憎悪を募らせるエリノアの気持ち
ワシントン州 エリノアの自宅 二〇一五年七月二六日 午後三時〇〇分
香澄たちからトーマスたちの訃報を聞かされてから、以前のような元気な姿を見せることがなくなったエリノア。だが以外にもエリノアの立ち直りは早く、今のところ特に塞ぎこむといった様子や異変は見られない。
しかしトーマスたちの訃報を聞いてからのエリノアにも、ある変化が見え始める。何かと時間を作っては、彼らと過ごした想い出に浸ることが多くなった。
先日もレイクビュー墓地での挨拶を終えた後、近くのお店で自炊をするための野菜やお肉などの日用品を購入する。そうした用事を済ませて自宅へ戻ってきたのが、午後一時〇〇分くらい。その後エリノアは体に軽い疲労感を感じたので、自分の部屋のベッドで少し横になっていた。
そんな時にエリノアが見た夢というものが、トーマスたちとフランスで初めて出会った時のこと。エリノアはこれまで、夢の中で彼らと出会うことは一切なかった。しかし突然トーマスたちとの想い出を強く意識したことにより、それが夢という形で現れた。この時改めて、エリノアはトーマスたちが自分にとって大きな存在であったことを知る。
『リース、ソフィー、トム。あなたたちが不幸な事故にさえ合わなければ……私はこんなつらい思いをせずに済んだのに』
どうにも出来ない気持ちを抑えながらも、無意識のうちに唇を強く噛んでいるエリノア。そして目を細めながらも、エリノアは机の上に飾ってある写真立てを手にする。背景に電車が写っていることから、どうやらリヨン駅で撮影した記念写真であることが推測される。
そこにはサンフィールド親子とエリノアの、計四人が映っている。そして被写体のトーマスは横にいるエリノアの左腕へ両手でしがみついており、とても幸せそうな満面の笑みを浮かべている。
『ご両親を亡くして、失意のどん底に落ちてしまったトム。そんな悲しみに打ち浸れるトムを救うどころか――年端もいかない少年をさらに絶望させて、さらにいじめて自殺に追いやった香澄たち。……絶対に許さない!』
表向きは何ともないという素振りを見せるエリノアだが、その心は深く傷ついているようだ。特に“トムは自殺した”という言葉を香澄たちから聞いたことにより、とっさにエリノアの頭の中である考えがめぐり寄せる。
『安心して、トム。私がきっと……あなたの無念を晴らして見せる。あなたを苦しめておきながら、何食わぬ顔で生活している香澄たちに……必ず罪を償わせてあげるわ!』
トーマスを死なせてしまった原因でもある香澄たちへ敵意を向けることで、孤独や不安といった感情の理由を
むしろ負の感情が増加したことにより、悪魔に魅了されつつあるエリノア。……はたしてエリノアと香澄たちは、数日前のような強い絆で結ばれた親友に再び戻れるのか? それとも彼女たちの関係は、このまま悪化の一途をたどってしまうのだろうか?
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