ある人物の策略とは!?

    オレゴン州 トーマスの部屋 二〇一五年八月二五日 午前四時二〇分

 トーマスの部屋で再び惨劇が起きてしまったと考えていた、エリノアとジェニファーおよびケビンの三名たち。そこで誰もが香澄が自ら命を絶ってしまったと思っていたものの、一同が視線を前へ向けると彼らの目に驚くべき光景が留まる。


 こめかみに銃を当て自ら命を絶ってしまったと思われていた香澄が、なんとの状態でその場に立っていたのだ。予想外の光景に、その場にいたエリノアたちも自分の目に映る光景に、ただ唖然としてしまう。

「う、嘘!? ど、どうして香澄が私たちの前に立っているの?」


 一方の香澄自身もその目を大きく見開き、かつ独り言をつぶやきながら必死に状況整理していることから、彼女自身がこの状況に一番驚きを隠せないほど取り乱している。

「……な、何で私は無傷でこの場所に立っているのよ!? あの時確かに私は、こめかみに銃を当てたまま引き金を引いたはずなのに……」

 香澄が引き金を引いた瞬間、銃は確かに彼女のこめかみに当てたままだった。それに加えて香澄の右手に銃が握られていたことから、近くにいたフローラやマーガレットの二人が身をていして、彼女を止めに入ったとは考えられない。

 

 考えられる可能性を消去法で消していく過程の中で、少しずつ答えを導きだそうと知恵を絞る香澄。そうした過程の中で得たある答えが、香澄自身を大きく驚かすことになる。

「!? ま、まさかとは思うけど……」

 自分の考えが正しいことを証明するかのように、何やら調べ物をしている香澄。そしてその調べ物を終えた時、

「……や、やっぱりそうだったのね。すべては……だったのね」

まるですべての謎が解けたと言わんばかりに、大きなため息を吐く。


 一連の流れの発端をゆっくりとパズルで組み立てていくかのように、状況を少しずつ整理していく香澄――時折独り言をつぶやきながらも冷静に状況整理をしていくその姿は、皆が良く知る香澄という女性の姿そのものだった。


 パズルのピースを一つずつ組み立てていくことで客観的に状況を把握した香澄は、その真意を確かめるために、この場にいたある人物へ言葉を投げかける。だがその表情から敵意や憎しみといった感情は消えており、

『……今さらだけど、には本当に驚くばかりね』

むしろその相手に敬意を表するような穏やかな笑みを浮かべていた。

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