を求めたとしても、それは何らおかしなことではない。
そしてこれですべて解決したと思われていたが、私には一つ大きな懸念がある――今日お見舞いに来てくれたフローラの顔色が、どことなく青白いように見えたのだ。本人は“そんなことないわ”と否定していたけれど、私には彼女が何か重要なことを隠しているように思えてならない。彼女の言う通り、これが私の思い過ごしながら良いのだけど……]
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