【ジェニファー・エリノア・フローラ編】(後編)

捜索の途中報告

         【ジェニファー・エリノア・フローラ編】

ワシントン州 ワシントン大学(教員室) 二〇一五年八月二四日 午後六時〇〇分

 香澄の行方をつかむために、フローラたちはそれぞれ持ち場となる場所へ向かった。誰もが香澄の安否を気遣いながらも捜索するのだが、はたして彼女を見つけることが出来たのだろうか?


 午後六時〇〇分に一度ワシントン大学へ集まるルールになっていたため、元々構内にいたフローラをはじめ、ジェニファー・エリノア・ケビンの三人も次々とやってくる。だが彼らの顔はいずれも落胆の色をしていたことから、結局香澄を見つけることが出来なかったようだ。


 とりあえず自分の教員室で状況整理をしようと思ったフローラは、ケビンが用意してくれた紅茶の茶葉にお湯を注ぐ。そして熱々の紅茶を、ゆっくりと一カップずつテーブルに並べる。

「みんな、ご苦労さま。テーブルの上に紅茶を用意してあるから、それを飲みながら今後の対策を練りましょう」

 なお紅茶にはテアニンという脳にリラックス効果を与える成分が含まれており、香澄の探索で心身が疲労している一同にはうってつけの飲み物。

「はい、いただきます。……ふぅ、美味しい」


 一同はみな熱々の紅茶を一口含みながら、そのまろやかな口当たりの余韻に浸っていた。

「……お疲れのところ悪いのだけど、さっそく状況整理しないと。書記は私が担当するから、ケビンたちはそれぞれ順番に状況を説明してくれる?」

 そう言いながら事前に用意していた手帳を取り出したフローラは、先に自分の状況報告をした上で彼らにも同様の説明を求めた。


      『フローラたちが行った情報収集の結果について』


一 レイクビュー墓地へ向かうことになったジェニファーとエリノアの二人は、現地までケビンが運転する車で現地まで送ってもらった。その後二人は香澄の行方を捜すが、サンフィールド家のお墓の前で彼女が添えたと思われる花束を見つける。

 しばらくレイクビュー墓地周辺を捜すものの、そこに香澄の姿はなかった。


二 ワシントン大学から約二〇分~三〇分ほどの場所にある、シアトルのキングストリート駅へ車で移動したケビン。駅周辺およびシアトル図書館など、香澄が行きそうな場所を中心に行方を捜すものの、結局彼女は見つからなかった。

 その後ケビンは午後五時一五分ごろにシアトルを出て、午後五時三〇分ごろにジェニファーとエリノアが待つレイクビュー墓地へ向かった。そこで二人を乗せた後、彼らは集合場所のワシントン大学へ戻ってきた。


三 一人ワシントン大学に待機しているフローラは、香澄がよく出入りしていたスザロ図書館を尋ねる。そこで司書たちに香澄がここ数日利用していないか尋ねるものの、一同は全員首を横に振る。

 

四 【一】から【三】までの結果を要約する――午後六時〇〇分現在において、ワシントン州およびシアトル周辺には香澄はいないと思われる。

 また香澄の行動傾向を考察すると、他に彼女が行きそうな場所はたった一つ――かつてトーマスたちサンフィールド一家が住んでいた、オレゴン州ポートランドにあるお屋敷。

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