フローラが残した資料の正体とは!?
ワシントン州 香澄の病室 二〇一五年八月二七日 午後一一時〇〇分
数時間前までの賑やかな光景とは一変して、香澄は自分の病室の窓辺で夜に浮かぶ月をそっと見つめている。そんな香澄の表情は数日前まで心を病んでいたと思えないほど穏やかで、クリーム色の月が落とすベールの温もりを一人静かに感じている、慈愛の女神のようだった。
『今晩はとても月が綺麗に見えるわね。エリーやメグたちも、今頃あのお月さまを眺めているのかしら?』
そんな神秘的な光景に心を満たし、夜風に誘われるかのように感傷に浸りながらも、香澄の脳裏にはある一つの出来事が浮かんできた。
『そういえば……フローラが帰る前に、封筒に入れた資料を私へ残してくれたわね。寝る前に内容を確認しておかないと』
香澄が気になっていたこととは、フローラが帰る直前に残した香澄に宛てた一通の資料。しかしご丁寧にもA4サイズの封筒に入っていたので、
「あら? 一枚だけだと思っていたけれど、数枚ほど入っているわね。えぇと、内容を確認しないといけないわね――」
軽く愚痴を言いながらもそそくさと資料の内容を確認する香澄。
「――!? こ、これはどういうこと!?」
だがその資料には香澄の想像を超える、そして彼女の人生に多大な影響を与えてしまうほどの内容が書かれていた。……一体フローラは香澄に、どんな資料を残したのだろうか?
「……こ、こんなことって……フローラ、どうしてあなたがこんなことを……」
フローラが残した謎の資料を読み終えると同時に、ベッドの上で一人落胆した表情を浮かべる香澄の姿があった。これまで穏やかな微笑みを浮かべていた香澄の様子も一変していることから、彼女の心をさらに
「も、もしかして私たちは……誤った方法で心のケアを行ってしまったのかしら? まさかこんな結果を招いてしまうなんて、私たちこそ余計なことをしてしまったの? トム、私は今後……どんな顔をして彼女たちと接すればいいのかしら?」
まるで独り言をつぶやくように、静かに天国で眠るトーマスへその問題の問いかけをする香澄。はたして心の中で生き続けるトーマスから、香澄がもとめるその答えが返ってくる日はやってくるのだろうか?
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