【香澄・マーガレット・ジェニファー編】
シアトルで流行りのお店
五章
【香澄・マーガレット・ジェニファー編】
ワシントン州 シアトル郊外 二〇一五年七月三〇日 午後三時〇〇分
幼くして命を経ったトーマスに対する、香澄たちとエリノアの間による事件が起きてから今日で約一週間が経過。香澄たちを静かに見守っているケビンとフローラは、今日もワシントン大学へ向かい事務処理をしている。教職員という立場上、よほどのことがない限り仕事を途中で抜け出すことが出来ないため、少し複雑な心境にあるケビンとフローラ。
一方の香澄たちはというと、それぞれが久々の休みを満喫中。ちょうど香澄は今ジェニファーと一緒に過ごしており、彼女のお誘いを受けてワシントン州郊外を歩いている。
同時にエリノアとの一件以来、出来るだけ香澄と一人にさせないと心に決めているマーガレットとジェニファー。そこで二人は数日ごとに、香澄と一緒の時間を過ごすことに決めた。
そして香澄は表面上“大丈夫よ”と言うものの、マーガレットとジェニファーの二人は彼女のことが心配で仕方がない。こんなにも自分のことを心配してくれる親友や家族がおり、ある意味果報者の香澄。だが今の冷静さを失っている香澄にとって、そんな彼女たちの想いは届くのか?
「さぁ、香澄。夜ご飯まであと数時間しかありませんけど、どこかへ遊びに行きましょう」
「分かったわ、ジェニー。でもいきなりのお誘いだったから、行き先を特に決めていないのよね……」
小声で行き先を決めていないと言いつつも、この後の予定をどうするか香澄は考えを巡らせている。
「そういえばこの間メグに、“今月シアトルにオープンしたばかりの、若い女性に人気の美味しいスイーツが食べられるお店がある”って聞いたことがあるの。場所もここからそんなに遠くないから、これからそこへ行ってみない?」
「スイーツのお店ってことは――ケーキやプリンがあるお店ですよね? わぁ、いいですね。早速行きましょう」
やはり年頃の女性ということもあり、甘い物に目がない様子の香澄とジェニファー。特に普段は香澄とこういうお店へ一緒に行く機会がないだけに、彼女からのお店へ行こうというお誘いが逆に嬉しかったジェニファー。
日常的に紅茶を
一方のジェニファーはケーキやプリンといった洋菓子が好きで、小腹が空いた時や夜のデザートに食べることも多い。これから香澄と向かうのが若い女性向けのスイーツ店ということもあり、いつになく上機嫌なジェニファーだった。
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